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第8章 24 冬フェス ヴァーチャルリンク開催

会見は、瞬く間に世界中へ拡散された。


イベントの情報に紛れるように発表された新システム

その効力は、水面下で確実に広がっている。


スタインフォールドの言葉通り、

仮想世界における犯罪は次々と検知され、

悪質なプレイヤーは容赦なく排除されていった。


インターネット上では、

BANされたプレイヤーたちの恨みや不満が溢れたが、

それは同時に、自らが規約違反者であることを晒す行為でもあった。


やがてその声は、非難に押し潰されるようにして、次第に姿を消していった。


――そして、翌朝。


迅は、目覚ましが鳴る前に目を覚ました。


カーテンの隙間から差し込む光はまだ弱く、

室内には冷たい空気が残っている。


ぼんやりとした意識のまま周囲を見渡し、

ゲームをログアウトしてすぐに眠ったことを思い出した。


昨日は――

英雄具に意思があり、

アイドルに出会い、

現実と仮想が混ざり合うような一日だった。


どこか現実味の薄い記憶を辿りながら、

頭の中でゆっくりと整理していく。


デバイスを展開する。


フレンド一覧には、

確かにリリカの名前があった。


――夢じゃない。


小さく息を吐き、現実を受け入れる。


迅は着替えを済ませ、

朝の走り込みへと出た。


イベントまで後2週間ー。


走り込みを終え、いつもの通学路を歩いていると、

迅は不意に背後の気配が気になり、振り返った。


そこには、何か企んでいるような顔で、

デバイスを構える美咲の姿があった。


「あはは、何だ気づいてたの?

 後ろからイタズラしてやろうと思ってたのに」


「いや、何となくな。

 てか、何しようとしてたんだよ……」


「別にいいでしょ〜」


誤魔化すように笑いながら、

美咲は何食わぬ顔で迅の隣に並ぶ。


「それより、昨日の会見見た?」


「あー、ネットで話題になってるやつか。

 ログアウトしてすぐ寝たから、見てない」


「ええ〜。

 じゃあ電車で見るか、放課後に私の“解説付き”で見るか、どっちがいい?」


ぐい、と美咲はデバイスを迅の顔に押し付ける。


「見ないって選択肢は無いんだな……。

 …分かった、今見るよ」


迅はため息混じりに答え、

美咲のデバイスに自分のデバイスを重ねた。


スワイプするように、

動画データが迅のデバイスへ転送される。


迅は、美咲の目の下にうっすらと浮かぶクマに気づいた。


「お前、また寝てないだろ。

 授業中、また怒られても知らないぞ」


軽く咎めるように言いながら、

美咲の頭をわしゃわしゃと撫でる。


「気づいたら朝の三時だったんだから、仕方ないじゃん!」


乱れた髪のまま、美咲は不満げに言い返した。


「それ、理由になってないからな……」


駅のホームから電車に乗り込み、

そのまま車内で動画の続きを見る。


やがて再生が終わり、

迅が視線を上げると――


隣で、美咲がそわそわと落ち着かない様子でこちらを見ていた。


今にも喋り出しそうなその表情に、

迅は何を言いたいのか、ある程度察する。


「……月の都市、作り込みすごかったな」


その一言をきっかけに、


「でしょでしょ!」


待ってましたとばかりに、美咲が身を乗り出す。


「初の大規模アップデートってこともあって、

 めっちゃ気合い入ってるの!


 都市が三層構造になってて、

 階層を繋ぐように斜めにモノレールが走ってるの!


 それでね――」


止まらない。


結局しばらくの間、

迅は美咲の熱量の高い解説に付き合うことになった。


――要するに。


美咲の話をまとめると、

月の都市は数世代先を見据えて設計された、

開発会社の技術が凝縮された都市らしい。


イベント後は、

この月都市が最も発展した拠点になる可能性が高いとのことだった。


どうやら美咲は、

昨夜も遅くまでこの都市について調べていたらしい。


「で、これがスケジュールね」


話の流れのまま、

美咲からデバイスへデータが共有される。


放課後の空き時間を利用した、

遺跡探索を中心としたイベント対策のスケジュール。


さらに、

イベントの詳細ルールもまとめられていた。


――――――――――


□大会構成

五大陸に分けて開催


・アジア杯

・ヨーロッパ杯

・アメリカ杯

・中東杯

・オセアニア杯


□迅たちの参加枠

アジア杯


□参加チーム数

32チーム


□チーム編成

アイドル:1名

サポート:4名

計5名


□迅たちのチーム

リリカ

美咲

紗良

キャット


――――――――――


□都市構造

三層構造(上層・中層・下層)


総ブロック数:200


・小ブロック:120

・中ブロック:60

・大ブロック:20


――――――――――


□ポイント獲得条件


①アイドルがエリア内に存在

②撮影

③投稿

④会場プレイヤーの投票が目標値に到達

ポイント獲得


――――――――――


□競合時


同エリアに複数チームが存在した場合


1分間の投票勝負へ移行


投票数が多いチームが勝利


ポイント獲得


半径500m以内の任意エリアへ転送可能


――――――――――


□エリア獲得ポイント


小ブロック:5

中ブロック:15

大ブロック:50


――――――――――


□特殊ブロック


取得時に特殊効果発動

(ギミックあり)


――――――――――


□勝利条件


制限時間終了時


総ポイント最多チームが優勝


――――――――――


ざっとルールに目を通しながら、

迅は思考を巡らせる。


「……やっぱり機動力が重要そうだな。

 絶対、ブロックの取り合いになるぞこれ」


「でしょ?

 だから遠征調査や遺跡探索して、

 移動ルートの対策しておこうよ!」


美咲は即答する。


「アナマさんにもアドバイスの協力お願いしてるし!」


いつになく本気の様子だった。


その熱に当てられるように、

迅も静かに気持ちを固めていく。


その後迅達は遺跡探索や会議をして、

目まぐるしく日付は過ぎていき、イベントの当日が来た。

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