第8章 17 冬フェス ヴァーチャルリンク開催
唸り声の直後、四方から地鳴りが響いた。
次の瞬間――
あらゆる通気口から、トカゲの群れが我先にと藻掻きながら溢れ出す。
壁を這い床を滑り、無数の影が広がっていく。
その光景に紗良は思わず身体を縮こまらせ、悲鳴を上げた。
さらに――
前方の分厚い扉が、轟音とともに踏み抜かれる。
翼の生えた獅子がニ匹、姿を現した。
空を駆けるように跳躍し、神話の獣のような威容で迫る。
だが、その神秘的な姿とは裏腹に動きは獰猛だった。
ニ匹の獅子は互いにぶつかり合いながら、獲物を奪い合うように突進してくる。
「……チッ」
神崎が舌打ちする。
黒い雷が槍に纏わりついた。
そして、身体をしならせながら槍を投擲。
黒雷を纏った槍は一直線に飛び、中央の獅子の目へ突き刺さる。
獅子の悲鳴と共に、黒い雷が迸る。
槍を中心に渦を巻いた。
隣の獅子も巻き込まれ、電撃を浴びる。
一匹は、壁へ打ち付けながらそのまま地面へと崩れ落ちる。
もう一匹は槍が目に突き刺さったまま、狂ったように神崎に迫る。
神崎は噛みつきを跳躍し回避、突き刺さった槍を引き抜き、連続突きを放つ。
獅子は身体を貫かれ絶命。
もう一匹が背後から迫る。
振り下ろされた前脚を、回転しながら槍の横薙ぎで弾く。
そのまま踏み込み、心臓を穿つ。
黒雷が炸裂し、獅子の身体が大きく震える。
のたうち回りながら、獅子は絶命した。
神崎はゆっくりと槍先を引き抜く。
白い壁には斑点のようにトカゲがびっしりと張り付いていた。
なおも通気口から、次々と溢れ出している。
「神崎、ここは離脱しかない」
放心するサオリを抱えながら、天藤が言った。
神崎は胸の傷を擦り、周囲を見回す。
「……決着は、必ず付ける」
槍を迅へ向け、言い放つ。
そして神崎は先陣を切って、獅子の現れた入口へと走り出した。
その後を、サオリを抱えた天藤が追う。
美咲は迫ってくるトカゲに氷の刃を投げつけながら、マップのウインドウを展開する。
来た道を戻り、十字路を真っ直ぐ進めばセーフルームがある。
それを確認すると、美咲は叫んだ。
「私たちも一旦出よう!」
無数のトカゲが舌を伸ばし、四方から襲いかかってくる。
「やばっ!?」
明鏡止水は刀を構え、静かに抜刀した。
「彼岸花――」
無数の舌を切っ先で絡め取る。
そして一閃。
縦に切り裂かれた斬撃の一点に、血の花が咲いた。
その時――
別の角度から、一匹のトカゲが舌を伸ばす。
リリカへ一直線に迫る。
紗良は走り込みながら蹴り上げる。
舌の軌道が弾かれ、斜め上へ逸れる。
舌は壁に突き刺さった。
「迅! 早くリリカを出口まで連れてって!」
迅は頷き、リリカに肩を貸す。
出口へ向かう扉には、無数のトカゲが張り付いていた。
迅の横を、明鏡止水が走り抜ける。
明鏡止水の刀から、冷気が漂っていた。
迅は隣を走る美咲の手を見る。
冷気が舞っている。
(明鏡止水に冷気を――)
次の瞬間。
明鏡止水が刀を振り抜いた。
「花吹雪――」
冷気が壁一面に広がる。
トカゲの身体に霜がつき、動きが鈍った。
左から紗良。
右から明鏡止水。
扉に張り付くトカゲへ蹴りと突きが同時に叩き込まれる。
扉ごとトカゲを押し潰し、無理やり出口をこじ開けた。
「行け!」
迅たちはその隙間を駆け抜ける。
背後から追ってくるトカゲの群れ。
美咲は振り返り、通路へ氷の刃を突き刺した。
冷気が一気に伝播する。
通路一面に霜が広がり、トカゲたちの動きを止めた。
そこから先は、ただ必死だった。
後ろから迫りくる振動音。
追いつかれないよう必死に全員で走り続ける。
そしてセーフルームへと転がり込んだ。
全員、浅く荒い呼吸を繰り返しながら、その場に崩れ落ちる。
振り返ると、トカゲの群れが扉の寸前まで迫っており、通路を埋め尽くしている。




