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第8章 14 冬フェス ヴァーチャルリンク開催

白い通路を進む一同。


先ほどの黒い通路や階段室とは違い、死角が少ない。

その分だけ、幾分か安心感があった。


しばらく歩くと、通路は十字路に分かれていた。


「さて、分かれ道か。どっちへ行く?」


迅は振り返り、美咲を見る。


美咲はウインドウを展開し、全員に見えるよう地下二階のマップを拡大した。


広大なマップの中で、現在位置を指差す。


「今、私たちはここ。で、左に進むと……さっきみたいな大部屋に出られるみたい」


マップをなぞりながら続ける。


「もしかしたら、またサーバーが置いてあるかもしれないし。大部屋、行ってみる?」


美咲の提案に、全員が頷いた。


大部屋へ続く通路を進む。


しかし――モンスターの気配がまったくない。


生体エネルギーの消耗を避けるため、道中の扉は開けず、そのまま進んだ。


「全然モンスターいないね。地下二階ってこんな感じ?」


紗良は後方を警戒しながら言う。


「うーん……途中で離脱できるセーフエリア以外は、モンスターは湧くはずなんだけど」


美咲は少し考えるように言った。


「たぶん、他のプレイヤーを追いかけていったのかも。モンスターって、戦闘に誘われるように集まるから」


先ほどの戦いを思い出すように、静かに付け加える。


やがて、一同は大部屋の前へと辿り着いた。


胸騒ぎがする。


この先に、何かがいる。


迅は転換の光源をかざし、扉を開いた。


――広い。


開放的な大部屋だった。


その中央には、何メートルもある巨大なトカゲの死骸が横たわっている。


亡骸は、淡い光を放っていた。


「……死んでる」


紗良は思わず口元を押さえ、不気味そうに呟く。


トカゲの亡骸は、無数の穴に貫かれていた。

所々の皮膚は焼け焦げ、黒くくすんでいる。


トカゲの死骸の近くに、三人のプレイヤーが立っていた。


黒い雷を纏う槍を持つ者。

手に泡を纏う者。

そして、その奥に――ドレスを纏う者。


リリカは絶句し、その場で立ち止まった。


「どうしたの、リリカ?」


紗良が不思議そうに顔を向ける。


リリカは唇を震わせながら、かすれる声で呟いた。


「……サオリ」


赤とオレンジのドレスを纏ったプレイヤーが、迅たちに気づいた。


華やかな衣装。

柔らかく、あどけなさの残る顔立ち。

おっとりとした雰囲気は、見る者に自然と親しみを覚えさせる。


「誰?」


その視線が――リリカを捉えた。


「……っ! 何でアンタがここに……!」


表情が、一瞬で変わる。


憎しみに染まっていく。


小さな手は震えながらも、強く握りしめられていた。


「また……私のこと、邪魔しに来たんだ……!」


絞り出すような声。

そこには、明確な拒絶があった。


リリカは浅く呼吸を繰り返すばかりで、声が出ない。


「おい、サオリ。知り合いかよ」


連れの一人が、黒い雷を纏う槍をくるりと回した。


髪をかき上げながら、軽い調子で言う。


「気安く呼び捨てにしないで、神崎君」


サオリは鋭い視線を向けた。


「あなた達とは、仕事上の関係なんだから」


その冷たい視線は、槍の男にも突き刺さる。


「まあまあ、サオリちゃんも神崎も仲良くしてこ」


もう一人のプレイヤーが、二人の間に立った。


「このままだとイベントにも影響出ちゃうよー」


「天藤、よくこんな性悪女と組ませやがったな」


神崎と呼ばれた男は、仲裁役を睨みつける。


「こっちの台詞! 天藤君にくっついてきたのはあなたでしょ。今からあなただけ降りてもいいけど?」


二人は天藤を挟んで睨み合う。


美咲は三人の名前を聞き、はっとした。


「神崎……天藤……それにサオリ……」


「プロゲーマーチーム《ホークルミナス》の神崎と天藤! それにアイドルの《終末の録音ラグナロク》のサオリ! めちゃくちゃ有名人じゃん!」


その言葉を聞き、迅と紗良も思い出す。


世界大会決勝で優勝したチーム。


そして《終末の録音ラグナロク》のサオリは、最近急速に人気を伸ばしているアイドル。


アニソンなどを歌う、期待の新星だ。


「サオリ……。違うの! 嫌がらせとか、そんなつもりなくて……!」


リリカは必死に言葉を絞り出す。


その言葉を聞いた瞬間――


サオリの表情が固まった。


逆効果だった。


燻っていた炎に、油を注ぐように。


憎悪が、さらに膨れ上がる。


「意味わかんない……!」


サオリは唇を噛み締めた。


「人気維持するために人のことめちゃくちゃにしておいて、そんなつもりなかった?」


「馬鹿にしてんの……!?」


拳銃を抜く。


「……神崎君。あの人、黙らせて」


舌打ちをしながら、神崎は槍を構えた。


疾風と共に、黒い雷が部屋を走る。


次の瞬間――


凄まじい突進。


槍の一突きが、リリカへ向かう。


だが、その刹那。


迅が割って入り、槍を弾いた。


黒い雷と雷が衝突する。


弾けるような衝撃が、空間を震わせた。


「いきなり何しやがる……!」


迅は衝撃に声を震わせながら言う。


神崎は、槍を構え直した。


「クライアントのオーダーは絶対なんでな」

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