第8章 8 冬フェス ヴァーチャルリンク開催
ー遺跡 生物研究所 地上ー
飛行船から四人は降り立った。
盛り上がった大地と、絡み合う大樹が自然のアーチを形成している。
その先――不気味に陽光を反射する黒い床の向こうに、
転送ゲートが静かに佇んでいた。
「ここが生物研究所……! 神秘的だわ!」
リリカは肩をきゅっと縮めながら、抑えきれない高揚感に足踏みする。
美咲はその姿を見て微笑みつつ、チュートリアルガイドを展開する。
「えーと、入るのに必要なことは……あ」
ぱちん、と指を鳴らす。
「一番大事なこと忘れてた! これ、みんなに渡すね」
ストレージから取り出したのは、
結晶が収められたランタン。
腰に提げられるサイズのそれを、順に手渡していく。
「なにこれ?」
紗良はカランカランと振りながら尋ねる。
「遺跡探索の必須アイテム! “転換の光源”っていうの」
「生体エネルギーを蓄えられる装置だよ〜。絶対使うから装備してね!」
「よく分かんないけど必須なのね」
迅と紗良は腰に装着する。
リリカは少し考え、
ランタンを髪留めに紐付け、髪を後ろでまとめた。
「これなら邪魔にならないかも♪」
イメチェンした姿に、
美咲は仏のような微笑みを浮かべる。
――だが、それで終わらなかった。
美咲はさらにストレージを開く。
「げっ……」
迅の顔が曇る。
取り出されたのは――
英雄具《明鏡止水》と、その人形セット。
慣れた手つきで、美咲は明鏡止水を起動する。
「……ここはどこだ?」
人形の身体を借り、明鏡止水が周囲を見渡す。
「わっ! 人形が喋った!」
リリカが目を輝かせる。
「この子ただの人形じゃないよ〜」
「高度な自己学習型AIで動く、喋る武器!」
美咲は刀を軽く振り回す。
「馬鹿者! 刀をそんなぞんざいに扱うものではない!」
足元では、本体である刀の扱いに子犬のように右往左往する明鏡止水。
「へぇ〜。本体は刀なのね」
「可愛いし面白い♪」
リリカは興味津々だ。
「……美咲、なんでこいつを出した?」
迅は警戒心を露わにし構える。
「そんなに構えなくてもいいでしょ」
その様子を見て、紗良が呆れたように言う。
美咲はにやりと笑った。
「せっかく実戦経験が積めるんだよ〜」
「実験、実験♪」
その場で美咲は即席のアバターパーツを組み上げ始める。
複数のウインドウが同時展開。
演算処理。
最適化。
データ圧縮。
……まさか。
迅は美咲の発想に気づき、息を呑む。
一度、人形との接続を解除。
代わりに、生成したアバターへとリンクする。
白いボディ。
蒼いラインが淡く発光する。
そして――
目に、光が灯る。
「……英雄をここで作る気か」
そこに立っていたのは、
武器ではなく――
刀を帯刀する侍だった。




