第8章 6 冬フェス ヴァーチャルリンク開催
「そのビジュ!!その仕草!
嘘〜! リリカじゃん!!」
「きゃわ〜!!!」
美咲が、爆発した。
「え、待って待って、そのコーデやばくない!?
合わせ方天才?? え??」
「普段こんな感じなの!? マジで無理〜!!」
止まらない早口。
その様子を前に、リリカは噛み締めるようにそして満足そうに小さく頷いた。
まるで、先ほどの迅の反応を上書きするかのように。
「うわ、オタ美咲出た……」
「久しぶりに見たかも」
紗良は目を細めて呟く。
「一番好きなアイドルらしいからな、許してやってくれ」
既に手遅れの状況に迅は腕を組み、顛末を静かに見守る。
「えー! 私のこと一番好きなの!? ありがと〜!」
リリカが、追い打ちをかける。
その瞬間だった。
「……ぁ」
ウインドウの先で美咲の足から力が抜け、その場にへなへなと崩れ落ちる。
「……鼻血、出そ……」
リリカは、その様子を見てニヤリと笑った。
「ねえ、あなたお名前は?」
「み……みしゃきです……」
「みしゃきちゃん!」
リリカは身を乗り出す。
「今度のイベント、一緒に参加してほしいの!
お願い!」
「参加します!!!
参加させていただきます!!」
地面に倒れたまま、美咲は力強く敬礼した。
通りすがりのプレイヤーたちが、
異常者を見るような視線を向けつつ、距離を取って通り過ぎていく。
「ふふっ、集合して4人でじっくり話そっか♪」
リリカは無邪気に笑い、振り返った。
やっぱりこうなるか…。
迅は、リリカの“アイドル”としての一面を垣間見た気がした。
ーーー
個室のカフェ席。
目をキラキラさせ、大興奮の美咲。
満面の笑みのリリカ。
その二人を呆れた目で見る紗良。
三者三様、感情の起伏がやけに忙しい。
「で、イベントの手伝いって具体的になんなんだ?」
迅が尋ねる。
「そっか、具体的にはまだ言ってなかったね!」
リリカは指を立て、楽しそうに話し始めた。
「アイドルとサポーター、合計五人でチームを組んで、都市の各地を巡って、
“観光名所になりそうな場所”で写真を撮るの」
「あなた達には私のサポートとして都市で良さそうな場所を探したり、障害物の踏破をお願いしたいの!」
「そして――なんと!」
リリカは、少しだけ胸を張る。
「優勝したチームは、次のイベントまでbsのマスコットキャラクターになれるの!凄いでしょ!」
夢を語るような口調だった。
それを、美咲はうっとりとした表情で聞いている。
「……つまり」
迅が整理する。
「レースに一緒に参加して、
サポートをしてくれってことか」
「そゆこと!
話が早くて助かる♪」
「えー……」
紗良が少し渋い顔をする。
「私、あんまり目立ちたくないな……」
「良い成績を納めたチームには、豪華景品が出るよ!スイーツもね♪」
「スイーツ!」
紗良の声が跳ね上がる。
同時に、リリカの前にウインドウが展開され、
宝石のように輝くお菓子の数々が映し出された。
「……美味しそう……」
完全に罠にかかり、紗良は陥落した。
(……こいつ、
さっき来る途中で紗良がスイーツ屋に釘付けになってたの、
ちゃっかり見てたな……)
迅は小さくため息をつく。
――この流れ、もう止められない。
「参加するのはいいが、
今から俺たち、遺跡探索に行く予定なんだ」
「詳しい話は、また後日でいいか?」
「じゃあ私もついてく!」
リリカが、あっさり言った。
「いやいや、それはいくらなんでも――」
「いいよ!!」
美咲が、即答する。
「リリカなら大歓迎!!」
美咲はまるで洗脳されているようだ。
心なしか遠い目をしている。
ここまで人を狂わせるとは…
アイドル…恐るべし。




