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第8章 3 冬フェス ヴァーチャルリンク開催

しばらくして、迅は胸に渦巻いていた怒りの矛先を収め、席に座り直した。


「……そういえばさ。この前の奪還戦なんだけど」


美咲がふと思い出したように口を開く。


「ちょっと気になったことがあって」


そう言って、美咲はウインドウを展開する。

そこには、ボス討伐に貢献した沈・夜哭と兎鳴の戦闘データが表示されていた。


「ボスを撃破した時、周囲にいたプレイヤーって、かなり少数だったでしょ」


「しかも抜け道を使ってた可能性があるとしても……

 攻略スピードが速すぎると思う」


美咲は画面を指でなぞりながら続ける。


「噂だと、遺跡探索で集めた装備を使ってるみたいなんだけど……」


ちらりと迅を見る。


「ねぇ、私たちも装備取りに行ってみない?」


一応もっともらしい理由を並べてはいるが、

その目はどう見ても“遺跡探索に行きたい”という好奇心で輝いていた。


迅は少し考える。


美咲の言う通り、今後九尾の晩餐と本格的にぶつかるなら、

装備の新調は必要になるかもしれない。


「……仕方ない。行くか」


「よしっ、決まり!」


美咲は即座に反応する。


「じゃあ遺跡探索用にアイテム買わなきゃ!

 はい迅と紗良は、これお願い!」


そう言って、アイテムのお使いリストを迅に押し付けた。


(さてはコイツ、聞く前から行く気満々じゃないか……)


迅はため息をつきつつも、そのリストを受け取る。


「じゃあ準備開始ー!」


美咲は跳ねるようにして走り去っていった。


「相変わらずだね美咲は…」


紗良は困り顔で話す。


---


東京都市・商業エリア。


迅は人混みの中を進んでいた。


商業エリアには、現実世界には存在しない商品も所狭しと並んでいる。

アバター用のアクセサリー、家具、人形、果ては各種ガジェットまで、

欲しいものは大抵ここで揃った。


自己学習とまではいかないが、

機能拡張用のAIモジュールなども販売されている。


「すっごいね…見たことない物いっぱい」


紗良は並んでいる商品を不思議そうに見つめる。


2人は人の流れを抜けながら、迅は手元のリストに視線を落とす。


――その瞬間。


「あっ!」


紗良の驚いた声。


迅は正面から歩いてきたプレイヤーと、思い切りぶつかった。


「……っ!」


相手のプレイヤーはバランスを崩し、尻もちをつく。


「ご、ごめんなさい!

 前をちゃんと見てなくて……!」


透き通った女性の声だった。


目元はサングラスで隠され、深く帽子を被っている。


慌てて迅は手を差し伸べる。


「いや、俺の方こそ悪い。

 全然前見てなかった」


女性はその手を取って立ち上がる。


(……どこかで見たような……)


その出で立ちに、迅はわずかな既視感を覚えた。


女性は軽く頭を下げると、そのまま立ち去ろうとする。

だが――


「わっ……!」


今度は別のプレイヤーとぶつかり、

その拍子に帽子が宙を舞い、商業エリア中央の中庭へと飛んでいった。


「あ……!」


次の瞬間。


迅は地面を蹴り、加速する。

建物の凹凸を踏み台にし、跳躍。

空中で帽子を掴み取ると、そのまま一気に元の位置へと戻ってきた。


「はい」


帽子を差し出す迅。


「……すご……」


女性プレイヤーは思わず呟いた。


驚きのあまり、かけていたサングラスがずり落ちる。


その瞬間、迅ははっきりと思い出す。


――目の前のプレイヤーは、

ヴァーチャルアイドル《愛ロイド》リリカと、瓜二つの姿をしていた。

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