第6章 14 暴かれる真実
「おーい!」
遠くから、連合ギルドの面々が姿を現す。
その中で、ひときわ目を引いたのは――
3剣の騎士団が全員そろって
Tシャツに短パンという、あまりにも軽装な格好をしていたことだった。
「……どうしたの、それ?」
美咲が、思わずアーサーに尋ねる。
「九尾の晩餐の伝説に挑んだが、くしくも――
あと一歩のところで、敗北したというわけさ……」
アーサーは髪をなびかせ、遠い目で天を仰ぐ。
「いや~、普通に負けましたね」
「なぁ~、全く敵わなかったよなぁ」
背後のギルドメンバーが、
妙にさっぱりした調子で本音を漏らす。
「おい!!」
「本当のことを言うんじゃない……!!」
「面目丸潰れじゃないか……!」
アーサーは慌てて振り返り、
メンバーと小競り合いを始める。
「彼らの装備については、
南の風が保証しよう」
ローゼが落ち着いた声で告げる。
「元より、最も危険な役回りを担ってくれていた」
「こちらで責任をもって手配する」
そう言いながら、既に次の段取りを進めていた。
「あ、そうだ!」
ふと思い出したように、美咲が口を開く。
「アーサーならさ、
どっちが強かったか分かるんじゃない?」
その瞬間。
ギロリ、と。
ワトソンとミハイルの視線が、同時にアーサーへ突き刺さる。
「……待て」
「“どっちが強かった”とは、どういう意味だ?」
無言のまま距離を詰める二人。
気づけば、
アーサーの両肩に、重苦しい手が乗せられていた。
「話がある」
「兄ちゃん、ちょっと奥に行こうか……?」
不気味な笑みを浮かべる二人。
「ちょっ……!」
「待て、待ってくれ!!」
「説明をしろぉぉぉ!!」
必死の抵抗も虚しく、
アーサーは路地裏へと連れて行かれていくのだった。
通知音がなる。
ローゼの元に、ひとつの通知が届いた。
送り主は――
黒の狼のリーダー、ヴォルグ。
ローゼは内容を一読し、皆に向けて読み上げた。
「――急用ができたので俺たちはここで手を引く」
「今回九尾の野郎をこの手で直接ぶちのめせなかったのは惜しいが、まだ俺たちはまだ諦めていない。協力できる事があればまた連絡する。」
読み終え、ローゼは小さく息を吐く。
「急用ってなんだろ。
挨拶くらい、直接していけばいいのに」
紗良がやれやれと肩をすくめる。
「ふふっ。
別れを言うのが、照れくさいのだろう」
「……私はよく似た奴らを知っているよ」
ローゼは微笑みながら、視線を横へ向けた。
その先では――
アーサーを羽交い締めにし、じゃれ合うように揉みくちゃにしている
ワトソンとミハイルの姿があった。
ひと息ついたところで、
今回の奪還戦の結果と、連合ギルドの現状が参加者全体へと共有される。
「……また、面倒な話になったね」
ワトソンは欠伸混じりに呟く。
「運営に突き出して終わりだと思ってたのに」
「そう不貞腐れるな」
ローゼは即座に返す。
「私は、今回の件――
とことんまで付き合うつもりだぞ!」
快活に言い切るローゼの横で、
ワトソンは冷ややかな視線を送った。
「俺も、停戦協定の会議には賛成だぜ」
ミハイルが口を開く。
「このままじゃ、
違法薬物使用者を見つけては殴って、
運営に突き出すだけの“戦争状態”だ」
「正直、面白くねぇし……怠い」
「平和に解決できるなら、
それに越したことはねぇだろ」
理屈としては、至極まっとうだった。
ワトソンが、露骨に眉をひそめる。
「なに、そのニヤけ面。
むかつくんだけど」
「こんなの、裏があるに決まってるじゃん」
「どうせ協定を利用して、
大義名分を得るつもりだろ、九尾の晩餐は」
「どうなっても知らないよ、僕は」
つん、と顔を背けるワトソン。
その様子を見ながらも迅は静かに口を開いた。
「……俺は、この件で九尾の晩餐の“出方”を見たい」
「はぐらかすのか、
ちゃんとけじめをつけるのか」
「相手の出方を見ずに、
先に決めつけることはできない……と思う」
ワトソンは、ゆっくりと視線を戻す。
「そこまで言うなら、
君が代表として会議に参加しなよ」
「僕は、表の代表としては出ない」
「はぁ!?」
ミハイルが声を荒げる。
「何言ってんだ、この頭でっかちは!」
「そもそも、この連合をまとめたのは
俺たちだろうが!」
「それはそれ、これはこれ」
ワトソンは淡々と切り返す。
「会議の件は僕は容認していない。
つまり僕の管轄外さ。」
「どうしてもって言うなら裏方に回ってサポートぐらいならしてもいいって妥協案だよ」
「……また勝手に決めて……」
ローゼは深くため息をつく。
その時。
「いいぞ」
迅が、一歩前に出た。
「俺がやる」
真正面から、ワトソンを見据えて言い放つ。
静かだが、揺るぎない声だった。




