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第1章 5 現実からー。そして仮想世界へ

翌朝。




 美咲の言葉どおり、


 三人は仮想世界で待ち合わせた。




 「ゲーム大会の観戦」と聞いていたが、


 正直、どういうつもりなのか分からない。




 共有イベント情報を確認する。




 ドイツ・ケルンにて、


 世界大会の準決勝と決勝戦が、


 本日、午前と午後に開催予定。




 てっきり都内のゲームカフェなどで


 観戦するものだと思っていたが――




 どうやら、違うらしい。




「お待たせ!」




 紗良が姿を現す。




 《龍焔》のアバターは、


 すっかり板についていた。




 体格も身長も、現実とほとんど同じ。


 そのせいか、違和感がまるでない。




「……何?」




 迅の視線に気づき、紗良が言う。




「ジロジロ見て。


 こういう見た目の娘が好きなの?」




「いや……」




 迅は素直に答える。




「お前のアバター、アンドロイドじゃん」




「ふふっ」




 紗良は笑った。




 吹っ切れたような、


 軽やかな表情だった。




 そこへ、美咲も合流する。




「やっほー! おまた〜」




「で、今日は観戦って話だけど……


 どこ行くんだ?」




 迅が聞くと、


 美咲は意味ありげに笑った。




「フッフッフ……


 現地に行くに決まってるじゃん!」




 胸を張って言い切る。




「目指せヨーロッパ!


 目的地は――ドイツ、ケルン!」




 迅と紗良は、


 **何を言ってるんだこいつ**という顔で


 同時に美咲を見る。




 その指先の先。




 都市の中央にそびえ立つ、


 巨大な転送ゲートが、静かに光っていた。




---




 2人は、美咲に促されるまま、


 転送ゲートのあるエリアへと歩いていく。




 少しずつ、その全容が見えてきた。




 一言で言えば――巨大な壁。




 商業ビルを悠々と超える高さと横幅。


 直線で構成されているはずなのに、


 とても人工物には見えなかった。




「……大っきいね」




 紗良は上体を反らし、


 首が痛くなりそうなほど見上げる。




「都市の要のシステムだからね〜」




 美咲はあっさり言った。




「転送ゲートは、六つの大陸それぞれの主要都市にあって、


 ここから好きな場所に移動できるんだよ!」




 説明を聞いても、


 紗良も迅も、まだ半信半疑といった様子だ。




「ほら、早く行こ」




 美咲が手を叩く。




「午後の部の決勝戦、


 間に合わなくなっちゃうよ!」




 押されるようにして、


 三人は転送ゲートの前に立った。




 ほんの一瞬、顔を見合わせる。




 それから、意を決して――触れる。




 水面に指を入れたかのように、


 ゲートの表面に波紋が広がった。




 抵抗は、まったくない。




 美咲、迅、紗良。


 その順に、光の向こうへと踏み込んでいく。




---




 目を開けると、


 そこは何もない空間だった。




 上下も、奥行きも、曖昧。


 どこまでも白い。




 周囲を見渡しても、


 紗良も美咲も、他のアバターの姿もない。




 代わりに、


 視界の中央にウィンドウが浮かんでいた。




 そこには、各大陸の名称。


 さらに、その下に都市名が並んでいる。




 迅は一瞬迷い、


 それから選択する。




 ――ユーラシア大陸。


 ――ドイツ、ケルン。




 次の瞬間。




 何もなかった空間に、


 電子コードが走り出した。




 螺旋を描きながら、


 視界いっぱいに流れていく。




---




 強い閃光。




 そして、徐々に――景色が戻る。




 舞い散る紙吹雪のエフェクト。


 芯まで響く、割れんばかりの歓声。




 視界を埋め尽くす、アバターの人だかり。




 巨大なモニターに映し出される、


 激しいプレイ映像。




 誰に言われなくても、分かる。




 ――ここが、


 ドイツ・ケルン。




 前作バトル・シティ・オブ・スペースの


 世界大会の、開催地なのだと。



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