表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/87

第6章 11 暴かれる真実

迅と威閻が相対する中、

突然、ローゼの元へワトソンから通信が入る。


「ローゼ! そっちに幹部の……が向かってる。

足止めを……てくれ!」


強烈な雑音が走り、通信は一方的に途絶えた。


「ワトソン……! ワトソン!!」


ローゼは歯を食いしばり、即座に周囲を見渡す。

威閻の部下たちはすでに制圧されつつあり、

紫の境界の二人が、紫電に近づかせない立ち回りを続けている。


――判断は一瞬だった。


「半分、私についてきて!」


振り返りざまに叫ぶ。


「突破してきた幹部の足止めに向かう!」


ローゼは紫電と威閻を一瞬だけ見据え、

そのまま来た道を引き返した。


(あっちは……どうなってる……?

ワトソンは……無事なの……?)


胸に募る不安を振り切るように、ローゼは走る。


---


――少し前。


葵時雨は、崩れゆく足場を跳躍しながら射撃をかわす。


前にも進めない。

攻撃に転じる余地もない。


完全に進行を封じられ、

かすめる弾丸が、少しずつ身体を削っていく。


崩れた足場に足を引っ掛け、

無意識に“足場”へと視線が向いた。


(足場さえ……足場さえあれば、自由に動けるのに)


……その瞬間。


葵時雨は打開策を思いつく。


拳に蒼い焔をまとわせ、その一撃を

迷いなく地面へ叩き込んだ。


「そんなに足場を壊したいなら手伝ってあげる♪」


ヴォルグが異変に気づき、周囲を見回す。


地鳴り。


崩れた足場を起点に、

その一帯が連鎖的に崩壊していく。


「畜生…やりがった…!」


前線にいたプレイヤーたちは足場ごと巻き込まれ、

そしてその先で、葵時雨が“攻撃の構え”を見せる。


土煙が一気に噴き上がる。


「気をつけろ!! 奴が来るぞ!!」


崩落地点に照準が集まる。

張り詰めた沈黙。

装備を握る手に力がこもる。


――どこから来る?


「……!!

お頭! 後ろだ!!」


ヴォルグが振り返る。


そこにいたのは――

すでに走り去っていく、葵時雨の背中。


「しまった……!!」


あくまで最初から“突破”が目的ー。

攻撃の構えは偽で

意識を前方に集めさせ、死角から抜けたのか。


「体勢を立て直せ! すぐ追うぞ!!」


命令が飛ぶ。


葵時雨は、成功を確信して微笑み――

しかし次の瞬間、その表情が凍りついた。


刃が、顔面を薙ぐ。


脱力し、重心を落とすことで紙一重で回避。

反射的に距離を取り、相手を見る。


「……嬢ちゃん、勘がいいな」


低い声。


「悪いがここは通せねぇな。

 回れ右して陣に帰ってくれや」


サウスウインド戦闘隊長――

マーク・ミハイルが立つ。


軽口をたたきながらもマチェットを構え、

葵時雨をじっと観察している。


「……使ってる様子はねぇな。

だとしたら――コイツは白か」


ミハイルは距離を詰める。


葵時雨は一切表情を変えず、構えを取る。


ミハイルの猛攻ー。


葵時雨は躱す。

いなす。


だが、ミハイルの攻めは独特だった。

読み切れないリズム、圧倒的な手数に完全な防戦。


(このままじゃ……)


葵時雨の背後からは、

追撃してきた3ギルドの気配。


――その時。


三ギルドの陣形を割って、

一気に加速する影が割り込む。


「……!」


ミハイルに拳が打ち込まれる。


ミハイルは即座に左腕で受け、

衝撃を逃がすため後方へ跳ぶ。


「……先生!」


葵時雨の声が上ずる。


「序列3位……真羅か!

 いつの間に…」


ミハイルの驚愕する声。


真羅は静かに二人を見据え、

淡々と告げる。


「葵、上で見ていましたが

 戦線を突破した判断は評価します。

ですが、戦場をもっと“広く”見なさい」


(説教のために来たんですか……!)


内心で憤りながらも、葵時雨は耳を傾ける。


「ここは私が請け負います。

 先に行きなさいー。」


迷いはなかった。


葵時雨は即座に駆け出す。


真羅は立ち塞がる。


ミハイルは状況の変化を伝える為、

ワトソンへ通信を入れた。


「悪い…葵時雨に突破された…!

お前のほうで追えるか?」


わずかな間を置いて、ワトソンの声。


「……そうしたいけど、こっちも忙しいかな」


ワトソンの視線は、

別の“脅威”に向けられていた。


三剣の騎士団オーダーオブスリーを壊滅させ、

悠然と近づいてくる存在。


九尾の晩餐、最強の男――

李・酒龍。


「……面倒だな」


不敵な笑み。


本番メインディッシュだ……!」


---


ワトソンは構えを解かぬまま、ヴォルグへ通信を入れる。


「ヴォルグ、そっちの状況は?」


『黒のブラックウルフ

 ミハイルと真羅の戦闘に参戦するところだ』


「――いや、その必要はない」


『……は?』


一切の迷いなく、ワトソンは言い切った。


「真羅はミハイルと他ギルドに任せて

 葵時雨を追ってくれ」


「黒の狼の脚力なら、まだ追いつける。

 ローゼにも連絡を入れて、前方から足止めさせる。

 後ろから挟み撃ちにするんだ。」


ほんの一瞬で、戦場全体の配置が書き換えられる。


「この一瞬で作戦を組み替えるか……」


ヴォルグは驚嘆しつつも、即座に頭を切り替えた。


「お前ら!

 このまま葵時雨を追うぞ!!」


黒の狼の部隊が、

真羅とミハイルの横をすり抜けていく。


「……よほど合流を阻止したいようですな」


真羅は視線を動かさず、探るように言う。


「威閻殿に、何かするおつもりですか?」


「さぁな〜」


ミハイルは肩をすくめ、わざとらしく笑った。


「知らねぇな!」


両者は互いに間合いを取り、構える。


---


黒の狼は葵時雨を追い、疾走していた。


「よし……もう少しで追いつくぞ……!」


ヴォルグは全力で距離を詰める。


その時、葵時雨のウインドウに真羅から通信が入る。

走りながらウインドウを展開する。


『葵。

 彼らの目的は明らかに威閻殿です』


『何をおいても、最短で合流を優先しなさい』


ウインドウは途切れ、


視界の先に、ローゼの部隊が映る。


葵時雨は走りながら、脳をフル回転。

追撃、前方封鎖、挟撃――。


そして、ひとつの答えに辿り着いた。


ウインドウを開き、一本の武器を取り出す。


白澤から譲渡された英雄具――

**神珍鉄**。


葵時雨はそれを振りかざし、

地面へ斜めに突き立てた。


「――伸びろ」


呼応するように、神珍鉄が脈動する。


ギギギ、と音を立てながら、

戦場の頭上へ斜めに伸びていく。


神珍鉄は際限なく伸び、

空中に一本の“道”を作る。


そしてー、葵時雨はその上を駆ける。


ローゼの部隊の頭上を、

走り抜け突破――。


「……なんだあれは…」


ローゼは思わず立ち止まり、

上空を駆け抜けていく葵時雨を呆然と見上げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ