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第6章 9 暴かれる真実

奪還戦エリア、外周 合流ポイントー。


「……始まったな」


視界の先で、戦場がさらに騒がしさを増していく。

迅はその光景を、静かに見つめていた。


隣には、紗良が立っている。

相変わらず、どこか落ち着かない様子だった。


「……紗良は」


迅は、視線を前に向けたまま問いかける。


「あいつら、やっぱりおかしく見えるか?」


図星を突かれたように、紗良の表情が一瞬だけ揺れた。


「……別に、おかしいとか……

 そういう事は……」


言葉を続けながら、視線を逸らす。


「……思ってない、けど……」


「俺は、おかしいと思うぞ」


迅の言葉に、紗良は思わず顔を上げた。


「勝ち負けに拘ってさ。

 薬物だの、仮想世界の未来だの、

 わけわかんないものに必死になってる」


一拍置いて、続ける。


「……でもさ」


迅は拳を軽く握る。


「普通にやってるだけじゃ、

 ダメなんだとも思う」


「真剣勝負で勝てるかどうかって、

 どれだけ馬鹿みたいに準備してきたか、

 アホみたいに頑張ってきたじゃないか?」


「ボクシングやってる俺たちなら、分かるだろ」


紗良の脳裏に、記憶が蘇る。


霞む視界。

呼吸もままならない中で、ただ必死に走り続けた日々。

このまま身体が壊れてしまうんじゃないか――

そう思いながらも、止まれなかったトレーニング。


「……そっか」


小さく、紗良は呟いた。


「私たちも……おかしいんだね」


紗良の表情が変わる。

その顔は、

リングに上がる直前の選手のそれだった。


そして、理解する。


戦いとは――

**おかしさを、どれだけ通し続けられるか**なのだと。


迅もまた、思う。

胸の奥に燻るものを感じていた。


消えない、黒い焔。

一度灯されたその熱が、消えることはもうない。


その時、ワトソンから通信が入る。


『手筈通りだ。ローゼは陽動に成功した』


『他の幹部の足止めも、今のところ順調』


『……あと200メートルで、そっちに合流する』


「……!」


一拍の沈黙。


『……はぁ』


通信越しに二人の顔を見たワトソンがため息をつく。


『言っとくけど……

 勢い余って、倒さないでよね』


ワトソンは小さく呟いた。


---


「ローゼ! このままだと追いつかれるぞ……!」


サウスウインドのメンバーが、必死に走りながら叫ぶ。


「口を動かす暇があったら走れ!」


ローゼは振り返らず、声を張り上げた。


「何としてでも、目標ポイントまで向かう!」


だが、その言葉とは裏腹に――

背後から迫る威閻たちは、さらに加速していく。


両者の距離は、確実に縮まっていた。


威閻は《断罪の斧》を構え、口元を歪めて笑う。


---


**英雄具《断罪の斧》**


所有者が処刑対象《敵対者》として指定したプレイヤーを捕捉。

距離が縮まるほど、所有者は強力な肉体強化バフを獲得する。


ただし――

指定した処刑対象以外をキルした場合、バフは即座に解除。

さらに十分間、新たな処刑対象を選択できなくなる。


---


威閻は赤髪を揺らしながら、最後尾を走るローゼ隊の一人に迫る。


「どけ!」


刃を振り下ろさず、

斧の裏――斧頭で、力任せに弾き飛ばした。


「俺の獲物は……

 あの女…なんだよ……!」


吹き飛ばされ、地面を転がる隊員。


そこへ、威閻の部下たちが群がる。


「やめろ……! やめてくれ……!」


悲鳴が、背後から響く。


先頭を走るローゼの耳にも、仲間の断末魔が届いた。


「ローゼ! アイクがやられた……!

 ここで迎撃するべきだ!」


「……聞いているのか、ローゼ!!」


必死の呼びかけ。


ローゼは、それでも走り続けた。


「……聞こえているさ」


歯を食いしばる。


ワトソンの言葉が、脳裏をよぎる。


――ローゼ。

多少の犠牲が出てもいい。

できるだけ、威閻を外へ引きつけて距離を確保して欲しい。


九尾の晩餐が、どんな隠し玉を持っているか分からない。

こちらの足止めが突破される可能性は、十分にある。


「……っ」


唇を、強く噛み締める。


倒れた仲間を、見捨てても――


「走れ……走れ!!」


だが、その願いも虚しく。


威閻は、ついにローゼを視界に捉えた。


ローゼ隊を力任せに掻き分け、眼前へと躍り出る。


「……っ!?」


「こいつ……なんて力だ……!!」


「危ない、ローゼ!!」


断罪の斧が、振り下ろされる――


その瞬間。


戦場を、**強烈な光の線**が貫いた。


――カウンター。


紫電の拳が、断罪の斧を真正面から撃ち抜く。


**ガン――ッ!!**


鉄と鉄が弾き合うような鈍い音。

火花が散り、斧の軌道が逸れ、虚空を切る。


ローゼは体勢を崩し、その場に倒れ込んだ。


そして。


立ちはだかる一人の男。


迅と、威閻が向かい合う。


「……何者だ……お前は……!!」


牙を剥き、威閻が吠える。


迅は、深く息を吸い――

ゆっくりと、吐いた。


「俺は……」


胸の奥の鼓動を、抑え込む。


「紫の境界パープルボーダーの、紫電」


視線を逸らさず、真っ直ぐに告げる。


「――お前に、一対一の勝負を挑む」


---

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