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第6章 4 暴かれる真実

名称を修正しました ルージュ→ローゼ

「……違法薬物の、摘発……?」


アーサーは唖然と呟いた。

まるで、会話についていけていないかのような表情だ。


「このデータを見てほしい」


ワトソンは淡々とウインドウを展開する。

表示されたのは、九尾の晩餐の**経済効果の推移**と、

**戦闘結果が急激に向上し始めた時期**。

そして――**違法薬物が出回り始めた時期**。


三つのグラフは、ほとんど同じ角度で跳ね上がっていた。


「見ての通り数字の上がり方が一緒だ。

 つまり、薬による効果が九尾の晩餐の

 力の底上げを担っている事は明白」


誰かが息を呑む。


「それにこれだけの規模。

 一般のギルドメンバーが抱えられる量じゃない、少なくとも幹部の誰かが関与している可能性は高い」


ワトソンは、感情を挟まず言い切った。


「……ホントかよ……」


「でもこの情報だけで断定するには、さすがにぶっ飛びすぎじゃ……」


ざわざわと、疑念混じりの囁きが広がる。


その空気を感じ取ったローゼが、一歩前に出た。


「皆さん、本当に“違和感”を感じていませんか?」


「九尾の晩餐の強さ――

 明らかに、常軌を逸しています」


「資産管理も、ギルドのレベルを超えています」


ローゼは新たなウインドウを展開する。

飛行船製造会社の**市場資産総額**と**株価の推移**。


どちらも、防衛戦以降に急上昇していた。


「九尾の晩餐は、飛行船製造会社に先駆けて投資をしていました、戦艦を購入し消費したはずの資産を取り戻しつつあります」


「彼ら自身が広告塔となり、

 今や仮想世界の市場を支配してるんです」


「…あのギルドは普通じゃないんです」


必死な説明に、ラウンジのざわめきが次第に静まっていく。


ローゼの肩に、そっと手を置きながら、ミハイルが続けた。


「奴らは常識じゃ通用しねぇ。

 胸を痛めた上で話すが、今――

 容疑者として見てるのが、この面子だ」


ウインドウに名前が並ぶ。


* 序列1位 李・酒龍

* 序列3位 真羅

* 序列4位 饕餮

* 序列6位 沈・夜哭

* 序列7位 威閻

* 序列9位 葵時雨


過半数以上の幹部達の名前が上がる。

その中には葵時雨の名前もあった。


「全員、戦闘力に秀でたプレイヤーだ」


「薬物を常用している可能性は、十分にある」


そのとき、迅が手を挙げた。


「……ちょっと待ってくれ」


「強いってだけで決めつけるのは、時期尚早じゃないか?」


「他に、“使っている”と判断できる根拠はないのか?」


「確かに……」


ミハイルはデータを確認しながら頷く。


「そういや、薬物使用者と接触したっていう

 うちのメンバーが言ってたな」


「情緒が異常に不安定で、

 とんでもない剣幕で襲いかかってきたって」


「……だったら!」


アーサーが拳を握りしめ、声を張り上げる。


「序列3位と、序列9位は外してくれ……!」


「……どうしてだ?」


ミハイルは問いかける。


「……戦って、分かってるからだ」


アーサーは歯を食いしばりながら続けた。


「悔しいが……

 あいつらは、薬に頼って戦う戦士じゃない」


「……本物の、化け物だ」


称賛と恐怖が入り混じった、複雑な表情。


(……確かに)


迅も、心の中で同意していた。


(葵時雨からは、そんな気配を感じなかった)


アーサーの背後に、二人の仲間が歩み寄る。


「何言ってんだよ、アーサー」


「化け物退治は、騎士の使命だろ?」


「いつもの調子はどうした?」


「……ああ!」


アーサーは顔を上げ、

決意を宿した表情を浮かべた。


「じゃあ、真羅と葵時雨は除外だな。

 直接戦ったやつの意見は重要だ」


「残った4人の身元調査して、さっそく売買の現場を押さえて――」


「……だめ!!!」


その瞬間、鋭い声がラウンジに響いた。


「……!」


一斉に視線が集まる。


声を上げたのは、紗良だった。


突然の叫びに、場が完全に静まり返る。


「そんなの……絶対、駄目……!」


紗良の表情は、真剣そのものだった。


紗良は、訴えかけるような目で迅を見つめていた。

思いつきで言っているわけではない。

それは、はっきり分かる。


「おい、駄目ってどういう事か教えてくれるか。

 このままじゃ奴らの不正がいつまで続か分から 

ないんだぞ?」


ミハイルが声音こそ優しく話すが顔は真剣そのものだった。


紗良は、――言葉にできない。

紗良の手は、かすかに震えていた。


その前に、美咲が一歩踏み出す。


「……ごめん、紗良。

 私たち、ほんと馬鹿だ」


小さく呟き、美咲は目を見開く。


「決まってんじゃん。危ないからだよ!」


その言葉に反応するように、またヴォルグが再び立ち上がった。


「おい。たった三人の弱小ギルドが、なに言ってやがる」


「こっちは3000人以上のヤベー奴ら相手に、

 それでも覚悟決めて来てるんだ」


「“危ない”なんて理由で、簡単に引き下がれるかよ……!」


鋭い視線が突き刺さる。

だが、美咲は一歩も退かない。


「弱小とか、関係ないでしょ!」


「私たちは警察じゃない!

 ただゲームしてる、一般人だよ!」


「犯罪に巻き込まれて、泣くのは誰?」


「……私たちの家族だよ!」


「……っ!!」


ヴォルグは、言葉を失った。


ミハイルが、静かにワトソンの方を向く。


「……どうするよ、リーダー」


「悪いが、嬢ちゃんたちの意見に俺は賛成だ」


「俺だって、楽しんでゲームしてぇんだ」


「皆が皆、危険に巻き込まれても

 “はいそうですか”って納得できねぇよ」


ワトソンは、少し考えるように視線を上へ向けた。


短い沈黙。


「……じゃあ」


「当初の目的だった“売買の摘発”はやめよう」


場の空気が張り詰める。


「**使用者の特定**と、

 **その場の証拠を押さえる**に留めるのはどうだろう」


「証拠は運営に提出する。

 最終的な審議は、運営に任せる」


「……確かに、それなら」


ミハイルが、ぱっと表情を明るくする。


「最小限の危険で、九尾の晩餐の弱体化を狙える!」


手を叩き、賛成を示す。


美咲と迅は、同時にほっと息を吐いた。


紗良は俯いたまま、

迅にしがみついて、しばらく離れなかった。


「じゃあ、作戦はこっちで決めるよ。

 **一時間前に説明する**」


「五時間後。

 イタリア・ローマに集合して」


それだけを告げ、ワトソンは踵を返し、自室へと戻っていく。


残されたローゼは、額に手を当て、深くうなだれた。


それを見て、アーサーが気遣うように声をかける。


「……あなた方のリーダー、随分自由奔放なんだな……」


「お恥ずかしい限りです……申し訳ありません」


顔を覆いながら頭を下げるルージュに、

騎士団の三人は、どう対応していいか分からずおろおろしていた。


そのとき――


ヴォルグが、物凄い剣幕で迅の前に立つ。


「……さっきの話だけどよ」


「弱小ギルドとか言って、悪かったな」


少し間を置き、低い声で続ける。


「実はよ……

 俺のダチも、九尾の晩餐にこっぴどくやられてさ」


「……引退しちまったんだ」


「どうしても、俺は奴らを許せねぇ……!」


謝罪の言葉とは裏腹に、

その目には、復讐の炎が燃えていた。


迅は、何も言わずに手を差し出す。


ヴォルグは一瞬驚き、

そして――ニヤリと笑った。


力強く、握手を交わす。


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