第2章 7 日本都市奪還戦
龍焔が、龍蛇の印で地を這うように接近し、
足払いを狙う。
だが、
ゴクウは突き刺した棒を掴み、飛翔する。
棒は意思を持つかのように伸び、
ゴクウの身体を押し上げる。
指を折り曲げ、
自身を一回転。
棒を足場に、
一気に迅へと突っ込んでくる。
「速い——!」
「カウンター!!」
迅は渾身のアッパーを放つ。
——だが。
「……なに!?」
ゴクウは、
そのアッパーを**両手で受け止めた**。
衝撃で煙が立ち上る。
だが、その掌は鉄のように頑強で、
紫電の一撃を完全に殺している。
即座に左フック。
——しかし。
ゴクウは指を滑らせ、
先ほど受け止めた拳をひねり回転させる。
紫電の上半身が捻じられ、
宙へと浮かされる。
フックは空を切る。
——遊ばれている。
体勢を崩された迅を見て、
八雲が叫ぶ。
「やっぱり、こいつはヤバい!」
「皆で畳みかけるんや!!」
八雲が剣を振るい、牽制。
だが、
ゴクウは足指に力を込め、
床を踏み抜いた。
一瞬、
八雲の足元が崩れる。
その刹那——
ゴクウのスキル発動。
**発勁。**
八雲は体勢を崩しながらも、
咄嗟に盾を構える。
拳が、盾に触れた。
——グワン。
水がたわむように、
鉄の盾が一瞬歪む。
次の瞬間、
内部から衝撃が炸裂した。
「うわぁっ!?」
一点に凝縮された衝撃が、
内部で拡散。
八雲は大きく後退する。
「ガードしたのに……なんや、この一撃……!」
手が痺れ、
盾を持つ手に力が入らない。
ゴクウが、追撃に出る。
「させるかよ!!」
八雲商会のメンバーが一斉に攻撃し、
追撃を阻止する。
だが——
ゴクウは、
縫うように攻撃を避け続ける。
「なんやこいつ……当たらねぇ!」
「攻撃続けろ!」
「反撃の隙を与えるな!」
ゴクウは後方へ跳躍し、
棒を掴む。
棒は、
先程と同じ長さへと戻った。
そして——
棒術の型。
まるで感覚を取り戻すかのように、
ゆっくりと武芸を見せつける。
ゴクウは棒を構え、
明確な攻撃姿勢を取った。
---
ゴクウが駆ける。
それは、人間の動きではなかった。
獣の動きだ。
跳躍と四足歩行を織り交ぜた異様な運動。
その姿だけで、相対する者の身体を硬直させる。
——ゴクウは、その刹那を見逃さない。
硬直した八雲商会のメンバー数人へ、
棒を突き出す。
腕力と、伸縮する棒の推進力。
直前で射程と速度を増した一撃は、
まるで弾丸を撃ち込まれたかのようだった。
アバターの装甲を貫き、
致命傷を与えていく。
「……っ!」
迅は、即座にゴクウの懐へ潜り込む。
出力を切り替え、
紫電の加速を**肘打ち**に集中。
ゴクウの右肩を、かすめる。
その一撃で、
獣の俊敏な勢いが、わずかに鈍る。
続けて、右ストレート。
だが——
ゴクウは鬼のような形相で棒を伸ばし、
空中で推進力を得る。
焦っている。
その証拠に、退避先を確認していなかった。
その先には——龍焔の印が待ち構えている。
**火竜の印**。
空中で、空を蹴る。
対空術。
6発の打撃が、ゴクウの身体へ突き刺さる。
「——!」
ゴクウは、入口の襖へと吹き飛ばされる。
「一撃……いや、数発入ったぞ!」
「すげぇ……あのゴクウにダメージ与えてる……!」
巻き上がる埃の中、
ゴクウの影が見えた。
——いや。
影は、**複数**に分かれていく。
**奥義・分身。**
ゴクウは、4体に分かれた。
最初に狙われたのは、龍焔。
2体のゴクウが、前後から挟み込む。
両方を警戒していたが——
遠距離から、本体の棒術の突き。
気づくのが一瞬遅れた。
肩に直撃。
抉られながら、龍焔は吹き飛ばされる。
伸びた棒を掴み、足場にし、
3体のゴクウが移動。
——止めを刺しに来る。
2対の拳が、龍焔へ振り下ろされる。
「——!」
**カウンター・ダブル。**
紫電が、加速。
右手と左手、同時発動。
2体のゴクウが、くの字に折れ曲がる。
だが、残る1体が、
紫電へ踵落としを放つ。
さらに——
2体のゴクウが、紫電の全身に取り付き、
動きを封じる。
「なっ……!?」
振り払おうとするが、
ゴクウたちは黒い血を吹き出しながら、必死に抑え込む。
眼前に迫る、踵の一撃。
「好き勝手やらせるか、ボケ!!」
八雲が、盾を捨て、剣を突き立てる。
踵落としを肩で受けながら、
突き刺した剣が、ゴクウを貫く。
「ギャッ——!?」
勢いそのまま、
ゴクウは自ら深く突き抜けていく。
紫電を拘束していたゴクウたちも、
八雲商会のメンバーが槍や剣で刺し、止めを刺す。
剣が刺さったゴクウは、のたうち回り、
棒を持つ本体へ助けを求める。
だが——
ゴクウは、軽蔑するような視線を向け、
分身ごと、剣を破壊。
分身は、塵となって消える。
他の分身も、同様に消滅した。
「……はは。やったで」
「あとは、本体だけや……」
八雲は体勢を崩す。
先ほどの踵落としで、全身にヒビが入っていた。
「リーダー!あとは俺たちに任せろ!」
「アンタは、この戦いの最後まで見届ける義務がある!」
メンバーたちが壁となり、
紫電、龍焔、八雲の前へ立つ。
「……お前ら……」
ゴクウが、渾身の剛力を腕に込める。
棒が、長く、太くなっていく。
柱のような棒による横薙ぎ。
台風のような風圧と轟音。
「押せ!!」
「押せぇぇぇ!!」
メンバーたちは何度も武器を叩きつけ、
ボロボロになりながら必死に耐える。
ゴクウが、棒を振り抜いた。
——轟音。
天守閣の壁が崩れ、
満月の光が差し込む。
そこには、誰も立っていなかった。
だが——
**神珍鉄**に、ヒビが入る。
ヒビは連なり、
神珍鉄は、砕け散った。
「……やったぜ……」
「あのムカつく棒、へし折った……」
「……半分以上、やられたか……」
満身創痍のメンバーたち。
紫電、龍焔、八雲が立ち上がる。
——絶対に勝つ。
3人の闘志が重なり、
ゴクウの威圧と激突する。
刹那。
ゴクウの**発勁**が、3人を襲う。
龍焔の印が、前に出る。
発勁の威力を巻き込み、
印は自壊し、消滅。
その瞬間——
紫電の一撃が、すべてを込めて放たれる。
**紫電一閃。**
雷撃のような拳。
——だが。
ゴクウの奥の手が発動。
**神通力。**
紫電一閃が捉えた身体は、
霧となって消える。
「最後の最後で……!」
次の瞬間。
ゴクウの手刀が、
紫電の右手を切り落とす。
「ぐあぁっ——!!」
光が、消える。
ゴクウは、邪悪な笑みを浮かべた。
「……馬鹿ザル。これで終いや」
**抜刀。**
ゴクウの上半身が、吹き飛ぶ。
八雲は、紫炎の刀を握っていた。
先ほど倒れていた時、
迅から託されていた武器。
ゴクウの下半身が、力なく倒れ、消滅する。
——
**MISSION CLEAR**
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