第2章 6 日本都市奪還戦
抜け道は、座敷牢へと繋がっていた。
水が滴る音、不気味な隙間風、
そして足元で軋む木板の音が、
薄暗い空間に不規則に響いている。
「……えらい雰囲気ある道やな……」
八雲が呟く。
一行は、敵の気配を探るように、慎重に進んでいく。
やがて座敷牢を抜け、
道は二手に分かれていた。
ひとつは庭園へ続く道。
もうひとつは、城の内部へと続く階段。
「俺らの知ってる大阪城とは、
まるで別物やな……」
八雲が辺りを見回す。
「AIが作ったみたいに、綺麗すぎて気味悪いわ」
確かに庭園は、
まるで絵画を貼り付けたかのようだった。
整いすぎた景色は、
生きている感覚すら奪うほど美しく、
視線を吸い込んでくる。
「庭園を真っすぐ突っ切れば、
正面の城門に出られそうや」
その奥から、
戦闘音が微かに響いている。
「……選択やな」
このまま別ルートの城内へ進むか。
庭園を抜け、味方と合流するか。
「この先に、どんな敵がおるかも分からへん」
「一度合流するのも、手ではあるけど……」
迅は静かに口を開く。
「でも、これだけ派手に戦ってるなら、
敵は城門前にかなり集中してるはず」
「新手が出る前に、
今、進めるだけ進んで、
ボスに辿り着くべきだと思う」
紗良は、先の防衛戦を思い出していた。
あのまま戦い続けていれば、
挟撃され、負けていたはずだ。
時間をかければ、
相手は必ず体勢を立て直す。
——この城には、
それだけの“何か”がある。
「……進もう」
迅が決断する。
「正面の敵は、みんなに任せる!」
---
城内へ。
二階には、
警備の獣人兵が数体いるのみ。
索敵範囲を避け、
気づかれないように進む。
どうしても通らねばならない場所では、
スピードタイプのメンバーが死角から急襲し、
応援を呼ばれる前に仕留めていく。
三階、四階へ。
徐々に、
空気が張り詰めていく。
そして——最上階、天守閣。
大名の間の前。
龍と虎が描かれた襖が、
重々しく閉ざされていた。
意を決し、襖を開ける。
中には、一人——
いや、一匹の猿がいた。
背を向け、
空を見上げている。
夜空には、
満月が煌々と輝いていた。
猿が、ゆっくりと立ち上がる。
満月に照らされ、
金色の龍の刺繍が施された装束が
神々しく輝く。
対照的に、
黒曜石と鋼で作られた棒——
**神珍鉄**と刻まれたそれは、
光を吸い込むように黒く、
この世の物とは思えない異物感を放っていた。
「……現れよったな」
「見間違えようがない」
「あいつがボスや……ゴクウや!」
ゴクウは、
光を失った瞳で迅たちを見据える。
挑発するように、
棒を床へ突き刺し、
ゆっくりと手招きをした。
——かかってこい。
そう言わんばかりの仕草。
**戦闘開始。**




