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第2章 5 日本都市奪還戦

八雲商会を先頭に、


大軍勢が転送ゲートへと吸い込まれていく。




「……なんや、あの集団」


「何人おるんや……」




異様な光景に、


街に残っていたアバターたちは足を止め、


食い入るようにそれを見つめていた。




行列はしばらく途切れない。


地鳴りのような足音が、空間を震わせる。




やがて、迅たちの前に大阪城が姿を現す。




天守閣は、はるか遠い。


その手前には、幾重もの門が立ちはだかっていた。




——凄まじいプレッシャー。




だが、それ以上に重く感じるのは背中だ。


集まった全員の視線と期待が、否応なく伝わってくる。




迅は深く息を吸い、


心を落ち着けようとした。




そのとき、そっと背中に手が触れた。




後ろを歩くアバターの手。




「大丈夫だよ」


「失敗しても、大丈夫」




「迅なら、きっと何とかできる」




「ああ……そうだな」




アバターに温度はないはずなのに、


なぜか背中が、ほんのり熱くなった気がした。




---




迅は、作戦を思い返す。




いくら人数を集めても、


今日ここにいるのは“即席”の集団だ。


全体への細かな指揮は、まず機能しない。




——おそらく、総力戦になる。




だからこそ、**最初が肝心**。




迅を先頭に、


八雲たち主要メンバーが横一列に並ぶ。




大阪城、最初の難所。


**桜門**が立ちはだかる。




門前には、


武装した獣人兵たちが待ち構えていた。




牛の頭を持つ重装兵。


虎の顔と上半身を備えた斥候兵。


そして、壁の狭間から狙いを定める山羊の弓兵。




「展開!!」




八雲の号令と同時に、


八雲商会のメンバーが大盾を構えて前進する。




上空から、矢の雨。




盾がそれを受け止める。




その隙間を縫うように、


迅と龍焔が飛び出した。




牛の重装兵が、大鎚を振り下ろす。




「——カウンター!」




迅は踏み込み、


顎を狙ってアッパーを叩き込む。




顎が跳ね上がり、硬直。




続けざまに——




「ストレート!」




がら空きになったみぞおちへ、


渾身の右をえぐり込む。




カウンターバフによる、


加速と威力が乗った一撃。




——感触が、いつもと違う。




大柄な重装兵は大きく仰け反り、


周囲の獣人兵を巻き込みながら倒れ込んだ。




「前に見た時より、威力上がってない?」




紗良が驚く。




彼女の前では、


虎の斥候兵たちが奇襲を仕掛けてきていた。




宙に浮けば、山羊の弓兵に射抜かれる。




龍焔は姿勢を低く保ち、


地面と宙の間を蹴る。




蛇のような軌跡。




「——龍蛇の印!」




虎の斥候兵だけを足払いし、転倒させる。


生まれた隙を、後続のメンバーが確実に刈り取っていく。




「来るぞ! 盾を構えろ!!」




壁の狭間から、


再び大量の矢が降り注ぐ。




即座に大盾の壁が展開され、


紫電と龍焔を守る。




「爆弾、投下!!」




後方から、迫撃砲が撃ち込まれる。




壁の狭間、そして門を狙う。




——爆発。




弓兵が吹き飛び、


門が大きく軋んだ。




「押し込め!!」




矢の圧が弱まった瞬間、


大盾部隊が体当たりを開始する。




門が、ミシミシと音を立てる。




「あと一押し——!」




「後は任せて!」




美咲が前に出る。




吹雪3式に、巨腕パーツが装着される。


紫電の格闘から着想を得た、


攻撃力特化の装備。




「いけ——! 大嵐4式!!」




嵐のような一撃。




大振りのストレートが門を貫き、


まるで大砲のような衝撃が走る。




「おおおおお!!」




桜門、突破。




味方が一気に流れ込んでいく。




「主要メンバーだけで突破したぞ!」


「あいつら、やばくね!?」


「俺も負けてられねぇ!」




後続が詰まらないよう、


スピード型のプレイヤーたちが


門周辺の弓兵を次々と処理していく。




——流れは完璧だった。




「……こんなに、計算通り行くとは」




八雲は周囲を警戒しつつも、


あまりの快進撃に目を見張る。




「ここで躓いたら、天守閣には辿り着けないよ!」




キャットちゃんが、


猫型の偵察機を召喚する。




城内を偵察。




「……やっぱり」




「中、とんでもない数の獣人兵がいるよ」


「このまま突っ込んだら、押しくらまんじゅうになる」




城前はほぼ制圧済み。


後続のプレイヤーたちが、城内へ雪崩れ込んでいく。




美咲が戦況を確認する。




主要メンバーの損害は、ほぼなし。


参加者全体の被害も軽微。




——最初の門突破が、完璧に機能している。




城門は破壊され、


内部ではすでに組み合い戦闘が始まっていた。




「どうする?」


「俺たちも、すぐ入るか?」




迅は拳を握り、構える。




「……いや」




美咲が首を振る。




「今入っても、激戦の渦に飲み込まれるだけ」


「作戦通り、装備を変えるよ」




「大盾と鎧は、ここに置いていく」




「ここからは——スピード勝負」




指示に従い、


八雲商会は大盾を捨て、通常装備へ転装。


美咲も元の装備へ戻る。




そのとき、


キャットちゃんの偵察機が反応した。




「見つけた!」




「吹雪ちゃんの言ってた通り!」


「城内への抜け道、あるよ!」




「大阪城に抜け道なんて、あるかいな!」




八雲がツッコむ。




だが、示された方向へ向かうと、


堀沿いの板に、隙間風が通る箇所があった。




「……ホンマにあった」




「ゲーマーの勘的に、絶対あると思った!」




「ほんま、何者や……」


「もう、凄い通り越して怖いわ……」




そのとき、キャットちゃんが声を張る。




「八雲!」




「なんや、キャットちゃん?」




「私たちは、ここに残る!」


キャットちゃんと美咲は止まる。




「前線のみんなを置いては行けないし」




「私が残れば前線の皆に支持できるからね!」


美咲も話す。




「本気か!?」


八雲が叫ぶ。




「レイド戦は何が起こるか分からへん!」


「外から敵が湧いたら、一巻の終わりやぞ!」




「だったら尚更!」


キャットちゃんも声を荒げる。




「ここから敵が入ってこないよう、見張らなきゃ!」


「正面が破れなかったら、


 みんなをこっちに誘導する必要もある!」




「……キャットちゃん……!」 




「はよ行け! アホ八雲!」


「お前が大阪を救うんや!!」




いつになく強い口調。




八雲は押し出されるように、前へ進んだ。




「……ああ、分かっとるって!」




「紫電ちゃん、龍焔ちゃん」


「八雲を、頼むわ!」




「私たちも、ここで踏ん張るから!」




キャットちゃんが、力強くガッツポーズを取る。




2人は、無言で頷いた。




「美咲…お前らボスまでついて来ると思ってたけど」




迅はこちらへ向かない美咲に声をかける。




「うるさいなぁ!早く行きなよ」




「…ついてきたいんだな」




「分かってるなら早く行ってよ!


 私が考えた作戦だし、前線はほっていけないでしょ〜全く」




——戦場は、分かたれた。



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