表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/40

第1章 11 現実からー。そして仮想世界へ

侍の背後で、


黒い影が**ゆっくりと立体化**していく。




まるで3Dプリンターが形を出力するように。


曖昧だった塊が、少しずつ輪郭を持ち——


やがて、**巨大な人型**として侍の傍らに鎮座した。




侍の、倍近い体格。




顔は布で覆われ、


上半身には岩のようにゴツゴツとした肌が露出している。


下腹部に巻かれた布だけが、最低限の装いだった。




そして——


巨木のような腕が握るのは、白銀に輝く**刺叉**。




「……なんだ、あいつ……」




迅は思わず息を呑む。




前線のプレイヤーと甲冑兵士が作る壁の向こうからも、


その巨体ははっきりと見えていた。




だが、美咲はまだ警戒を解かない。




「……まだ、何かある」




視線は前線ではなく、


**後方——プレイヤーも甲冑兵士もいない空白地帯**。




そして、戦局が動いた。




侍が、静かに手を掲げる。




号令に応じるように、


巨兵が歩き出した。




甲冑兵士を蹴散らしながら、


圧倒的な質量で前線へ進軍する。




「あ…」




甲冑兵士に意識を取られていたプレイヤーたちの上に、


**巨大な影**が落ちる。




刺叉が振り下ろされる。




爆発のような衝撃と轟音。


甲冑兵士ごと薙ぎ払われた一撃が、


複数のプレイヤーをまとめて打ち砕いた。




「撃て!」


「やれ!」




後方からプレイヤー達の一斉射撃。




集中砲火を浴び、


岩のような肌が削られていく。




巨兵は嫌がるように、わずかに後ずさった。




「よし! 効いてる!」


「続けろ!」




射撃が、巨兵へと集まる。




——その瞬間。




巨兵は刺叉を地面に突き立て、


左右の甲冑兵士を掴み上げた。




そして、**前へ差し出す**。




それはまるで盾。




宙吊りになった甲冑兵士たちが、


そのまま射撃を浴びる。




「あいつ……味方を盾にしてやがる!」


「ずりーぞ!」




巨兵は、じっと見ていた。




プレイヤーたちが——


装填のため、ほんの一瞬だけ射撃を止める、その“隙”。




血管を浮かび上がらせ、


剛腕が唸る。




次の瞬間。


2体を、**ハンマー投げのように放り投げた**。




甲冑兵士は、前線の上空を通過し——


呆然とする後方プレイヤーたちへ直撃する。




叩きつけられた甲冑兵士は、


面具をカタカタと震わせながら立ち上がる。




怪しげな瞳が、


体勢を崩したプレイヤーを捉えた。




しがみつき、


帯刀していた小刀を抜く。




「やめ——ぐはっ!?」


「あぁっ!」




執拗な刺突。




周囲が引き剥がそうとしても、


妄執に取り憑かれたかのように離れない。




混乱する後方へ、


次々と甲冑兵士が投げ込まれる。




射撃支援が失われ、


前線は再び拮抗状態へ。




——そして。




まるで、この混乱を待っていたかのように。




侍の手が、**三度**掲げられた。




「来たよ! 後ろ!!」




美咲が、珍しく声を荒げる。




後方に、**新たな転送ゲート**が展開される。




そこから現れるのは、


長槍を持った甲冑兵士たち。




剣山のように並び——




突撃—。




突然の奇襲。




後方のプレイヤーたちが、


次々と長槍に貫かれていく。




これが——


美咲の読んでいた“危険”。




近接武器を持たない後方のプレイヤーは崩壊し、


中腹まで押し込まれる。




前線では、巨兵が暴れ回る。




先ほどの優勢が、嘘のように覆された。




「……やばい、このままじゃ——」




「まだ!」




美咲は冷静だった。




「**あいつを倒せば、まだ何とかなる**」




前線で暴れる巨兵を指差す。




吹雪三式の掌に、冷気が集まる。




「さぁ……反撃の狼煙を上げるよ!」




冷気が渦を巻き、


4つの刃を形成。




結合し——


**手裏剣**の形になる。




「……なんで手裏剣なんだよ」




迅が呆れ気味に尋ねる。




美咲は、


冷気で高速回転させながら屈託なく笑った。




「決まってんじゃん!」


「相手がサムライなら——こっちはニンジャになるまで♪」




放たれた氷刃が、


巨兵へのルートを塞ぐ甲冑兵士に突き刺さる。




冷気が拡散し、


動きが鈍る。




道が、開く。




「……理由は分からんが、だいぶ動きやすい」




迅は拳に力を溜め、腰を落とす。




「行くぞ!」




3人は、


**巨兵へと駆け出した。**




---




迅は進路上にいる甲冑兵士へ、


次々とジャブを繰り出す。




叩くのではない。


**弾く**。




武器の軌道を、絶えず反らしていく。




その様は、


降り注ぐ雨粒を一つひとつ掴み取るかのようだった。




正確無比のジャブが、


いつの間にか“防御の型”として紫電に染み込んでいく。




そして——


そのジャブは、次へ繋がる一手。




カウンターと認識され、


紫電のコアが淡く光った。




速度が、増していく。




雷光のような加速。


崩すためだけに最適化された最小限の動きが、


進路を切り開く。




その背後を、龍焔と吹雪三式が追う。




倒れた甲冑兵士の手足へ、


追加の手裏剣が突き立てられる。




戦艦の甲板に固定。


後方からの追撃を封じ、隙を伸ばす。




横から割り込む甲冑兵士には、


龍焔が宙を蹴った。




地上の混戦に囚われず、


空中から——紫電へ迫る甲冑兵士の頭部へ、


鋭い蹴り。




甲冑兵士は体勢を崩し、倒れる。




3人の動きは、


まるで一つの呼吸だった。




その進撃に、


周囲のプレイヤーは思わず目を奪われる。




「……なんだ、あいつら……」


「どこの大手ギルドだ……?」




そして。




紫電と巨兵の視線が、正面でぶつかる。




目の前のプレイヤーを刺叉で薙ぎ払い、


巨兵はその全身を晒した。




山のように聳える巨体。


洞穴から吹き出す風のような唸り声。




紫電のフレームに、


風圧と威圧が叩きつけられる。




——来る。




刺叉が振り下ろされる。




爆発のような一撃。




だが、迅は退かない。




**防御の型。**




ジャブ。




的確に、


巨兵の手を捉える。




「……っ!?」




止まらない。




岩肌のような手が、拳を弾く。


刺叉は、なおも振り下ろされる。




——だが、


**カウンターは成立している。**




《反逆の坩堝》発動。




紫電が電気を帯び、


さらに加速する。




——間に合う。




「紫電一閃!」




腰を落とし、姿勢を低く。


刺叉とボディの隙間を潜り、


右拳を叩き込む。




渾身のストレート。




命中箇所——**小指**。




岩のような肌が砕け、


刺叉の軌道が無理やり逸れる。




衝撃が、眼下で爆ぜる。




紫電は身を翻すが、


風圧に一瞬たたらを踏む。




両者、体勢を崩す。




「……互角……!」




紗良が思わず拳を握る。




「——いや」




美咲は見逃さない。




小指を砕かれ、


刺叉を握る力が弱まっている。




構えが、僅かに低い。




紫電は即座に踏み込む。




足元へ潜り、


左フック。




刺叉の**先端**を殴りつける。




テコの原理。


弱った片腕から、


武器を引き剥がす。




巨兵が怯んだ、その瞬間。




吹雪三式が追撃に入る。




新たに形成された手裏剣が、


巨兵の足元へ突き刺さる。




冷気が爆ぜ、


氷の塊となって足場を固定する。




「紗良! 固めた足、全力で!」




「分かった!」




龍焔の脚が燃え上がる。




低い姿勢から——




「龍蛇の印!」




迅と吹雪三式の間を抜け、


横回転からの踵落とし。




固定された足へ、


水平に叩き込まれる。




氷が砕け、溶ける。


だが、変化が速すぎる。




巨兵は対応できない。




前屈みに崩れ落ちる。




——その眼前。




紫電。




すでに、顎先へ拳が伸びている。




アッパー。




巨兵自身の体重と、


紫電のバネが重なった一撃。




顎が跳ね上がり、


身体が折れる。




**生命を断つ打撃。**




巨兵は崩れ、


二度と動かなかった。




「やった……!」


「あのデカブツを倒したぞ!」




指示が飛ぶ。




前線が押し上がり、


後方のプレイヤーを救援する動きが広がる。




足の速いプレイヤーが、


長槍兵を次々と仕留めていく。




「迅!」


「やったね!」




美咲と紗良が駆け寄り、


三人の拳がぶつかる。




——だが。




残るのは、あの侍。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ