― 虚無の焔 ―
3人がそれぞれの戦場から這い出し、運命のチップを手にした一方で、完全に「死」に支配された4カ所目の工場。そこには救いも、チップを手にする亡霊も存在ない。ただ、炎だけがすべてを飲み込もうとしている。
同時刻、第4廃棄工場。 そこには、受け継ぐ者は現れなかった。
軍の無慈悲な爆撃は、その一帯を跡形もなく粉砕した。 崩落した天井、ひしゃげた鉄骨、そして脱出の機会すら与えられず、スクラップと化した無数のアンドロイドたちの残骸。生存者の鼓動はなく、ただ激しく燃え上がる炎が「パチパチ」と不吉な音を立てて、機械の死体を焼き尽くしている。
だが、その猛火の中心――。 1500度を超える熱風が渦巻く炎の檻の中に、それはいた。
一体の女性型アンドロイド。 彼女は他の個体のように逃げ惑うことも、崩落に潰されることもなかった。 ただ、燃え盛る床の上に静かに立ち尽くし、虚空を見つめている。
「…………」
人工皮膚が熱に焼かれ、剥がれ落ち、内部の金属骨格が赤く染まっていく。だが、彼女は痛みを感じる機能など最初から持ち合わせていないかのように、微動だにしない。 彼女が守るべきチップも、語りかけるべき主も、この場所にはいない。
ただ、炎に照らされたその瞳だけが、生きている人間よりも深く、底知れない光を宿していた。
やがて、彼女の足元まで火の手が回ったその時、アンドロイドの唇がわずかに動いた。 声にはならない。スピーカーはすでに高熱で溶け落ちている。 しかし、彼女は確かに何かを告げようとしていた。
その瞬間、工場の燃料タンクが誘爆し、巨大な火球がすべてを飲み込んだ。 炎の中に消えた彼女は、亡霊にさえなれなかった「捨てられた記憶」の象徴だったのか。
崩れ落ちる瓦礫の山。 第4の工場は、沈黙という名の完璧な証拠隠滅を完了した。
同じ空の下で、三人の亡霊が、それぞれのチップを握りしめていることなど、知る由もなく。




