― 断罪の戦利品 ―
ロウが作戦行動している時、同時に四カ所で同じような作戦行動が展開されていた。
同時刻、第2廃棄工場。 爆炎と黒煙が立ち込める中、195センチの巨躯を揺らし彼は、残骸の山を歩いていた。
彼の足元には、先ほどまで彼が操っていた重装型PT(Phalanx Trooper):ファランクス・トルーパーによって沈黙させられた、無数の警備ドロイドが転がっている。軍の「模範兵」として教育された彼の射撃は、常に最短かつ最小の弾薬で、目標の動力源だけを正確に撃ち抜いていた。
やがて、彼は目標地点である中央区画に到達した。 そこには、避難に失敗し、崩れた鉄骨に下半身を押し潰された一体のアンドロイドがいた。
「……標的、確認」
彼は冷静に報告を口にした。 本来の任務は「全個体の完全破壊」。なぜか彼は誘われるように PDからおり、無表情に腰のホルスターから大型のハンドガンを引き抜き、アンドロイドの眉間に銃口を突きつけた。
「待っ……てください。これを……」
アンドロイドが掠れた声を上げた。その声は、かつて彼が戦場で失った部下の末期の声に酷似していた。 彼の指が、引き金の上でわずかに止まる。
「……私の個体番号は、すでに登録抹消されています。私を壊しても、あなたの罪は……消えない」
その瞬間、頭上から凄まじい風切り音が響いた。 軍の掃討部隊による、無差別爆撃の開始合図だ。
「……私を消そうとしているのは、敵ではない。味方だったか」
彼は眼鏡の奥の瞳を冷たく細めた。軍は自分という「目撃者」もろとも、この場所を更地にするつもりなのだ。 爆撃の第一波が工場の外壁を粉砕した。猛烈な衝撃波が襲うが、彼は鉄の柱のように微動だにせず、足元のアンドロイドを見下ろした。
「……情報の隠滅こそが、この任務の本質というわけか。ならば、私はその逆を行く」
彼はハンドガンを収めると、剥き出しの太い腕を伸ばし、機能停止寸前のアンドロイドの頭部を力任せに掴んだ。 凄まじい握力によって人工皮膚が裂け、メンテナンスポートが露わになる。彼はそこから、脈動するように青く明滅するシステムチップを、戦利品を奪うかのような無慈悲な手つきで引き抜いた。
「命令は『破壊』だった。だが、このチップについては……何も聞いていない」
背後で巨大な燃料タンクが誘爆し、炎が工場を飲み込み始める。 彼は抜き取ったチップをポケットに収めると、迫り来る火の壁を正面から見据え、爆風の中を悠然と歩き出した。
軍紀を重んじてきた男が、初めて軍の裏切りという「不合理」に対し、戦利品という名の反旗を翻した瞬間だった。




