表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亡霊の隊列  作者: 霧狼
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/47

聖域の深淵 ― ブルー・ミューへの階 ―

本日6話目です


動力を失い、彫像のように固まったアスラを背に、ロウの漆黒のLCとニビの奪取した最新鋭機は、静まり返ったドックを歩む。空気を震わせていた爆音は消え、聞こえるのは機体の駆動音と、自らの荒い呼吸音だけだった。


『ロウ、ニビ……こっちよ。迷わないで』


 要塞の壁面に設置された誘導灯が、キーヨの声に呼応して蒼く点滅する。二機が辿り着いたのは、地図には記載されていない特殊な電磁エレベーターの前だった。


「……ここから先は、鉄の塊(LC)では入れない領域のようだ。行こう、ロウ」 「ああ。……ケリをつけようぜ」


 二人は暗い通路を走った。やがて、重厚な真空隔壁が静かにスライドし、視界が眩いほどの蒼い光に埋め尽くされる。  そこは要塞のコントロールセンターだった。巨大なモニターの前、コンソールに『クリスタルキー』を差し込んだキーヨが、二人を待っていた。


 モニターが映し出すのは、さらにその奥、要塞の心臓部。  真空隔壁が重々しく左右に分かれると、広大なドーム状の空間が広がっていた。天井から、壁から、あらゆる角度から伸びる無数の黒い高圧ケーブル。それはまるで巨大な蜘蛛が獲物を縛り付ける巣のように、中心にある「それ」へと収束している。


 ドームの中央に鎮座するのは、鈍く光る重厚な合金で作られた**半円状の機械筒シリンダー**だ。使い込まれた重機の如き無骨な質感。継ぎ目からは、超低温を維持するための液体窒素が白い霧となって噴き出し、床一面を這うように流れている。


 そのシリンダーに囲まれた真空の「核」――。そこに、蒼い球体が浮いていた。


 それは物理的な実体というより、高密度の素粒子が凝縮された「情報の塊」に見えた。球体は猛烈な速度で自転し、その回転が生み出す電磁の軋みが、ドーム全体を微かな震動で満たしている。


「……あれが、ブルー・ミューの本体か」


 ロウの声が、金属質の反響を伴って響く。  高速回転する蒼い球体の中心に、時折、少女の横顔や、かつての病室の風景、ミオソティスの花びらが、ノイズ混じりのホログラムとして明滅する。球体が回転速度を上げるたびに、周囲のケーブルが激しくしなり、バチバチと青白い放電が走る。それは膨大な演算処理のために、ルナの魂という名の「燃料」を激しく消費しているかのようだった。


「ルナ!」


 ロウが叫ぶ。キーヨがゆっくりと振り返った。彼女の瞳は、目の前の空間に浮かび上がる膨大な光の粒子を見つめていた。


『……待っていたわ、みんな』


 それは、要塞のメインサーバーと同期して現れた、ホログラムのルナだった。


「ルナ……お前、本当にそこにいるのか?」


 ロウが震える手を伸ばす。光のルナは、かつて高原の風に吹かれた時と同じ穏やかな微笑みを浮かべ、静かに首を横に振った。そして、自身の存在の起源、三人の運命を語り始める。


「始まりは、リップ・リーン……。私の、母」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ