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亡霊の隊列  作者: 霧狼
第三章

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静止する月光

本日5話目です

アスラの四本腕が、無慈悲な処刑機械のようにロウとニビを追い詰めていた。  『ブルー・ミュー』の支援をうけたニビの精密射撃さえも、セレーネのバックアップを受けたアスラの電子防壁(EMフィールド)に弾かれる。ロウの漆黒のLCは、もはや装甲の半分を失い、地面に片膝を突いていた。


「……ここまで、か……」  ロウが血の混じった唾を吐き、最後の一撃を覚悟したその時。


 荒野の北、封鎖されていた研究施設の天辺から、天を突くような「純白の光柱」が立ち昇った。


 ――カチリ。  世界が、歯車を止める音が響いた。


 キーヨが最深部のコンソールに『クリスタルキー』を差し込み、眠っていたメイン核融合炉を起動させたのだ。


『……全システム、オーバーライド。ルナ・カノン、及びセレーネ・データムの全権限を……掌握』


 記憶の中の声が、無線ではなくルナ・カノン全体のスピーカー、そして兵士たちの脳内に直接響き渡った。  直後、空を覆っていた赤い砂塵が静まり、ルナ・カノンの全防衛施設、全照明が、意志を持ったように一斉に「蒼い光」へと塗り替えられた。


【静止する世界】

 信じられない光景が広がっていた。  ロウの眉間を貫こうとしていたアスラの振動ブレードが、突如として輝きを失い、完全に停止した。アスラの AIが、強制的に遮断されたのだ。


「……なんだと!? 動かない……アスラだけじゃない、全ての機体が……!」  敵のパイロットの絶叫が通信に混じるが、それもすぐにノイズの中に消えた。


 アイゼン・ガルドの残存機も、ネオ・シオンの最新鋭機も、まるで時間の檻に閉じ込められたかのように、その場で石像と化した。ただ、ロウとニビの機体だけが、キーヨの意志によって動力を維持され、静寂の中に立ち尽くしている。


「キーヨ間に合ったな……『ブルーミュー』がルナ・カノンのシステム全てを……乗っ取ったのか?」  ロウが呆然と呟く。


『……間に合った。『ブルーミュー』の「記憶」を呼び覚ました。……もう、誰も戦わなくていいの。もう、誰も壊れなくていいのよ』


 施設の中枢、青い光に包まれたキーヨの瞳には、かつて病室でルナが見せたのと同じ、深く静かな慈愛が宿っていた。  月の要塞そのものがミューの身体となり、無機質な鉄の塊が、平和を望む彼女の心に同調しているようだ。


 戦場から「闘争」という熱が奪われ、月面にはただ、優しく冷たい蒼い月光だけが降り注いでいた。


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