囮の咆哮 ― 北部50キロの血路 ―
思いのほか早く書き上がりました。チェックできた文章から、UPしていきます。
「全機、散開! 敵のセンサーを焼き切るまで足を止めるな!」
ロウの怒号が通信を叩く。第4セクターから北へ向かう荒野。背後からは、ルナ・カノン駐留部隊の迎撃機――最新鋭の量産型LC『グレイ・ハウンド』12機が、凄まじい噴射炎を上げて迫っていた。
圧倒的な数。だが、ロウのアンバー(琥珀色)の瞳は冷静に獲物を捉えている。
「キーヨ、施設のハッチが見えるまで振り返るな! 雑魚は俺がすべて引き受ける!」
「ロウ、無理しないで……! ミューか覚醒するまで時間を稼いで!」
キーヨの駆る機体が北の廃墟へと加速するのを見届け、ロウは操縦桿を強引に引き絞った。漆黒のLCが、慣性を無視した急旋回で追撃隊の正面へと躍り出る。
「来いよ、軍の狗ども! 亡霊の踊りを見せてやる!」
ロウは、キーヨが継ぎ接ぎで強化したLCの出力を限界まで引き上げた。PT5機が連動し、十字砲火で敵の先頭集団を牽制する。
ドォォォォォン!
グレイ・ハウンドの一機が放ったレールガンの閃光が、ロウの肩をかすめる。だが、ロウは怯まない。逆にその熱源を利用するように加速し、敵の懐へ飛び込んだ。
ガキンッ!
キーヨがアスラの残骸から移植した「超硬度マニピュレーター」が、敵機のコクピットを紙細工のように握りつぶす。爆発の衝撃を盾にして、ロウはさらに2機目へとパイルバンカーを打ち込んだ。
「一機……! 次だ!」
しかし、敵も精鋭だ。左右から挟み撃ちのミサイルが迫る。5機のPTが盾となってロウを守るが、そのうちの2機が爆炎に包まれ、地表へと崩れ落ちた。
「……チッ、PT03、04ロスト! 構うな、残りの機体は弾幕を維持しろ!」
【鉄の意志】
機体各所から警告アラートが鳴り響く。継ぎ接ぎの装甲が軋み、火花を散らす。それでもロウの心は、あの白い病室で感じた無力感とは正反対の、猛々しいまでの充実に満ちていた。
「(……あの時は、手を握ることしかできなかった。だが、今は違う!)」
ロウは襲い来る3機のグレイ・ハウンドを強引に引き連れ、廃墟の入り口とは逆方向の峡谷へと誘い込む。それは、死を覚悟した囮の、最も気高い挑発だった。
峡谷に響き渡る爆発音。漆黒のLCは片腕を失い、カメラアイを赤く染めながらも、地獄の門番のように敵の前に立ちふさがり続けた。
「行け、キーヨ……! 繋いでみせろ!」




