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亡霊の隊列  作者: 霧狼
第三章

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鉄拳の契約 ― 亡霊と無法者の流儀 ―

 凄まじい加速Gが、LCのコクピットごとロウたちをシートに叩きつける。家畜運搬船『ノア』は、原生生物の咆哮と機械の軋み声を撒き散らしながら、アステリアの重力圏を強引に突破した。


【欺瞞の高度:家畜という名の盾】

 高度10万メートル。大気圏を抜けた瞬間、強烈な電子音が鳴り響いた。  アイゼン・ガルド帝国の軌道封鎖艦隊によるスキャンだ。


「……来たわ。敵艦からの照準固定ロックオン。全機、沈黙せよ。動くな、熱を出すな」  ニビが低く命じる。


 モニター越しに見える帝国巡洋艦は、まるで獲物を探す巨鳥のように威圧的だ。だが、彼らが放った探査波は、船内に詰め込まれた無数の原生恐竜たちの生命反応によって乱反射し、貨物室の奥に潜む「黒いLC」の存在を完全にかき消していた。


「……フン、エリート様は家畜の臭いまで嗅ぎたくないらしい」  ロウが皮肉を零す。  帝国軍にとって、この船はただの「汚物」を積んだ密輸船に過ぎない。わずかな沈黙の後、ロックオンが解除され、船は検問をすり抜けた。


【反旗:コクピット制圧】

 アステリアが足下で赤く輝く球体へと変わり、宇宙の静寂が船内を包んだ頃。  リップとの約束の高度に達した。


 「……よし、行くぞ」  ロウの合図とともに、ニビがハッチのロックを電子改竄で強制解除する。開くと同時に、ロウは弾丸のようにブリッジへと突っ込みました。


「悪いが、この船の舵は俺たちがもらうぜ!」


「ハッ! 姐さんの言った通りだ! 礼儀知らずな亡霊共め!」  待ち構えていたカムイが、巨体に似合わぬ速度でサイボーグ化された右腕を振り抜きます。


【白兵戦:ブリッジの乱闘】

 狭いブリッジ内で、LCの戦闘にも劣らぬ激しい格闘が幕を開けました。ロウはカムイの剛腕を紙一重でかわし、その懐に飛び込んで鋭いボディブローを叩き込みます。


「テトラ! メイ! 亡霊さんたちの『お受験』だ、相手してやれ!」  カムイの叫びに応じ、メカニックのテトラが手近な工具を鈍器にして躍り出ますが、ニビの電光石火の回し蹴りがその顎を捉え、一撃で沈黙させます。 「計算外の動きは慎むことだ」  氷結色の瞳で冷たく言い放つニビ。


 一方、メイは隠し持っていたナイフを抜こうとしましたが、それより早くキーヨが彼女の腕を掴み、軍仕込みの合気で床に組み伏せました。 「動かないで。怪我をさせたくないの」 「……くっ、この女、なんて力……!」


 中心では、ロウとカムイが互いに胸ぐらを掴み合い、拳を交えていました。ロウのアンバー(琥珀色)の瞳が野性的に輝き、カムイの機械の拳とロウの肉体の拳がぶつかり合うたびに、鈍い衝撃音がブリッジに響き渡ります。


 最後は、ロウがカムイの巨体を背負い投げでコンソールへと叩きつけ、その喉元に鋭い手刀を突きつけました。


【無法者のスカウト】

「……カカッ! 参った、完敗だ!」  床に転がったカムイが、痛みをこらえながら豪快に笑い出しました。 「おい、今の見たかメイ? 姐さんが惚れ込むわけだ。腕っぷしも、その面構えも最高じゃねえか!」


 カムイはロウの手刀を意に介さず、立ち上がるとロウの肩を親友のように叩きました。


「なぁ、お前ら。ルナ・カノンに何があるか知らねえが、あんな腐った軍に骨を埋めるのはやめな。どうだ、俺たちのチームに入らねえか? 略奪、密輸、なんでもござれだ。お前らみたいな『本物の亡霊』がいれば、銀河中の宝をかき集められるぜ!」


「リーダー、賛成です……。あの白髪の兄さんの蹴り、惚れちまいましたよ」  テトラが顔をさすりながら起き上がり、メイも苦笑いしてナイフを収めました。


「悪いが……今はまだ、果たさなきゃならない約束がある」  ロウが不敵に笑いながら、操縦席に腰を下ろします。


「……フン、しおらしいこった。だが気が変わったらいつでも来い。リップの姐さんを助けた時からの俺の勘だ。お前らとは、また別の戦場で『ビジネス』をすることになりそうだからな」


 カムイたちは潔く操縦権を明け渡し、ブリッジの隅で酒瓶を煽り始めました。  奇妙な友情のような、あるいは戦士同士の敬意のような空気が漂う。


「『ルナ・カノン』に到達するまでに残った機体は、PTを含めてわずか10機だ。……キーヨ、残ったパーツをすべて使い潰してかまわない。利用できるものは組み合わせて、完全な状態で動く機体を数台、確実に組み上げておいてくれ」


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