亡霊の追憶 ―ミオソティス ―
ロウは一人、窓の外を流れる星空を眺めていた。あの時、ルナと見上げた空と同じように、無数の光が瞬いている。 彼はそっと胸から、ペンダントを取り出した。それは、彼女がくれたミオソティスだった。
【ロウの回想:星降る夜の約束】
数年前。つかの間の休暇を取り、ロウは恋人のルナと、故郷の星空が一番よく見える池のほとりにいた。夜風は肌寒く、ルナはロウのジャケットにすっぽりと体を埋めている。
「ねえ、ロウ」 ルナが小さく、しかし確かな声で言った。 「あの池ね、ずっと昔、空から星が降ってきてできたっていう伝説があるんだよ」
ふと視線を落とすと、池の周りには直径わずか7mmほどの、透き通るようなスカイブルーの花が群生していた。花びらは非常に薄く、触れればすぐに散ってしまいそうな儚さを湛えている。
「ミオソティスの花だね」
一本の茎から分枝し、数十輪もの小さな花を咲かせているその姿。硝煙と鉄の匂いにまみれた生活を送るロウにとって、それは初めて意識した「花の名前」だった。
「戦争が終わったら、二人でどこか遠くへ行こうよ。……誰も知らない、私たちだけの場所を見つけるの」
ロウは、彼女の華奢な肩を抱き寄せた。戦場の泥にまみれ、死と隣り合わせの日々を送る自分には、あまりにも眩しすぎる言葉だった。 「そんな夢みたいな話、俺に付き合わせるのか?」
「夢じゃないよ。じゃあ、忘れないためにあの花を一輪づつもらっていこう」
ルナがそっと摘み取った青い花を見つめ、ロウは彼女の頬に触れた。その笑顔は、戦場で手にしたどんな勲章よりも、かけがえのないものに思えた。
「この花、ペンダントに加工してもらうんだ。……私たちが、離れていても迷わないための『お守り』ね」
ルナは楽しそうにくすくすと笑い、ロウの胸に顔を埋めた。 「約束だよ、ロウ。いつか二人で、ずっと一緒にいられる日まで、これを大事に持っておこうね。……それまで、お互いを絶対に忘れないように」
ロウは、ただ黙って彼女を抱きしめた。 『忘れない』。その誓いが、後の自分にとってどれほど重い呪縛に変わるのか、その時の彼はまだ知る由もなかった。
ロウの誕生日に、彼女は約束通りその花をペンダントにして贈ってくれた。 その年のルナの誕生日、ロウはお返しに大きな花束を贈った。メインの花を囲むように、彼女の歳の数だけミオソティスの枝を添えて。
花束にミオソティスが一本増えた、彼女の誕生日から間もなくして、ロウは再び最前線へと駆り出された。
もうすぐ見えてくるだろう。 第3惑星:アステリア(通称:異世界)の一つだけある衛星ミオソティスの戦場に・・・。
「衛星、ミオソティス……か。皮肉な名前を付けやがって」
今回ルートは衛星ミオソティスにはよらず、直接アステリア(通称:異世界)に行くルート
ロウはペンダントを胸にしまい込み、力強く拳を握りしめた。




