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亡霊の隊列  作者: 霧狼
第2章:異世界(仮)

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― 青い月の咆哮 ―

 第4格納庫の重厚なハッチが開くと同時に、凍てつくような冷気が吹き抜けた。広大な空間に鎮座するのは、キーヨが極秘に調整を続けていたアステリア1型高速強襲艇。だが、その行く手を阻むように、天井のハンガーから三機の漆黒の機体が音もなく舞い降りた。


「……来たか。ネオ・シオンの出来損ない共が」


 ロウは、慣れないネオ・シオン製LCのコクピットで不敵に笑う。目の前に立ち塞がるのは、パライソ大佐が遠隔操作する先行量産型アスラだ。人間には不可能な鋭角機動を繰り出し、三機が同時に高出力レーザーを放つ。


「キーヨ、ふねを動かせ! こいつらは俺とニビで食い止める!」


「無茶言わないで! 三機相手に旧型じゃ保たないわよ!」


「計算上はそうなるな。だが、私の予測によれば――」  ニビの操るLCが、精密な機銃掃射でアスラの一機のカメラアイを焼き潰す。 「――ブルーチップを装填したこの機体なら、計算を20%は裏切ってくれるはずだ。早くしろ!」


 キーヨは強襲艇のタラップを駆け上がり、操縦席に飛び込んだ。ブルーチップをスロットに叩き込むと、艇全体が生き物のように脈打ち、蒼い光がシステムを駆け巡る。


【格納庫の死闘】

 背後では、ロウとニビが死闘を繰り広げていた。ロウは、アスラの超高速機動に対し、あえて装甲を犠牲にしたカウンターを叩き込む。 「速いだけが戦いじゃねえんだよ! こいつは『重さ』の分だッ!」  LCの巨大な腕がアスラの頭部を粉砕するが、もう一機のアスラがロウの背後を取る。


「ロウ、動くな。……そのまま」  ニビのLCが、自機の損傷も厭わず零距離から狙撃を敢行。弾丸がロウの装甲を掠め、アスラの動力源を正確に貫いた。


 地上でのアスラとの交戦時とは、明らかに感覚が違う。機体と脳が直結したかのようなブルーチップの同調速度は、かつてないほどに高まっていた。まるで、宇宙の静寂を切り裂く超高速の通信が、3人の意思を一つに繋ぎ止めているかのようだった。


【脱出の瞬間】

 メインエンジンの出力が臨界点に達し、強襲艇のブースターが火を吹く。


「二人とも、機体を固定して! ゲートを強制爆破するわよ!!」


 キーヨの叫びと共に、強襲艇の機首ミサイルが第4ゲートを内側から粉砕した。真空状態になった格納庫から、激しい大気の流出と共に、強襲艇と二機のLCが暗黒の宇宙そらへと吸い出される。


「逃がさんと言っている……!」  爆炎の中から、大破を免れた最後の一機のアスラが、パライソ大佐の執念と共に加速。キーヨたちの艇に肉薄する。


「しつこい男は嫌われるわよ、大佐!」  キーヨはブルーチップの共鳴を全開にし、艇のメインスラスターを過負荷オーバーロードさせる。蒼い光の尾を引きながら、アステリア1型は衛星セレーネ・データムを離脱。背後で追撃のアスラが、暴走した衛星防衛網の誤射に巻き込まれ、爆光の中に消えていった。


■ 航路:太陽の向こう側へ

 激しいGが収まり、慣性航行に入った強襲艇のブリッジ。キーヨは大きく息を吐き出し、深くシートに身を沈めた。モニターには、自分たちが捨ててきた「母星シミュラクラ」が、遠く小さくなっていくのが映っている。


「……助かったのね、私たち」


「ああ。……だが、これからが本当の地獄だ。定期便を奪い損ねた以上、この小型艇で一週間、太陽を回らなきゃならない」  ニビが、損傷したLCから降り、汗を拭いながらブリッジに入ってくる。


「……いいじゃねえか。一週間もあれば、キーヨの不味いコーヒーを飲む時間もたっぷりある」  ロウが不器用な笑みを浮かべ、二人の肩を叩いた。


 彼らの向かう先は、太陽の真裏。巨大な生物が支配し、人類の欲望が渦巻く「異世界アステリア」。亡霊たちの本当の物語は、ここから始まる。


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