― セレーネ・データムの陥穽 ―
蒼い光に満ちたセレーネ・データムの中枢アーカイブ。キーヨは、ネオ・シオン軍機密の最深部で「それ」を見つけた。
アイゼン・ガルドとネオ・シオン、両国の技術局長間で交わされた密約のログ。それは、ネオ・シオン側が潜入させているスパイ名簿の一部を「生贄」として差し出す代わりに、アイゼン・ガルドの領土内でアスラの運用実験を黙認させるという戦慄すべき内容だった。
だが、アイゼン・ガルド側の真の思惑は未だ不透明だ。単なるスパイの一掃が目的とは思えない。そこにはもっと巨大な利権が隠されているはずだった。そして、その計画の邪魔になる「勘のいいスパイ」たちは、この一年、ゴミのように処分されてきたのだ。
しかし、これほどの機密データの中ですら、ブルーチップに関する記述は一切見当たらない。
「……やっぱり。異世界とアイゼン・ガルドの繋がりには、まだ調べなきゃいけない『何か』が残ってる……」
「――そこまでだ、カイム特務曹長」
冷たい声が響き、キーヨは凍りついた。振り返ると、かつての上司であり、彼女をアイゼンへ送り込んだ張本人――パライソ技術大佐が、武装した私兵を率いて立っていた。
「君は優秀すぎた。だが、知りすぎたよ。アイゼンへ送れば『亡霊』に殺されると思っていたが……まさか自ら戻り、ここ(核心)まで辿り着くとはな」
「パライソ大佐……! あなたが、あの子たちを……私の仲間を売ったのね!」
「国家の進化に犠牲はつきものだ。……安心したまえ、君の最期は少しでも楽なものにしてやろう」
私兵たちが一斉に銃口を向ける。キーヨは奥歯を噛み締めた。逃げ場はない。ここまでか――そう覚悟して、彼女が静かに目を閉じた。




