― 焼灼される記憶 ―
「くそっ……! 全機、盾になれ(ファランクス)ッ!!」
視界が真っ白な閃光に塗り潰される。衝撃波が機体を叩き、主人公の意識は、加速する重力に抗うように「かつての安らぎ」の中へと沈み込んでいった。
そこには、硝煙の匂いも、金属の軋みもなかった。
始まった出会い
白一色の清潔な病室。開け放たれた窓から、戦火の届かない遠い草原の風が、カーテンを優しく揺らしている。
「あ、また無茶しましたね」
呆れたような、けれど鈴の鳴るような穏やかな声。
振り返ると、看護師の制服を着た彼女が、トレイに乗せた包帯と消毒液を手に立っていた。
戦場でボロ雑巾のように傷ついた自分を、彼女の白い手は、まるでもろい宝物を扱うように丁寧に包み込んでくれた。
「ねえ、あなたのその手。戦うためじゃなくて、いつか誰かのために花を摘んだり、誰かを温かくつつみ こんだりするために使ってほしいな」
彼女の指先が、火薬で汚れた彼の手の甲に触れる。
彼女が触れる場所だけが、人間としての熱を取り戻していく。あの瞬間、彼にとっての世界は、戦場でも軍でもなく、目の前の彼女そのものだった。
その彼女を蝕んだのは、敵の弾丸ではなく、音もなく細胞を壊していく病魔だった。
「死」を届けることに特化した軍の技術は、彼女を「生かす」ためには何の役にも立たなかった。
「……警告。装甲限界、全機能を停止します」
無機質な電子音が、温かなカーテンの記憶を切り裂いた。
目を開けると、そこは鉄と炭の匂いしかしない地獄の底だった。
LCを庇った10機のPTは、あるものは手足を失い、あるものは装甲が焼けただれ、折り重なったまま物言わぬ鉄の墓標と化している。
煤けたコックピットの中で、主人公は血の混じった喘ぎを漏らした。
幻影。そうだ、あれはもうどこにもない光景だ。忘れるために、彼は自らをこの「亡霊の隊列」へと繋いだはずだった。
だが、ハッチを抉じ開けて外へ出た彼の前に、それは横たわっていた。
爆撃で更地となったクレーターの中心。




