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亡霊の隊列  作者: 霧狼
第1章:『亡霊は鉄の風に舞う』

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― 焼灼される記憶 ―

 「くそっ……! 全機、盾になれ(ファランクス)ッ!!」

視界が真っ白な閃光に塗り潰される。衝撃波が機体を叩き、主人公の意識は、加速する重力に抗うように「かつての安らぎ」の中へと沈み込んでいった。

 そこには、硝煙の匂いも、金属の軋みもなかった。


 始まった出会い

 白一色の清潔な病室。開け放たれた窓から、戦火の届かない遠い草原の風が、カーテンを優しく揺らしている。

 「あ、また無茶しましたね」

呆れたような、けれど鈴の鳴るような穏やかな声。

 振り返ると、看護師の制服を着た彼女が、トレイに乗せた包帯と消毒液を手に立っていた。

 戦場でボロ雑巾のように傷ついた自分を、彼女の白い手は、まるでもろい宝物を扱うように丁寧に包み込んでくれた。


 「ねえ、あなたのその手。戦うためじゃなくて、いつか誰かのために花を摘んだり、誰かを温かくつつみ こんだりするために使ってほしいな」

 彼女の指先が、火薬で汚れた彼の手の甲に触れる。

 彼女が触れる場所だけが、人間としての熱を取り戻していく。あの瞬間、彼にとっての世界は、戦場でも軍でもなく、目の前の彼女そのものだった。

 その彼女を蝕んだのは、敵の弾丸ではなく、音もなく細胞を壊していく病魔だった。

 「死」を届けることに特化した軍の技術は、彼女を「生かす」ためには何の役にも立たなかった。

 「……警告。装甲限界、全機能を停止します」

 無機質な電子音が、温かなカーテンの記憶を切り裂いた。


 目を開けると、そこは鉄と炭の匂いしかしない地獄の底だった。

 LCを庇った10機のPTは、あるものは手足を失い、あるものは装甲が焼けただれ、折り重なったまま物言わぬ鉄の墓標と化している。

 煤けたコックピットの中で、主人公は血の混じった喘ぎを漏らした。

 幻影。そうだ、あれはもうどこにもない光景だ。忘れるために、彼は自らをこの「亡霊の隊列」へと繋いだはずだった。


 だが、ハッチを抉じ開けて外へ出た彼の前に、それは横たわっていた。

 爆撃で更地となったクレーターの中心。


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