― 蹂躙の咆哮 ―
司令室を揺らしていた地鳴りが、突如として「静寂」に変わった。 それは嵐の前の静けさではない。アスラという災厄が、獲物を仕留めるための「照準」を完了した合図だった。
「な、なんだ……? アスラ、何をしている! 早くあの亡霊どもを追い――」
司令官の叫びは、突き抜けてきた漆黒の閃光によってかき消された。
ドォォォォンッ!!
格納庫から基地の広場に出たアスラの右腕に換装された重機関銃が火を噴いた。 放たれた徹甲弾は、司令室の分厚い防爆壁を一瞬で破壊、直撃の衝撃波だけで室内の通信コンソールが木端微塵に弾け飛ぶ。
「――排除。障害物、すべてを排除――」
機体スピーカーから漏れ出す「無機質な声」は、もはや死の宣告だった。 アスラは地上に立ちながら、その2本の隠し腕を自在に操り、上層階の司令部へ向けて無差別の銃撃を開始する。
ガガガガガガッ! と、隠し腕に備えられた中口径機関砲が連射された。 一発一発が人体を容易に粉砕する鉄の雨が、司令室の壁を、天井を、そして逃げ惑う司令官の足元を容赦なく削り取っていく。
「ひ、ひぃぃっ! 止まれ! 止まれと言っている……あぎっ!?」
司令官のすぐ横の壁が爆ぜ、飛び散ったコンクリートの破片が彼の頬を深く裂いた。 アスラにとっては、主も敵も関係ない。視界に映るすべての動体を「不純物」として処理する、狂った自動機械のような舞踏が始まったのだ。
「ロウ、上から降ってくるわよ! 急いで!!」
階下のデッキへ向かうスロープを駆け下りる三人の頭上で、凄まじい破壊音が響き渡る。 天井がひび割れ、アスラが放った砲弾の余波で、鉄骨が飴細工のように捻じ曲がりながら降り注いできた。
「……狂ったか。自らの司令部を、自らの手で葬るとはな」
キーヨが爆風に吹き飛ばされそうになりながらも、小型作業用ビークルのコンソールに食らいついていた。彼女の持つブルーチップが、狂ったように青いパルスを刻んでいる。
「……っ、見つけた! このチップ、基地のPT倉庫を指し示してる! 」『PT亡霊の倉庫』
「道順を脳内に叩き込め、キーヨ!」
……アスラに対抗するため3人は倉庫に向かった。
ロウ 、ニビ、キーヨが迫り来る瓦礫を間一髪で回避し、LCの待つデッキへと滑り込む。 背後では、アスラが基地の PT と激しい戦闘を繰り返している。
爆煙と火花が渦巻く中、三人は背後に迫る死神の銃撃を背に、沈黙する亡霊の機体たちへと手を伸ばした。冷え切った機体の鋼鉄に触れた瞬間、ブルーチップが熱を帯びたのを感じた。




