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王立魔法院魔法生物学博士課程: 甲種博士号審査申請書類. 様式3. 業績概要リスト

記録番号:AZ-ZE-0452-N2

被験体番号:被験体零號 男性 年齢: 推定6歳0か月

著者:レティシア・カラメイル博士補佐ら(ゼルダ魔導生体構造研究室)

作成日:第2月24日/新王国暦383年


実験課題名:脳内寄生型軟体魔法生物による思考増幅実験

【目的】

 魔法行使時の演算効率、記憶保持力、及び詠唱速度の向上を目的とし、脳容量の拡張と神経伝達速度の向上を図る。人工的に培養・錬成した試作軟体型魔法生物G13(通称:ニューロ・アメーバ)を脳内へ寄生・同調させることで、思考・記憶能力の強化を試みる。

【方法】

 本研究に使用する試作軟体型魔法生物G13は、予め行動プログラム可能な半自律型である。今回は被験体寄生先臓器の増殖と自己修復プログラムを施したG13を右鼻腔より注入し、保存的に経過観察を行った。


【観察結果】

 (1週〜10週)

・術後すぐに軽い発熱とまぶたの下垂が現れた。

・第1〜2週:

持続する頭痛、めまい、嘔吐のため臥床状態。被験体の反応も鈍く、点滴にて栄養補助を実施。

・第3〜8週:

頭痛、めまい、嘔吐症状やや改善。意識も清明となり、行動・発話は徐々に回復。しかし左目に視力障害が出現する。

・第9〜10週:

頭痛・消化器症状消失。日常生活は自立。表情・反応も回復。

ただし、左目は完全な失明に至る。一時期睡眠時間の延長が見られたが、次第に消失した

観察期間(24週間)終了時所見

・脳容量:1.3倍に増加。脳の長径が約4cm延長。それに伴い頭蓋骨の形態変化も認められた。

・外見変化:後頭部がわずかに膨らみ、通常よりやや大きく見える。髪で覆えば目立たない程度。前髪の一部、左目の上の辺りの一房の毛髪が白髪化した。

・神経反応速度は平均値比で1.6倍に上昇。記憶再現率も著しく改善された(術前比約190%)。

【結語】

 寄生型魔法生物による脳機能強化は有意な効果を示したが、宿主神経系への負荷が予想を超え、現時点では高リスクな手法と判断せざるを得ない。今後、寄生魔法生物の更なる改造が必要である。



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記録番号:AZ-ZE-0452-N3

被験体番号:被験体零號 男性 年齢: 推定6歳11か月

著者:レティシア・カラメイル博士補佐ら(ゼルダ魔導生体構造研究室)

作成日:第1月31日/新暦384年


実験課題名:雷獣角の魔力導管化移植術

【目的】

 伝説級魔獣種: 雷獣の角は極めて高密度の魔力伝導路を持ち、精密魔導制御において有用であるとされる。今回我々は、雷獣の幼体から未発達の角芽の取得に成功した。人体における高精度かつ高速の魔力制御を可能とする導魔器官の取得を目的とし、雷獣の角を人に移植する実験を行った。

【方法】

 両側頭部、こめかみと耳の間付近、髪の生え際のやや後方に適応加工した雷獣角芽を直接頭蓋骨へ固定した。固定後は、適応加工処理された角芽から分泌する融合液による頭蓋内への自然浸透、AZ-ZE-0452-N2で使用された「ニューロ・アメーバ」による自己修復能を利用して、被被験体の脳との融合を図った。

【観察結果】

 観察期間中、成長した角は長さ約15センチに達した。耳の上から後頭部の中ほどまで届き、頭蓋骨に沿う形で斜め後方へと流れるように伸びている(本文 図2を参照)。

 根元は直径約2.7センチ、そこから先端に向けてなだらかに細まり、鋭く尖る形状。

 全体としては細長いS字カーブを描き、見る角度によっては鳥の翼や、クラウンのように見える。硬質な金属光沢と陶器のような質感で、銀白色の中にごく淡く青がかったパール層を持つ。

 表面には極薄の筋状パターンが刻まれており、魔力制御時にはそれがうっすらと発光。魔力量に比例して輝度が変化し、全力時には軽い放電も見られた。

 角移植後、被験体の魔力制御精度は飛躍的に上昇。特に細密術式の成功率が施術前と比較して約240%上昇し、術式暴発の頻度は半減した。

 しかし、術後31日目より魔力過負荷によると考えられる神経炎が発生し、右下肢に軽度の麻痺が残存。観察終了時には運動機能は8割程度回復しているものの、瞬発力・持久力に低下を認めている。

【結語】

 雷獣角の魔力導管化による制御向上効果は明確であり、術式精密性の分野において有望と考えられた。一方で、生体の魔力伝道効率向上に伴う、神経炎などの生体負荷リスクの発生も示唆されている。加えて、希少な伝説級魔獣種由来の材料入手困難度も一般化に向けた課題と考えられる。



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記録番号:AZ-ZE-0452-N4

被験体番号:被験体零號 男性 年齢: 推定7歳3か月

著者:レティシア・カラメイル博士補佐ら(ゼルダ魔導生体構造研究室)

作成日:第6月1日/新王国暦384年


実験課題名:セイレーン声帯移植術

【目的】

 セイレーンは上級魔物として危険種指定されているが、その声帯から発生する音声には優れた魔力共鳴特性がある。その為「セイレーンの声」は高密度な情報伝達を可能とし、我々より短い詠唱で高位な魔法の行使を可能としている。我々はその特性に着目し、セイレーンの声帯を人間に移植することで高速詠唱能力を得る可能性があるという仮説を持った。本研究は人による魔法詠唱の速度向上を獲得する事を目的としている。

【方法】

 死亡した個体より摘出・冷凍保存されたセイレーンの声帯を、全身麻酔下で被験体の咽頭部に移植。術後は魔法発声訓練を3週間実施し、効果判定を行った。

【観察結果】

 術後、嗄声の為、約12週間会話が困難となった。その後、嗄声は次第に回復し、観察期間中に会話は可能なレベルまで回復した。魔法発声訓練により詠唱時間は第三階梯魔法詠唱平均1.7秒に短縮した (通常第三階梯魔法詠唱時間平均10..5秒)。魔力流動値の安定性向上が見られた。また、発音による魔力震幅が従来比で約140%上昇。

【結語】

 セイレーン声帯の人間個体への移植は、詠唱速度の向上において明確な効果が確認された。ただし、発声器官の異種生物間移植における神経再適合は依然として課題であり、術後の嚥下機能障害・肺合併症は今後の改善対象である。



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記録番号:AZ-ZE-0452-N5

被験体番号:被験体零號 男性 年齢: 推定7歳3か月

著者:レティシア・カラメイル博士補佐ら(ゼルダ魔導生体構造研究室)

作成日:第6月1日/新王国暦384年


実験課題名:ゴルゴーン蛇舌移植術

【目的】

 ゴルゴーンの舌は、所謂蛇に似た構造を持っており、二又に分かれた先端はそれぞれ独立して稼働する。ゴルゴーンはヒト型魔獣に分類され大陸南東部に生息しているが、獲物を呼び寄せるときに一体で会話するような行動を見せる事が知られている。ゴルゴ-ンの舌を人間に移植することで、同時に複数の魔導式を実行する並列詠唱が実現する可能性がある。

【方法】

 本研究はその性質上、記録番号:AZ-ZE-0452-N4と同時に実施された。再構築処理を施したゴルゴーンの分岐型舌を、被験体の舌根部に固定し、再構築術式により神経融合を図った。術後は、詠唱魔法二種の同時詠唱テストを3週間継続実施して効果判定を行った。

【観察結果】

 術後しばらくは、呂律障害が見られ、特にラ行の発音が困難となった。また、術後2週目に誤嚥による肺炎を併発し、別途加療が必要であった。神経融合が進むに連れ諸症状は改善が見られ、訓練により二重詠唱(防御系+感知系)において成功率65%まで上昇した。

【結語】

 ゴルゴーン舌移植は詠唱性能の拡張に対し有用性を示す結果となった。一方、並行詠唱には独特の訓練が必要である事が判明し、今後標準化された訓練法の確立が必要と考えられた。



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記録番号:AZ-ZE-0452-N6

被験体番号:被験体零號 男性 年齢: 推定7歳8か月

著者:レティシア・カラメイル博士補佐ら(ゼルダ魔導生体構造研究室)

作成日:第10月20日/新王国暦384年


実験課題名:並列詠唱補助器官「人面瘡」移植実験

【目的】

 通常、人間の脳構造は単一詠唱に適応しているが、複数系統の術式を同時に演算・起動するには、新たな補助中枢の設置が必要である。本実験では、魔法詠唱における並列処理を可能とする補助器官の創成を目的とする。錬金術により作成された人工魔法生物(人面瘡型)を両手背に寄生させ、宿主の脳と接続する事で、言語演算と術式管理の分担を図る。

【方法】

 精製済みの人工魔法生物(分類:寄生型高知能従属生物)の萌芽を被験体の両手背部に注入し、周囲組織との神経接続を誘導。寄生型高知能従属生物は宿主の魔力を養分として成長する。成長後、寄生型高知能従属生物と宿主による、多重詠唱・並列詠唱実験を行い、効果を検証する。対象生物は宿主の命令により表皮上へ浮上(人面状)し、発声器官を有する。これにより詠唱行為を宿主の制御下で分担可能とする。神経制御に必要な微量魔力は、宿主体内から直接供給される。

【観察結果】

 人面瘡は移植より約7日で宿主に定着した。8週目に外皮への浮上が可能となり、被験体の命令に応じて起動・消退を自在に行える状態へと安定化を認めた。19週目の時点で術式構文の記憶および再現精度も良好で、第三階梯までの詠唱ならば完全な独立起動が可能となった。人面瘡の起動と維持には、毎分第三階梯の魔法発動と同等の魔力消費が必要だった。

【結語】

 本実験は、並列魔法詠唱実現の一手法としての可能性を示した。並列詠唱における補助機能は良好に作用し、重篤な宿主への負荷認められなかった。一方で、人面瘡の起動と維持には、毎分第三階梯の魔法発動と同等の魔力消費が必要だった。一般的な魔力保有者としては、数分の連続起動が限界と考えられた。消費魔力の低下は必要であり、今後の課題と考えられた。



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記録番号:AZ-ZE-0452-N7

被験体番号:被験体零號 男性 年齢: 推定8歳0か月

著者:レティシア・カラメイル博士補佐ら(ゼルダ魔導生体構造研究室)

作成日:第3月1日/新王国暦385年

実験課題名:機能換装対応人工眼窩の埋設手術

【目的】

 失明した左眼の代わりに多機能人工眼球を着脱式で装着可能とするため、柔軟かつ成長追随性を持つ人工眼窩を形成。これにより、夜間視、遠視、魔力感知、広域探索など用途に応じた眼球の換装を可能とし、失われた感覚器の代替えの可能性を探索する。

【方法】

 左眼球を摘出後、眼窩内の骨組織を精密切除。魔獣「紅甲獣」より抽出した可塑性を持つ外殻を基材とし、人工眼窩として成形・移植。基材は魔力刺激により徐々に拡張・変形し、被験体の成長に対応。眼球の装着機構は魔力パターン認証によって作動し、任意で脱着が可能とした。

【観察結果】

 移植後の生体適応は非常に良好であり、拒絶反応や疼痛の自覚はなかった。人工眼球の試験装着においても、接続安定性と想定能力に問題は見られなかった。特に夜間視野拡張ユニット装着時には、通常の3.5倍の視界明瞭度を実現。現在までに副作用や機能障害は認められていない。

【結語】

 機能換装型人工眼窩の埋設は、安全かつ高性能な補助器官として機能し、将来的には多様な眼球への対応も期待される。成長追随機能により、加齢による再手術の必要性も低く、長期運用において優れた成果が見込まれる。

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