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第2話 地味スキル【万歩計】の隠された実力

 村を出て、寒風吹きすさぶ真夜中の街道を行く。


 これでも冒険者の端くれだ。

 夜道が危険なのは重々承知している。

 モンスターや野盗が襲ってくる危険があるからだ。


 けれど幸いにも、少し歩いただけで無人の小屋が見つかった。

 小屋を見つけたのは偶然ではない。

 元からそこを今日の宿にするつもりだった。


 私は今まで歩いてきたすべて道を、町の景色を、ダンジョンの構造を頭の中に記憶している。

 頭の中にある周辺の地形から距離を、星の位置から目的地までの方角を定め、歩数をカウントする【万歩計】スキルと自分の歩幅の長さを組み合わせて計算すれば……。



「ジャスト20分。今晩の宿に到着っと」



 計算通りの時間に廃墟と化した小屋に到着。

 中に入って荷物を下ろす。


 冒険中は雨風や荷物の重さ、体調やパーティーメンバーの数、モンスターの生息地域などを考慮に入れなくてはならないが、今はお一人様で比較的安全な街道沿いを歩く気まま旅。余計な心配はいらなかった。


 この通り、クズなスキルも使いよう。

 知識と経験とちょっとした気づき、そして地図があれば、快適な冒険が約束されている。

 それなのに……。




「どうして誰も地図の素晴らしさをわかってくれないの!?」




 私は荷物から取り出した地図を掲げて無人の小屋で叫ぶ。

 魂の慟哭(どうこく)にも近かった。


 これで冒険者パーティーを追放されたのは3度目。

 誰もかれもがそろって口にする。



『一度歩けば道は覚えるから地図なんていらない』

『いつも地図ばかり読んでて怖い。あとなんとなくキモい』

『落書きなんてしてないでちゃんとした職に就きなさい。隣のリーファちゃんは魔法学院に入ったのよ』



 最後のは実家にいる母親の小言だが、とにかくそうやって私と地図を馬鹿にする。



「地図はすごいんだぞ……。うぅ……」



 私はメソメソと泣きながら丸めた地図を胸に抱き、毛布に身をくるんだ。

 バーバリックの前では冷静さを保とうと努力したが、一人きりになるといつもこうだ。

 根暗なオタクちゃんという評価は的を得ている。黒髪で地味だし愛嬌もない。


 頭の中で、今まで覚えたスキルを思い出してみる。



 ――――――――――――


 イノ・ランドマイルズ


 18歳 女性 / 冒険者ライセンス【シルバー】


 ユニークスキル【万歩計】


 一般スキル 【短剣】【投擲】【製図】【初級錬金術】【誘導】【整列】【注目】【気合】


 パッシブスキル 【体力増強】【映像記憶】


 ――――――――――――



「……うん。スキルまで地味だ。彼の言うとおり、他に役立つスキルがあれば居残れたのかもなぁ」



 ポツリと呟くが、私はすぐにクビを横に振った。

 もうあのパーティーには戻れない。戻る気もない。



「これからどうしよう……」



 私は目を閉じて、これからの道程を頭の中で思い描く。

 頭の中には今まで巡ったダンジョンの構造が浮かんでは消えていったが、自分が進むべき道はどうやっても思い浮かばなかった。

追放されてボッチになったイノさん。これからどうなってしまうのか……。

安心してください。これ以降は活躍しかしませんよ。


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