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第12話 一触即発。それぞれの想い

 

 豪奢な内装が施されたホワイトブルーム家の執務室。

 私はそこで思わぬ人物との再会を果たす。



「どうしてバーバリックがここに?」


「それはこっちのセリフだ。生きてる間はオレの前に顔を出さないんじゃなかったか?」



 ソファーに座ったままのバーバリックが私を睨む。

 すると、セリスさんが一歩前に出て私を護る。



「わたくしのイノさんに向かって、なんですかこの無作法者は。衛兵、このお猿さんを外に追い出してくださいまし」


「こらセリス。ゴールドランクの冒険者さんに失礼だろう」



 セリスさんの啖呵にお父さんは大慌て。額に浮かぶ汗をハンカチで拭う。



「失礼しました、バーバリック殿。ウチの娘がとんだご無礼を」


「ふん。しつけがなってねぇな。オレが手伝ってやろうか」


「滅相もないっ」



 セリスさんのお父さんはこれまた慌てて首を横に振る。

 それから困ったように眉尻を下げて、闖入者であるセリスさんに話しかける。



「セリス。いまは大事な会議中だ。用があるなら後にしなさい」


「サクランボ・モモクイジィーヌ曰く?」


「はぁ…………。そこで私の大好きな詩人の名前を出すとは。わかった。手短に話せ」


「では、用件だけ述べます」



 どうやら娘の方が大事らしい。

 お父さんに促されたセリスさんは背後に控えていた私を紹介した。

 私は慌てて頭を下げる。



「あっ、い、イノ・ランドマイルズです」


「お初にお目にかかります。セリスの父、《《ゼロノア・ホワイトブルーム》》です」


「ど、どうも」



 私がもう一度頭を下げると、様子を見ていたバーバリックが「はっ」と鼻で笑っていた。

 かなり態度が悪いな。ゼロノアさんとどういう関係なのかも気になるが、今は……。



「わたくし、こちらにいるイノ・ランドマイルズさんとパートナー契約を結ぶことにしましたの」



 セリスさんはそう言って父親であるゼロノアさんの前に封書を差し出す。



「この契約は、イノさんが所属しているオランドの冒険者ギルドも承知しておりますわ」


「ふむ……。なるほど、カーミラのギルドか」



 封書の中身を確認したゼロノアさんは苦虫を噛みつぶしたような顔で呟く。



「お知り合いなんですか?」


「カーミラは古くからの知り合いでね。彼女がギルド長になる前に何度かやり合ってるんですよ。ウチは貿易で生計を立てているのですが、カーミラは先物を取り扱うのが上手で……」


「こほんっ。お父様」


「おっと失礼。昔話をしてる暇はなかった」



 ゼロノアさんは封書をテーブルの棚にしまうと、セリスさんに向き直る。



「話はわかった。イノさんとパートナー契約……つまりはペアでのパーティー契約を行うというわけだな」


「左様です。契約は長期にわたるでしょう。もしかしたら一生おそばにいらっしゃるかも。きゃっ」



 どうしてそこで恥ずかしがった。

 が、私は場の空気に飲まれてツッコム余裕はない。


 カーミラさんに言われてセリスさんの実家側の許可をもらいに来ただけ。

 とにかく早いところサインを貰って帰りたい。ドレスは窮屈すぎる。


 そうやって私が黙っているとゼロノアさんは首を横に振った。



「却下だ」


「どうしてですの!?」


「そもそもの話、私はセリス……おまえが冒険者になることを認めていない」


「えっ? そうなんですか?」


「そ、それは……」



 思わぬ事実に口が出る。今度はセリスさんが黙る番だった。



「セリスは子供の頃から外の世界に憧れておりましてな。屋敷を訪れる冒険者の話を聞いてるうちに、彼らのまねごとをするようになったのです」



 これまたどこかで聞いたことのある話だ。

 私も幼い頃から冒険に憧れて、やがて冒険者として旅に出た。



「あまりにもうるさいので魔法学院に入学させたのですが、それがいけなかった。セリスは学院に通いながらこっそりと冒険者ライセンスを取得していたのです。そうして気がつけばプリーストとして冒険に出るようになったのですが……」



 ゼロノアさんはそこで深いため息をつく。



「冒険者としての才能がなかったのでしょう。いつまで経ってもブロンズクラスのまま。噂では人様に迷惑もかけているとかで。恥ずかしいのですぐ家に戻るように言っているのですが……」


「その噂は根も葉もありませんわ! わたくしは精一杯努力しておりますのよ」


「努力しただけで成功するなら、この世の人間は全員億万長者だ。おまえもよく知っているだろう。神より授かりし優れたユニークスキルこそが人生の成否を分けるのだ」


「お父様はいつもそうですわ。才能こそがすべて。生まれで優劣は決まると」


「当然だ。それが世の真理だからだ!」



 セリスさんとゼロノアさんの口論がヒートアップする。

 するとそこで、黙って話を聞いていたバーバリックが手を叩いた。



「あははは! ゼロノアの旦那はよくわかってる。やっぱり世の中は優れたヤツが中心に回すべきなんだよ」



 バーバリックはソファーから立ち上がると、セリスさんの身体をじろじろと見ながらニヤリと笑う。

おまっ、何をする気ですのっ!?


ここまでお読みいただきありがとうございます。読者さまの☆やブックマーク創作の後押しになります。少しでも面白い、先が気になると思われたら、応援よろしくお願いいたします。

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