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有彩色に染まる朝  作者: つむぎ
第1章 不思議な女の子
3/30

3.憧れの世界

 入院生活も今日で1週間が経過した。もうそんなに経ったのか、というのが正直な感想だ。雛さんと一緒の日々は毎日が彩に満ちていて退屈しない。本来苦でしかない入院生活がこんなにも楽しいと思えている。雛さんにはほんと、感謝しかないな。


 長〜い検査が終わって部屋に戻ると、ベッドの上に大きな紙袋とメモ用紙が置かれていた。


 なんだこれ?


「雛さん、これ何か知ってます?」


 カーテンから雛さんが顔をだした。


「あ〜、さっき2人組の男の子が来て、その袋を置いて行ったよ」


「2人組の男の子?」


「えっとね、1人は青のチェック柄の服にピンクの眼鏡だった。もう1人は、何かのキャラクターのTシャツを着てたよ」


 あ、わかった。あいつらだ!


「そいつら、多分僕の友達です」


「そうだったんだ。優しい友達だね」


 どうやら友達がお見舞いに来てくれていたみたいだ。来るなら来るって連絡くれればいいのに。


 紙袋の横に置かれているメモ用紙を開けた。


『LINE見ろ!!!!!!!!』


 スマホを開けると、あいつらからすごい数のメッセージが来ていた。


 ......ごめん!

 心の中であいつらに謝った。後でしっかり謝っておこう。


 僕にはメールやLINEの通知を溜め込む癖があり、アイコンの右上に表示される通知数が常に3桁程になっている。その為、誰かからLINEが来ても気づかず、丸1日返信しないなんてこともざらにあるのだ。


 紙袋の中を確認すると、今にも溢れんばかりの大量のお菓子が入っていた。って、こんなに食えるか!!

 よし、後で雛さんに分けてあげよう。これで解決だ。


「あの2人って学校の友達?」


「そうですよ」


「いいな、学校か〜」


「学校ってそんなにいいですか? というか、雛さんも学校行ってたでしょ?」


 雛さんの表情が少し曇った気がした。


「ううん、私、学校に行ったことないよ。小さい頃からずっと入院してて、病院の外に出たことがないの」


 そうだったんだ......

 僕は衝撃の告白に返す言葉が思い浮かばず、うなずきだけを返した。


「だから学校とか友達とかって憧れるの。夢なんだ、病院の外の世界って」


 雛さんは窓の外のどこか遠いところを眺めながらそう言った。


「いつか一緒に行きましょう。僕が退院して、雛さんも退院したら」


「うん。退院したら......ね」


 雛さんは浮かない顔をしていた。


「はい、この話はもうおしまい! そうだ、その紙袋の中って何が入ってたの?」


「え、ああ、大量のお菓子が入ってました」


 ベッド横に置いていた紙袋を雛さんの手元に置いた。雛さんは紙袋の中を覗き込む。


「うわぁ、ほんとだ。お菓子がいっぱいだね」


「雛さんってお菓子食べます? よければ半分貰ってくれませんか?」


「え、いいの? やったー!!」


 雛さんは子供のように喜んでいた。


「お菓子かー、最後に食べたのいつだったかな。病気で食べちゃダメ!って言われてたから、ずっと食べさせてもらえなかったんだ」


「今は食べて大丈夫なんですか?」


今は(・・)そんなの気にしなくて大丈夫だよ」


 紙袋からお菓子を半分程取り出し、雛さんに手渡した。


「ゆいとくん、ありがとう。これで楽しい楽しい入院生活が送れそうだよ!」


「お菓子のパワー凄いですね」


 喜んでもらえたなら何よりだ。



 コンコンと扉をノックする音が部屋に響く。もうあの時間か。


「大浦さん、準備できてますか?」


 いつもの如く、看護師さんが僕を迎えに来た。


「はい、すぐに行きます」


 僕は必要な書類や小物等を急いでまとめ、両手に抱える。


「雛さん、検査行ってきますね」


「うん、いってらっしゃい」


 僕は部屋を出て、看護師さんのもとへと向かった。


「すみません、遅くなりました」


 看護師さんがまた不思議そうな顔をしていた。


「あの、大浦さん」


「はい?」


「いつも部屋で誰と話しているのですか?」

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