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異世界行ったら龍姫が俺の嫁!?  作者: じぐざぐ
第弐部 俺の封印
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第95話 俺の帰還

俺たちは前回来た森の中の小道をまた戻っていく。

今日の魔女先生の装いは和風の着物で、少し座敷童っぽい。

残念ながらパンツは見えそうにない。


「かかか、なんじゃ見たいのか? かかか」

「いえ、もう一月半、二月くらいですか? スイの入学式、間に合わなかったなぁ、と」

「何を言うかと思えば……ワシらがここへ来てもう一年が過ぎさったぞ」

「え? まさか! 俺一応数えてたんですけど、いや、気を失っていた時もあるけど、せいぜい二か月くらいでしょ?」

「かかか、あのなぁ~二の丸様よ、この森はのう、神域じゃ、時の流れは尋常ではないのじゃ。ワシは実は毎日、二の丸様のところへ通っておったのじゃぞ? なんせお側衆だからの、かかか」


え? うそだろ? 魔女先生が来たのは本当にランダムだった。

一日後の時もあれば数週間姿を見せない時もあったが……


「かかか、二の丸様に差し入れを渡し、すぐ帰ったのもな、あんまし影響がな、ないようにじゃ、かか」

「そうなんですか?」

「かかか、うむ。ワシも長く生きてはおるが、まだまだ龍にも亜神にもなりたくないでのう、かかかか」


神域ね、ヒカリやシズクのところへ行ったみたいなもんかな?

そんな話をしつつ道を進んだのだが帰りはあっという間だった。

三十分もかかってないんじゃないだろうか?

行きはニ、三時間もかかったのに……。


飛竜場が見え、脇に宿泊した館も見える。


ここは誰もいない。

あれ? 乗って来た飛竜も藤野上条伯爵もいないんじゃない?


「かかかか、伯爵殿はの、あの日、一日飛竜を休ませて次の日にとっとと中継島に戻られたわい、かかかかか」

「え~、そうなんですか?」

「かかか、そうじゃぞい、ワシ一人で一年もこんな場所におったのじゃぞ? 寂しかったわい、かかかか」

「そうだったんですね……なんだかすみません、俺のために」

「かかかか、これも二の丸様への愛故じゃよ。どうじゃ、いじらしいじゃろ? かかかか」

「は、はぁ……」


返答に困るなぁ。


「かかか、冗談じゃ、ワシは二の丸様の案内役兼お世話係のお側衆じゃよ、かかかか」

「で、どうやって帰るんです? あ! ここにもあのまだら丸みたいな海竜がいるんじゃないですか!? 海竜に乗って帰るとか!? 俺、一度海竜に乗ってみたかったんですよね! 気持ち良さそうですよね!」

「かかかか、残念じゃがここには海竜はおらんよ、まぁその早口をやめて黙って付いてくるんじゃな、かかか」


そう言い魔女先生はスタスタと歩き出す。

少し残念だ。海竜の背に乗り海を突っ切るのはさぞ爽快だろうと思ってたし飛竜の上は飛び上がりの時こそ感動するが後は風が強いだけでそんなに楽しくもない。

操竜してるのは楽しそうだが……

仕方なく俺は言われるがまま魔女先生の後を飛竜場の中央まで付いて行った。


「かかか、ほい、これを渡しとくぞ、二の丸様」


と、唐突に黒い、小さなアメ玉のような物を渡された。


「なんです? これ」

「かかかか、これをな、飲むと気を失う。合図したら飲みやれ」

「いやですよ、そんな物騒なもの」

「かかか、言うたじゃろ? 帰りも気を失ってもらうと」

「あ~、そう言えば……飲まなきゃだめですか?」

「かかか、うむ」

「わかりました、飲みますよ、それで? どうやって帰るんです?」

「かか、ちょいと待て」


と、言うと魔女先生はスルスル着物を脱いでいく。


「え?」


魔女先生はさっさと全裸になり、丁寧に着物を折りたたんで手持ちの鞄にしまった。


「どうしたんです? 欲情でもしましたか?」


俺に言われて魔女先生は腰に手をやり、貧相な体でポーズをとる。


「どうじゃ? そそるじゃろ?」


いやいや、魔女先生にはすまないが俺には娘もいるし、風呂にも入れることもある。

正直小学生の着替えにしか見えない。


「いや……すみません……」

「かかかか! ふん! 張り合いのないことよのぉ~」


と言いながら彼女は額を光らせると体が突然膨張し、あっという間に龍になった。

自分で真体になったからわかることだが、変体はけっこう時間がかかる。

それを一瞬でやってのける俺の周りの連中はやっぱりすごい人達なんだな、と感心する。

そして服を脱いだのはなるほど、破かないためだったんだな、と納得。


それにしてもなんと見事な龍だろう。

魔女先生恰好いいぜ!


”かかか、ふふん、どうじゃ、大したもんじゃろが? かかか”


うわっ、気持ちわるっ!? 

頭の中に直接言葉がっ!?


”かかか、龍になるとな、声帯が変わるでの。言葉を発することができなくなるでの、こういう小技を使い、会話するんじゃ、覚えておくんじゃな、かかか”


そして俺は魔女先生に指示されながら倉庫にある、魔女先生用の鞍を、これが大きくて重くて、なんとかリアカー的なもので運び、魔女先生に付けて、背に乗り、命綱を付けてだな。


「……やっぱり飲まなきゃだめですか?」

”かかか、男なら潔く覚悟を決めよ”


その後は黒いアメ玉を飲み、気を失った俺を中継島まで魔女先生が運んでくれて、伯爵と合流したのち、やっと帝国へ帰ってきてだな、スイにいきなり吹き飛ばされた訳だよ。



◇◇◇


スイは式を欠席し、やっと帰って来た父に不満をぶつけ、ついでに水をかぶせて多少の溜飲は下がったのでお供を連れて戻ろうと思ったがその父がなにやら披露すると後ろから聞こえた。


……ふむ、ならば見ていってもいいか。


そう判断を下し、少し離れた木陰で眺めることにした。

お調子者の父は女房衆のみならず、お側衆や近衛の武士たちまで呼んで、飛竜の世話をしていた竜人までなんだ、なんだと集まって来た。


「ではでは、お集まりの紳士淑女の皆さま、お待たせいたしました、これよりご覧に入れまするはこの龍之宮龍一、我が一世一代の修行の成果!」


父がなにやらオーバーなリアクションと口上で見物客を沸かせている。


……恥ずかしい。ああ、あんなに踏ん張って、


正直恰好良くはない

身内が(いい意味ではなく)やらかしそうな時というのはなにか背中がムズムズする。


そのうち龍一の額が光りだした。

スイは思わず身を乗り出す。

今まで一度もそんな父の姿を見たことはなかった。

山小屋に住んでた時は自分の龍紋をすごいな~とか、龍術を見せれば父さんには出来ないからスイは大したもんだ、などと褒めてはくれるが、ついに自分ではそういったことはスイに披露することはなかった。

しかしお城に住み始めてからは”俺には十個の龍紋があるんだぜ”と良く言うようになったがその一つも見せてもらったことはない。

きっと負け惜しみかなんかだろうと思っていた。

が、それが今見られるのだ。


……三十秒かけて真体になって父は胸を張った。


「はぁ、はぁ、どうだ!」


マリーが期待の眼差しで父を煽る。


「それで、次は何を見せてくれるんです?」

「え?」

「水だろ、龍! スイ様みたいに水カッターやってくれよ!」

「龍ちゃん、どのくらいまで飛べるの? 私と飛ぼうよ!」

(あるじ)、次は是非、龍になって」

「龍一、ちゃんと炎は扱えるのよね?」


母連中が容赦なく、煽りまくる。


「いや……これが精一杯。つか、今んとこ、これしかできないだけど……」


と、父が答えた瞬間に母たち以外の者達が一斉に踵を返した。


「え、え~と竜車の手配が済んでなかったかなぁ~……」

「ほらほら、うちの飛竜は疲れているのよ、手荒にしないで!」

「報告書のまとめが……」


まさに蜘蛛の子を散らすように去っていた。


「さ、さぁ! 皆! 兄さまはお疲れでいらっしゃるわ! 知っての通り、今日は二の丸でお疲れ会が開催されます。さ、準備、そう! 準備に忙しいわね、ほら行きましょう!」


レイリが強引に解散宣言をする。


「え、おい、なんだよ! すごいだろ? え? なんなのこの反応! おいランゼ! なんとか言えよ」


……あ~、父がみっともなく周りに”すごいだろ”を強制している……


「え、あ~うん、すごいな、ははは……」


ランゼは目線を合わせず答える。

そりゃ気まずいだろう、とスイは思う


「マリー!」

「え~と、そのぅ、なんですよぅ~」

「レイカ! 我が半身! すごいよな! な!」

「ふぅ~、我が半身。この国では十歳の子でも十秒もかからず真体になる、んだけど……」


ついにレイカがとどめを刺した。

スイですら今は真体となるに八秒はかからない。

打ちひしがれてる父をサキとマリーが慰めているが多分、会話は聞こえないがあの二人だと死人にムチ打つような効果しかないだろうとスイは容易に予想がつく。


「行きましょうか」


スイは側で微妙な顔をしていた共を引き連れ、帰投することにする。

その、少し離れたところでレイラが父と一緒に飛竜で戻ってきた人物となにか会話している。

確か、最近増えた父のお側衆だったか?

年の頃はどう見ても自分と同じかそれよりも幼く見えるが、多分見た目は当てにはならないだろう。


「おかえりなさいませ、本田様。お疲れ様でした」

「かかか、うむ、レイラ殿。労いのお言葉、痛み入る」

「今回はご無理を聞いて頂き、本当に感謝の念に堪えません」

「かかかか、いや、なんの、なんの、楽しい旅じゃったわい。なかなかに興味の尽きない御仁じゃわい。さすが異世界の君よの、かかかか」

「今後とも良しなにお願いします」

「かかか、うむ、ワシに出来る限りのことは協力することを約束しよう、かかかかか」


二人の側をレイラに一礼して通り過ぎたが聞こえてきた会話はただの挨拶のようだった。

が、レイラが父のお側衆に直接声をかけるのを見たことがなかった。

そのあたりが不自然と言えば不自然だ。


……気にし過ぎだろうか、とスイは思いなおし、騒がしい飛竜場を後にした。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

これでやっと”俺の封印編”が終了です。

次回からは現在進行形の話に移行いたします。

他の子供たちも成長し、主人公にもさらなる試練が待ち受けていて、帝国を挙げての大騒動に発展する……かもしれません。


今回もボツになった魔女先生verがございますので、おまけとして視点の違うお話をお楽しみください。


◇◇◇


「ほらほら、下がって、下がって!」


かかか、ワシが一応上司でもあるオカッパにの、今回の報告をしてる時じゃったかの。

先ほど無様に娘に吹っ飛ばされた上、びしょ濡れにされた二の丸様がの、女房衆に得意げになにやら披露すると言う。


「かかか、オカッパ、ワシらも見に行こうぞ、きっと面白いぞ、かかか」

「あ、先生、待ってくれ、まだ報告の途中だぞ」


二の丸様の周りにはすでに女房衆の他に近衛の連中や飛竜から降りたら真っ先に飛竜を労わる伯爵殿も興味津々に見ておったのぉ。


「ふふふん、お集まりの紳士淑女の皆さま、ではお待たせいたしました、これよりご覧に入れまするは龍之宮龍一、我が一世一代の修行の成果!」


かかかかかかか、おうおう、大業な口上を述べおって、ドキドキするのう、かかか

お、なにやら踏ん張って……なんじゃ、もうちっとスマートに出来んのか、ふむ、やっと額が光りおった。

う~~ん、なんじゃ、この、自分でやるよりハラハラする気持ちは?

ダメな我が子の発表会でも見てる気持ちじゃな。

そうそう、角をだして、ホラホラ、羽を生やさんかい、ん~尻尾はもっと綺麗に出さぬか!

三十秒もかけおって、まだまだじゃのう。


「はぁ、はぁ、どうだ!」

「それで、次は何を見せてくれるんです?」

「え?」

「水だろ、龍! スイ様みたいに水カッターやってくれよ!」

「龍ちゃん、どのくらいまで飛べるの? 私と飛ぼうよ!」

(あるじ)、次は是非龍になって」

「龍一、ちゃんと炎は扱えるのよね?」


かかかか、女房どもは手厳しいのぉ~。


「いや……これが精一杯。つか、今んとこ、これしかできないんだけど」


と二の丸様が言うた途端にじゃ


「え、え~と竜車の手配が済んでなかったかなぁ~……」

「ほらほら、うちの飛竜は疲れているのよ、手荒にしないで!」

「報告書のまとめが……」


女房達以外の連中はさぁ~といなくなってしもうたの、かかかかかか。


「え、おい、なんだよ! すごいだろ? え? なんなのこの反応! おいランゼ! なんとか言えよ」

「え、あ~うん、すごいな、ははは……」

「マリー!」

「え~と、そのぅ、なんですよぅ~」

「レイカ! 我が半身! すごいよな! な!」

「ふぅ~、我が半身。この国では十歳の子でも十秒もかからず真体になる、んだけど……」


かかかか、ずばりと言ってもうたの、若いモンは残酷じゃな、かかかか


「さ、さぁ! 皆! 兄さまはお疲れでいらっしゃるわ! 知っての通り、今日は二の丸でお疲れ会が開催されます。さ、準備、そう! 準備に忙しいわね、ほら行きましょう!」


かかか、あれはレイリ殿かの。うまいこと? いや強引に撤収されたわい。


「おかえりなさいませ、本田様。お疲れ様でした」

「かかか、うむ、レイラ様。労いのお言葉、痛み入る」

「今回はご無理を聞いて頂き、本当に感謝の念に堪えません」

「かかかか、いや、なんの、なんの、楽しい旅じゃったわい。なかなかに興味の尽きない御仁じゃわい。さすが異世界の君よの、かかかか」

「今後とも良しなにお願いします」

「かかか、うむ、ワシに出来る限りのことは協力することを約束しよう、かかかかか」


さてさて、これからどうなることやら楽しみじゃわい、かかかかかか


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