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異世界行ったら龍姫が俺の嫁!?  作者: じぐざぐ
第弐部 俺の封印
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第89話 静かなる暴流

「あれが皇女殿下よ」

「なんと麗しい……」

「……どうして『静かなる暴流』なんて……」

「しっ! その名を口にするな!」


スイが龍之宮学園中等部に入学してから一年が過ぎた。

持前の穏やかな性格と成績優秀さと、なにより龍帝国建国以来、初めての”水の龍人”として入学初日より大人気であり、大注目の的だった。

スイが水属性であることは隠してもいずれバレるのは明白なので皇室としても堂々とスイのことは喧伝している。

それ故言い寄る者が後を絶たないがそれはスイ付きの近衛とアイ、そして早速できた生徒有志による親衛隊がスイに近寄る有象無象を退けていた。

スイに近寄りたいがため、度を超した行動をし、スイ自身により水びたしにされた連中もいてスイのカリスマは高まるばかりだった。

今ではスイに水びたしにされることが自慢になったり、その水を取引する者まで現れる始末だった。

入学して少したった頃には是非中等部代表にと、頼まれたがまずは学園生活に慣れることを第一に、と断ったこともある。


「今日も学園は賑やかですね」

「そぉ~ですよぉ~姫様が御歩きになっただけで皆大騒ぎですよぉ~。皆、姫様に濡らしてもらいたいんですよぉ~変態ちゃんですねぇ~」

「ホラ、あ~しら炎だからさ、頭が沸騰しやすいからさ。姫様に冷やしてもらいたいんじゃない?」

「姫様、有象無象の始末は我らスイ様親衛隊にお任せ下さい。いつでも消し炭にして御覧にいれます故」

「あまり乱暴なことはおやめ下さいね」


石野アイは学園ではそんなスイと取り巻き達の側を一歩離れて控えている。

スイの合図があればすぐにでも側に行けるようにいつでもスイの表情、言葉を逃さないようにしている。

彼女は今ではスイの周りにいる、彼女の信者とも言えるその他大勢と同じ様に、いや側にいる時間が長い分、より一層スイに心酔している。

もはや最初の頃アイが彼女に礼儀作法やらお城での暮らし方などをアドバイスしてたのがウソの様だ。

アイは最近ではスイに仕えるために生まれてきたのだ、とさえ思っている。

彼女の役に立ちたい、彼女に「ありがとう」と言われる度に無上の喜びを感じている。


そんなアイの変化に龍乃影兄妹が気づかないはずもなかった。

なぜなら彼女の報告書は日に日にスイを褒めたたえる内容になっていくからだ。

直近の報告書ではもはや崇め奉っていると言って良いほどだ。


心配した龍乃影家はアイに三日の休みを取らせ、彼女を検査した。

洗脳されているか、どうかを。

この世界には洗脳技術は沢山ある。

薬などを使うこともあるし、魅了(チャーム)などの異能などを使われる場合もある。

龍乃影家の専門家チームが入念に検査したが結果は異状なし、であった。

もはやアイが本心から彼女に心酔してるのは間違いなかった。

龍乃影家中のなかではそこそこ優秀でそこそこ気が利いてなんとなくなんでもソツなくこなす、といった平凡な彼女だからこその結果だろうか?

検査中も彼女はいつ戻れるのか、早くスイのとこに返せとうるさかった。


末野下条三治 十四歳


彼もまたアイと同じくスイに仕える近衛であり、下条家では事情を良く知るカナエによりこちらも厳選を重ね、選ばれた一人だ。

だが影家と違い、その仕事の性格上武辺至上主義的な家風なため、彼もまた、勉強したり、本を読むことよりも剣を振るったり体を鍛えたりすることの方が好きな質だ。

思考回路も「我が主であるスイ様をお守りする!」その一点なのでアイと同じ日に仕えているが、アイよりも早くスイの重度で盲目的な信者になっている。


「石野、末野、行きますよ」

「ハっ! スイ様!」


「は~、うらやましい~イシノスエノコンビ!」

「私もずっと、お側に仕えたいわ……」


そんな言葉を背にスイは城への帰路へと就くのであった。



◇◇◇



「本当ですか!?」

「はい、今週中にはお帰りになる、とのことです」

「おスイ様、私も近衛本部より伺って参りました。お父上のご帰還に際し、近衛のいくつかの武士団がお迎えに上がるそうです」

「やっと、ですか……結局、何をしに、どこへ行っていたのかは誰も存じ上げないのですね」

「多分、龍帝様と限られた側近のみだけかと……」

「レイラ様もなにも存じ上げないような感じでしたが……」


結局父は入学式には間に合わなかった。

それはもうしょうがない。

もう過去のことだしスイはその分沢山母に甘えることにしていた。

入学式は龍帝やらがきて肩が凝っただけの式だった。

後でクラスメートとの会話の中で案外それほど親が出席してることはない、と知った。


「いやぁ~中等部の入学式までさ、親が来るとか恥ずかしいっしょ」

「初等部までだよねぇ~」

「ウチは初等部の時もこなかったよ」


そんなもんか、と思ったが、だが初等部にはだいたいの親が来てるらしい。

自分にとってはこれが初めての学園生活に入る儀式なのだからやっぱり来てほしかった、と少し拗ねた。

父が帰還することを聞いてそんな気持ちを思い出し、再開したらぶつけてやろう、そのくらいはいいだろう、と心に決めていた。



◇◇◇


広大な龍之宮の飛竜場には大勢の出迎えが来ていた。

レイラ・レイリ姉妹に側室達。

姉妹とタマキはパラソルの下で優雅にお茶をしてるし、他の者もそれぞれ自由に時間を潰していた。

その他、近衛武士に龍一のお側衆、侍従、次女たちが待ち構えていた。


「あ、あの護衛を連れてる飛竜じゃないですか、スイ様」


龍眼の三治がいち早く遠くの空を指差す。

スイも一瞬で龍眼になり、確認する。

ただの人種では飛竜すら確認できないであろう距離でスイは確かにその背に乗っている父親を発見する。


「良かったですね、おスイ様」


アイが思わずスイの手を握る。

スイはさて、最初になんて声をかけてやろう、と考えていた。


「……いっそのこと水カッターで撃ち落としてやろうかしら?」

「え? おスイ様?」

「……冗談です……」


”静かなる暴流”は段々近づいてくる中型飛竜をキッと睨みつけるのであった。

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