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異世界行ったら龍姫が俺の嫁!?  作者: じぐざぐ
第弐部 俺の封印
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第87話 飛竜の休息日

次の日の朝、俺が起きると二人はもう宿にはいなかった。

宿の竜人が用意してくれた朝食をたいらげ、食事の礼を言う。


「女将さん、ご馳走様です。おいしかったです」


テーブルの上を片付けながら女将らしき人物が答える。


「恐縮でございます。こんな田舎料理しかお出しすることができずお恥ずかしいでございます」

「いえいえ、昨日頂いたお刺身はとても美味しかったですよ」

「そうですね、この島の近海は良い漁場が豊富にございますので、新鮮な海産物が自慢なんでございますよ」


ほう、ここは島なのか?


「では、観光客なんかも沢山いらっしゃるんでしょうね?」

「とんでもない、ここに観光で訪れる人なんてございませんよ」

「はぁ、では宿の経営も大変ですね。島はけっこうな人が住んでるんですか?」

「ここは宿ではなく、私どもが商売してるわけではございませんよ? ここはお貴族様の御屋敷でございますよ」

「ははぁ~、なるほど……?」


そんな女将、いやお手伝いさん? との会話中に側に控えていた近衛がわざとらしい咳払いをする。


「ん! ん! 二の丸様。お食事がお済みでしたら、一度伯爵様にご挨拶をされてはいかがでしょうか? お食事が終わったらお呼びするように、と言付かっております」


会話を切り上げろ、余計な詮索はするな、とうことか。

仕方ない、ここは従っておこう。


「そうですか、伯爵は今どちらに?」

「飛竜場に行かれたと思います」


ということで俺は近衛に連れられて飛竜場に向かった。

伯爵はエプロンをつけ、長靴を履き、数人の作業着姿の竜人と昨日お世話になった飛竜の面倒をみていた。


「お早うございます、伯爵」

「お早うございます、二の丸様。お体の方は大丈夫ですか?」

「お気遣いありがとうございます。よく眠れたので疲れはとれました。ところで今は何を?」

「ええ、この子が昨日頑張ってくれたのでこうして体を洗ってあげてるんですよ」


と、でかいバケツに雑巾やらブラシやらが入っている。


「体が大きくて洗うのが大変です。うふふ。ほら、そっちの人、ブラシをかける時はもっと優しくね」


大変と言いながら伯爵は楽しそうだ。本当にこの飛竜が好きなのだろう。

そして手を止めて俺に俺に向き合う。


「二の丸様、本日は頑張った飛竜たちを休ませる日とします。二の丸様もどうぞご自由にお寛ぎ下さい。また明日早朝出発しますので十分にお休みくださいね」

「了解いいたしました。ところで先生……本田さんはどちらに?」


すでに話は済んだとばかりに飛竜をブラシでゴシゴシする伯爵の背中に問う。


「さぁ? 海岸の方に行くとおっしゃっていたかしら?」

「そうですか。では私も海へいってみようと思います」

「お気をつけて~」


周りを見ると一緒に来た飛竜騎兵(ドラゴンライダー)達もそれぞれ自分の乗竜を手入れしていた。

よくよく見ていると飛竜たちはなすがままで洗われていてずいぶん大人しい。

最初はよく、調教された竜だと思った。

何度かこういった光景は目にしたことがあるが嫌がって鳴きわめいたり暴れたりするヤツもいるし大人しく洗われるヤツだって時々首を振ったり唸り声をあげてたりするはずだ。

今の飛竜の状態は大人しすぎる。

もしかしたら飛竜たちは特別に調教が行き届いている、ということではなくもしかして疲れ切って大人しいのではないか、と道すがら思った。

ならばあの飛竜たちがそんなに疲れ切ってしまうほどの長距離を飛んだ、と言うことに他ならない。


「一体どこまで行くんだろうな」


ついて来てる近衛はもちろんそんな俺の独り言に答えることはない。


近衛の案内で飛竜場の脇にある林の中の小道を抜け、小さな集落を過ぎると砂利の広がる海岸にでた。

近くに石が積んだ堤防があり、桟橋には船が何艘か係留している。

あまり人影はないが

三艘ほど漁船の上で作業している竜人の姿が見える。


「さて、魔女先生はどこだ?」


海鳥が鳴き、少し緑がかった綺麗な海面の広がるのどかな景色を見渡す。

まぁ別に見つからなくてもいい。

なにか用事があったわけでもないし。

ただ海があると聞いて海岸に出たかっただけだしな。

だが彼女がいたら少し聞いてみたいことがあるのも確かだ。


「二の丸様、あそこです」


と俺がなんとなく探す感じでいると近衛が遠くの堤防を指さした。


「ん? んんん~?」


かなり遠くの堤防の上に黒い点のような物が見える。

彼はそれが彼女だと言う。

ほんとかよ。

俺は目を細めて確認する。

が、どう見てもただの黒い点にしか見えない。


「私には黒い点にしか見えませんが本当に彼女ですか?」

「ええ、間違いありません」


と近衛の顔を見たら龍眼になっていた。

オイオイ大げさだな。


「ふぅ~、わかりました。ずいぶん遠いですね。あそこをぐる~と回らなければいけませんね……」


と、俺が言いい終わらぬうちに背後でバサッと音がした。

見ると近衛が真体になり、翼を広げていた。


「私が御運びしましょうか? すぐですよ」

「いや、いいです。翼をしまって下さい……」

「ハッ」


真面目な人なんだろうけど……なんだか苦手だなぁ~。


「じゃあ、ぶらぶらあちらへ歩いていきますか……」


ここでぼんやり待っていればいずれ魔女先生もこちらに戻ってくるだろうと思うんだがなんだかこの人と二人でいるのは気疲れしてしまうので俺は遥か遠くに見える魔女先生に合流するためにとぼとぼと歩き出した。

……やれやれだよ。


波の音をBGMに散歩がてら歩くのは気持ちいいな。

……と、思っていたのは最初のうちだけだ。


遠いよ。


一人で歩いてたらこの貝殻なんだろう? とかあそこのデカイ骨はなんだ? なんて探索しつつ時々海に脚をさらしつつ楽しみながら行けるんだろうけど、なんだろう、この人と一緒にいると、もう魔女先生まで一直線にひたすら休まず歩き続けなければいいけないような気がして疲れる。精神が。

せめて顔見知りの近衛だったらなぁ~と思いつつ黙々と二人で海岸線を歩き、やっとの思いで長く伸びる堤防まできて、その上を歩く。

ようやく魔女先生が人型に見えてきた。

彼女は麦わら帽子に白いワンピースという装いで、まるで都会から田舎へ避暑に来た、夏休みを満喫してる少女の様にも見える。

実際には俺の数十倍は年を取っているだろう伝説の魔女様のところへやっとの思いでたどり着いた。

海鳥たちと戯れていたであろう魔女先生は俺を見てにっこりと笑った。


「おう、二の丸様、ようやく辿り着いたかの、かかか」


なぜか楽しそうに魔女先生が言う。

なんだよ、最初から俺たちのことに気づいていたのかよ。


「魔女先生、貴女は俺のお側衆じゃなかったですかね?」


俺はちょっと皮肉を込めて言う。


「なんじゃ、その魔女先生てのは……ま、よいか。今日は伯爵殿に休息日にすると言われたからの。二の丸様も別に予定はなかろ?」


しまった。心の中でのあだ名をそのまま口に出してしまった。

ま、いいか。本人も気にしてなさそうだし。


「まぁ……そうですね……知らない場所だし。伯爵には十分休むよう言われてます」

「ならばワシがそなたに引っ付いてる必要もないじゃろ?」

「けどなにか頼みごとができるかもしれないし……」

「それには、ホレ、後ろに近衛さんがおるじゃろ? 誰に言われんでもそなたに引っ付いてくだろうし、ここではワシより彼の方がなんでもしてくれるじゃろ」


魔女先生の言う通りだ。


「ふぅ、そうですね、仰る通りです。返す言葉もありません」

「かかか、良い子じゃ」

「……ところでこちらでなにを?」

「うん? 知りたいか?」

「え?」


そうにっこり笑うと魔女先生は肩に止まっていた白い海鳥の体を両手で優しく包むと海鳥はくたりと気を失った。

そしてその脚を掴み大きく振りかぶって思いっきり海に向かって放り投げて叫んだ。


「そぅ~れ、まだら丸! ごちそうじゃ!」


放り投げた先の海面が盛り上がり、派手な水しぶきをあげて小さめの海竜が飛び出しその海鳥を咥えてまた海に潜った。

その様を魔女先生は手を叩きながら喜んだ。


「かかかか、上手じゃ、上手じゃ、な、見たか、うまく捕ったの! あいつはの、まだら丸というんじゃ。顔の模様がちょっとまだらになっとるじゃろ? だからまだら丸じゃ、可愛いと思わんか? かかかか」

「はぁ……」

「こやつはなぁ~海の上を飛んでる鳥を捕らえるのがへったくそでのぉ~、ちょとな、今特訓しておったとこなんじゃ」

「なるほど……」


先ほど鳥と戯れているように見えたのは魔術だかエサだか知らんが海鳥をその、まだら丸のエサにするためにおびき寄せていただけだったのか。

ちょっとでも海鳥と戯れる少女的な微笑ましい絵に見えた俺の感傷を返して欲しい。


「ところで彼、いや彼女ですか? 魔女先生はこの海竜とはどのような関係なのでしょう?」

「うん、昔な、まだら丸の親にな、世話になってのう。いやいや大きくなったもんじゃ。ちなみに女の子じゃぞ、失礼のないようにの、かかかか」

「やっぱり、魔女先生はここがどこだか知っていますね」

「ん~? なんのことかのぉ~」

「とぼけないで下さい。海岸そばにいる海竜はそこに住む龍人や竜人が飼育していて人慣れしている種だと以前教わりました。まだら丸もここで飼われている海竜なのでしょう? その親やまだら丸を知っている魔女先生はここに以前来たことがある、ということですね」


魔女先生は俺の言うことが耳に入ってるのかどうか、海の中を進み時々顔をあげるまだら丸をじっと見ている。


「そして今回龍帝がわざわざ俺の側付きになったばかりの魔女先生を指名したことと関係が……てか俺の側付きになったのも、もしかして……龍帝、いや、元老院とかの差し金ですか!?」

「……ほう、とぼけた男かと思っとったが、まぁまぁ察しのいいとこもあるようじゃの? かかか、ま、当たらずとも遠からず、と言ったとこじゃな、かかか」

「からかわないで下さい」

「かかか、まぁ、そう急くな。いずれすぐわかることよ。お主はゆったりと構えておれば良い。今回だけはよろず我らに身を任せろ。悪いようにはせんよ、かかかかか」

「まぁ、ここまできたらまな板の鯉ですからね。俺は言われるままにするしかないのは確かですが理由くらいは知りたい、と思ってもバチは当たらんでしょう?」

「だからそう急くな”こい”とやらの例えは良くわからんが……ほれ、そろそろ昼飯じゃろ? 館に戻って腹を満たしょうぞ、かかかか」


煙に巻かれたような気もするがこれ以上しつこくしても得る物はなにもないだろう。

俺たちは昼飯を取るためにまたあの長い道のりを歩くのだった。

だが帰り道は行く時と違い、魔女先生と会話しながらだったので多少はマシなものになった。

本当は朝食後、すぐ次のステージに向かう予定だったのですが、少しその前に龍一と魔女先生を会話をさせようと思ったらまるまる一話使ってしまいました。

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