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異世界行ったら龍姫が俺の嫁!?  作者: じぐざぐ
第弐部 少年と魔女
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第79話 冒険者と少年

森に入る連中は何パターンかある。

植物を採取する者、獣を狩る者。

大体がこの二種類だ。

時に旅人が知らず、迷い込むことがある。

ケガをして動けなくなる者もたまにいる。

クリフはそういった人間を見つけると少し手助けしてやる。

お礼をくれる者もいればそうでない者もいる。

一番厄介なのはこちらのことを詮索してくる連中だ。

特に子供。

彼等はなんでも聞きたがるので道まで案内したらとっとと消えることにしている。


たまに人が人を襲う場面も見る。

ソアラがそういうのには関わるな、と言うので見ない振りもするが女性や子供が襲われるのを見るのは好きじゃない。

なのでそういう時はどうしたらいい? とソアラに尋ねると、相手を見て、襲ってる方を皆殺しにできるならやりなさい、と言われた。

ならば今度そうしよう、と心に決めたが残念ながらそんな場面はもうこなかった。


そのかわり今日、一月前から森をうろうろしていた連中がうっかり巨人に遭遇した場面に出くわした。

この連中は最初からマークしていた。

この連中が森で何をしてるかはさっぱりだったが悪さをしてるようでもなかった。

それが少年が彼等を助けた理由だ。


「俺はこのパーティーのリーダーでフジクロだ。助けてくれて感謝する」

「ワシは見ての通りドワーフじゃ。ガンテツと言う、よろしくな!」

「わ、私はリーネ、リーネよ、よろしくね! 少年!」


リーネが唐突に前にでて少年の両手を掴む。

フジクロがまたリーネの悪い癖がでたな、と思う。


「私はナルセ、ありがとう少年、あなたのおかげで助かりました」


弓を担いだナルセがリーネに負けじと少年の後ろに周り、肩に手をやる。

途端、少年が二人を振り切り、横っ飛びに構える。


「こらこら、女性達、いきなり近すぎだよ、少年、本当に助けてくれてありがとう。私は神父のグゥーリィーです。まずはあなたに感謝を、よろしければ君の名前を聞かせてくれないか?」

「……僕は、クリフ」

「クリフ君か、いやぁ、君に会えて良かったよ、本当に助かった」

「……そんなことより早くここを離れた方がいいよ。デカイのがすぐ目を覚ます」

「そ、そうですね、では皆さん、移動しましょうか?」


一行は倒れてる巨人から離れるために移動する。


「あのデカイのは脅しただけだ、あなた達は逃げれば良かっただけだったのに攻撃態勢にはいったから」

「そうなのかい? 突然現れて我々もビックリしてしまってねぇ~」


少年は冒険者たちを先導する。

神父がしきりにクリフに話しかける。


「デカイのは縄張りを荒らされるのを嫌がってただけだよ」

「そうなのかい? 君はこの森に詳しいんだねぇ」


少年は最初こそ警戒してたが慣れてくると徐々に口が軽くなってきた。

しかし、自身の身辺について尋ねると途端に口を閉ざした。

そうしているうちに森から出れる主線道へと着く。


「はい、ここまでくればあとは帰れるでしょ? 僕はもう行くよ」

「ああ、ありがとう、本当に助かったよ、ホラ、これはお礼だよ」

「ありがとう、なにこれ?」

「これは銀貨だ。今の君には必要ないかもだが、受け取って欲しい」

「うん、ありがとう」

「はい、コレもあげるわ、約束だものね」


リーネが短剣を差し出す。

行きつけの道具屋で見つけた、なかなかの業物だがこの少年に渡すのは惜しくない。

あとで神父に請求すればいいし。


「コレ、すごいね! 本当に僕にくれるの?」

「ええ、でも大事に使ってね」

「うん! ありがとう!」


(う、守りたい、この笑顔)


少年はキラキラしたいい笑顔をリーネに見せてくれた。

リーネはそれだけで舞い上がりそうになる。

野生児ショタ最高!

とリーネがクネクネしてるとこにガンテツが干し肉を差し出す。


「ホレ、これはな、ワシが時間をかけて丹念に煙で炙った燻製じゃ。うまいぞ、ワシらはまたこの森に来るでの。その時に手伝いしてくれたらまたやろう」

「本当に! うわっ、これすごい、いい匂いだね、うまそう! ありがとう じゃあね! 気をつけて帰って!」


言うが早いかクリフは森の中へ消えた。

冒険者たちはアイコンタトで会話する。


(追う?)

(いや、ついに見つけた手がかりだ、慎重にいこう)

(でも)

(アレはなかなかの手練れだ。見た目に惑わされるな)


「さ、皆さん、いったん村まで戻りましょう。今日はとても良い出会いがありました。神に感謝しましょう」


一行は森を後にし、拠点にしているコアド村まで戻った。

コアド村はずれの空き家を借りて、そこに寝泊まりしながらソアラの森の探索をしている。

時には一週間、森に入りっぱなしの時もある。

そんな時は小屋に帰ってきても皆、疲れ切って無口になるが今晩は違った。


「フジクロさんが彼のストーキングを止めたのは正解でしたね」


神父も今日は声が弾んでいる。


「ええ、野生動物は一度警戒すると懐くのに時間がかかりますからね」

「あの小僧、ワシの干し肉を受け取った時はヨダレを垂らしそうじゃったぞい」

「それよりも見た? 私がナイフを渡した時、目がキラキラしてたわ! あの子は私がもらうわよ!」

「何言ってるのよリーネ、あんな純粋な子、あんたなんかに任せたらどうなってしまうか、彼は私がキチンと指導します」

「はぁ? あんたこそ私のクリフきゅんに手出さないでよね!」

「まぁまぁ、皆さん、やっと見つけた森の住人です。なんとしても魔女の手がかりとして大事に接触してください。正念場ですよ?」


彼等が”森の魔女”を求めてすでに三年の月日が流れている。

何度も今度こそは、と勢い込んで空振りに終わっている。

焦ってはいけない。

慎重に物事を進めなくてなならないのだ。


「とにかく彼からの信用を得ること、これを当面の目標としましょう」


神父の言葉に皆、力強くうなずく。

うまくいけば長かったこの任務が終了し、我が家に帰れるかもしれないのだ。

ならばあと数か月の我慢くらい、なんともない。



◇◇◇


「今日のスープ、おいしいわ」

「へへ、そうだろ? 燻製肉を使ってるんだよ!」

「それにその腰に差してるナイフ、見たことないわね」

「これもだけど、森で困ってる大人がいてさ、巨人から助けてあげたら、くれたんだよ」

「ちょっと見せて」


ソアラはクリフから短刀を受け取り、鞘から抜き、刀身を確認する。

鞘も柄もとても立派な装飾がほどこされているし、刀身を見ても安物ではないことが一目でわかる。

森で道に迷って、巨人から助けられたくらいで他人に差し出すような代物ではない。


「もし、今度その大人たちに会ったらこのナイフは返してきなさい」

「え~、でも……せっかく……」

「私の言うことが聞けないならここから出て行きなさい」

「……わかったよ、ソアラの言う通りにするよ」

「いい子ね。これはあなたが手にするには少し高価すぎる品よ」



◇◇◇


「そんな訳でさ、これは返すよ。ごめんね、せっかく、くれたのに」


数日後、クリフはまた森で再開したグループの女性に短刀を差し出す。

女性はすぐには受け取らず、メンバーの顔をキョロキョロ見ていたがじき、クリフから短刀を受け取った。


「い、いい~のよぅ~クリフきゅん、そ、それにしても立派なお師匠様ねぇ~、尊敬しちゃうわ~」

「そうかい? 僕の師匠はね、すごいんだ! なんでもできるし、なんでも知ってるからね!」


まるで自分が褒められたかのようにクリフは誇らしげに、嬉しそうに師匠の事を語る。


「ワシの燻製肉はどうじゃった?」

「美味しかったよ! 師匠も喜んでたよ!」

「そうか、それは良かった」


『絶対に私のことは話ちゃだめ。もし、どうしてもの時は”師匠”と説明しなさい”魔女”・”ソアラ”のワードは禁止だよ?』


これは昔からソアラに口酸っぱく言われていることだ。

だから仲良くなったこのグループにも”魔女”・”ソアラ”の言葉は使っていない。

クリフにとってソアラの言葉は絶対守るべきものだ。

今のところこの大人たちとはうまく付き合えてる、クリフはそう思ってる。


その後クリフは何度か森の中でこのグループと出会った。

すでに彼らが初めて森に入ってから三ヶ月は経過したと思う。

この連中が何のためにほぼ毎日森をうろついてるのかは知らないが森の事を教えてあげると大層喜んだ。

人に喜ばれるのは気持ちがいい。

ソアラもこのように喜んでくれるといいが、クリフはソアラの笑顔など一度も見たことがない。


「クリフはどうしたいの?」


だんだん一行に懐いてきたころ、リーネが聞いた。


「僕は……師匠にすごい! て言わせたいな、まだ一度も褒められたことがないんだ」


クリフはなかなかただ者ではない、というのが神父一行の見解であった。

なにより体力、一番体力に自信のある、フジクロよりも疲れ知らずだ。

その素早さ、一度休憩中にリーネの荷物を毛長ザルに盗まれた。

盗賊職のリーネは速さは得意とするところだ。

すぐに追いかけたが毛長ザルにまんまと逃げられた。

しかし、クリフがあっさり荷物を取り返してくれた。

初日、もしリーネがストーキングしててもクリフにあっさり撒かれたであろうことは明白だった。


そんなパーティーメンバーも一目置くクリフだが彼の師匠はまだまだ彼を認める気はないらしい。

そろそろ頃合いかな、と一同は見計らう。


「ふうむ、じゃぁクリフ少年は森を出ることから始めることだね」

「どうして? 神父さん」

「君は物心ついてから今まで師匠の元にいたのだろう? それじゃあいつまでたっても師匠にスゴイ! とは言わせられないよ?」

「そうだぞ、小僧。人はな、旅に出て大きくなるもんだ。ワシも師匠がいてな、一度師匠の元を離れて外の世界を色々見たもんだ」

「外の……世界……」

「そうだ、クリフ、この森じゃ俺たちもお前にはかなわねぇ、けどな、世界には大きな火を噴く山、どこまでも大きな海、果ての見えない川、とても、と~ても広いんだ」

「ね、ね、クリフきゅんさえよければ私たちと一緒に行こうよ! きっと君の師匠もビックリするよ!」

「ふふふ、怖いかしら? 私達と行くのが」


クリフは考える。

自分が知っていることはソアラに教えてもらったことばかりだ。

確かにそれじゃあソアラをビックリさせることはできないだろう。

だがもし、もし彼らと共に外の世界でソアラも知らないことを自分が身に着けて帰ってきたら?

ソアラは自分を認めてくれるんじゃないのか?


  クリフ、すごいね


待ち望んだ、ずっと欲しかったあの言葉が聞けるんじゃないのか?

そう思った瞬間、クリフは体の芯が熱くなり、胸がドキドキしてきた。


「僕、そろそろ帰るよ、夕飯の仕込みをしなきゃ、じゃあね、みんな」

「おう、またな!」

「クリフ少年、また会いましょう」

「小僧、今度燻製の作り方を教えてやるぞ」

「クリフきゅ~ん! またね~」

「少年! またね!」


クリフはまるでシノビのように瞬く間に一行の前から消えた。

残された彼等は薄く笑みを浮かべる。

じわりじわりと彼等の甘い言葉がクリフの身の内に沁み込んでいく手ごたえを感じて。


クリフは帰ってからも自らの考えに熱中していた。

夕飯の支度も、食事中も、後かたずけも、もうずっとその考えの虜になっていた。


「今日は神父さんたちの話をしないんだね」

「ん~そうだっけ? 今日はもうなんだか疲れちゃった」


ソアラが何か感づいただろうか、とクリフは焦る。

気づかれてはいけない。

自分の胸の内を。


大好きなソアラ、ぶっきらぼうだけどやさしいソアラ。


ソアラのために僕はもっと強くなる。

もっと色んなことを知る。


少年はまだ見ぬ世界への冒険を夢見て布団の中で一人、興奮する。

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