第68話 南国リゾート
南国からこんにちわ、龍一です。
さて、ここはリゾート感、溢れる雷龍神殿です。
レンガ造りの、一面真っ白な壁が、南国気分を味わわせてくれて、ひろく開いた入り口には、すぐ外にプールや、ヤシの木っぽい植物も見えて、気分も爆上がりですね。
外では誰かが盛り上がっているのでしょうか、ドラムの音と歌声と人々の歓声が時々、聞こえてきます。
俺は今、ほぼ半裸で籐の長椅子っぽいものに腰掛けて、隣で下着姿のヒカリが俺の口になんか、果物をあ~ん、してくれてます。
その横でやっぱし、半裸の女性が大きな、何かの葉っぱでできたウチワで仰いでくれてます。
部屋の片隅ではライデンを抱いたミライが軽蔑の眼差しで俺たちを見ています……。
……て、どこのエジプトのファラオだよ!
「ヒカリ、ちょっと、待て、ちょ、ちょ~と待て!」
正気に戻り、俺は立ち上がった。
この神殿で目が覚めてからというもの、ずっと、飲んで食ってヒカリとイチャイチャして、プールに入って、イチャイチャして、外で星を見ながら酒飲んでイチャイチャして、昼過ぎに起きたら、またイチャついて、みたいな生活を、数日してたんじゃないか?
いや、俺の自堕落も、たしかに悪い、それは認めよう。
この厚く、けだるい南国の空気といい、なんだ? 神様マジックか?
浦島さんは三日過ごして数百年だろ?
いかん、いか~~~ん!!
と、俺はそのまま走って、プールに飛び込んだ。
頭を冷やして、酔いも覚ます。
これはいいテストケースだ。
龍帝国では待遇はいいが、いつも緊張して生活してたのだ、ということがここに来て、わかった。
ここは本当になにもしなくても、いい。
だらだら朝から酒飲んで女とやりまくってても、誰もなにも言わないし、非難もされない。
むしろ、そんなん当たりまえな雰囲気が、ここには、ある。
南国特有の、茶褐色の半裸の男女たちは皆、陽気ですぐ歌ったり、踊ったり、そこらで愛を囁くし、仕事も半日くらいしかしない。
だってそれで生活に困らないんだもん。
食っていけるんだもん。
神殿の外に出ると、皆、粗末な小屋としか言いようがない家に暮らしてる。
たまには立派な家もあるが別にそんなの必要ない。
だってそれで充分なんだもん。
やばいぞ、この空気に飲まれるな、
「ヒカリ! 今日はおでかけしよう、皆で!」
「どうしちゃったのさ、龍一くぅ~ん。飲みたりないんじゃなぁ~い?」
とヒカリはトロ~ンとした目をしながら、ここに来てから飲まされてる、カクテルみたいに甘くて、だが強い酒を俺に差し出す。
「いや、今はいい。今日はヒカリとミライとライデンで、この国を案内してくれ」
最初、言ってる意味がわからない、と、きょとんとした顔をしてたヒカリが肩をすくめ、答える。
「オーケーわかったよ、今日は家族でお出かけしよう」
俺は部屋に戻り、ミライに告げる。
「ミライ、今日はみんなでお出かけだ!」
ミライも最初はきょとんとした顔をしてた。
「え? 別に……私は、いいって言うか、二人でいけばいいじゃん、ていうか……まぁ、でも、どうしても、て言うなら、まぁ、行ってもいいけど……」
こちらに目を合わせず、なんかモジモジしながら、イヤイヤながらも、それでも満更でもなさそうに、OKがでた。
良かった。
まだ、家庭崩壊は起こってないらしい。
トール大陸は細長い、逆三角形のような形をしていて、赤道より少し上に位置しているらしい。
雷龍神殿はこの大陸に三か所あるらしく、今あるのはその逆三角形の左の端の方の地域だ。
この大陸は、人間と数種の獣人が主な人種であるらしい。
獣人は前にシャルルの山荘で出会った、鳥頭が多く、かなりカラフルだ。
オウムっぽいのとか、インコっぽいのとか、たまにフクロウみたいのもいるな。
一応、獣人の部類だが、鳥頭にムキムキの茶褐色の身体で、ぶっちゃけ、被り物してるようにしか見えなくて、いつも笑いそうになる。
あとは少数だが竜人もいて、こちらもあまり龍帝国では見ない、カラフルなのが多い。
やっぱり南国だから、だろうか?
この神殿で生活している人々はほぼ半裸だ。
男性はパンツ一丁だったり半ズボン一丁だったり。
女性は胸にサラシのようなものを巻き、下はふんどし的な腰掛けを付けている。
人、亜人問わず、そのようなスタイルで生活してる。
ま、暑いからな。
そして陽気だ。
集落を歩いても、道端で昼から酒盛りして、なにか楽器をひいてたり、踊ってたりするし、イチャついてるカップルもあちらこちらにいる。
「ラテン系だな……」
「ラテンケー、てなに? 父様?」
「いや、別になんでもない、で? ヒカリ、どこ連れていってくれるんだ?」
「う~ん、そうだね~、この大陸は、ほぼ、どこ行ってもこんな感じだよ。まぁ、人神祀っているとこ行けば、また少し、雰囲気が違うんだけど、そんなとこ行きたくないし……。そうだ海でも行こうか? 青い海……白い砂浜……まさに南国リゾート気分を味わえるよ!」
「海! 母様、私、海行ってみたい!」
「オーケー、うちの可愛い娘ちゃんもこう言ってるし、皆で行こうか? ほら、ミライ、ライデンをちょうだい」
ヒカリはミライからライデンを受け取り、信者の人に牛車を手配させてる。
おお~、今日はちゃんと母親をやるらしい。
「父様、私、海、初めて!!」
うむ、可愛い娘よ、俺はこっちに来てから二回目だ。
実を言うと元の世界では遊びで行ったことはない。
そんな金も余裕もない、哀れな人生だったのだ。
「今日は沢山遊ぼうな」
「うん!」
ゴトゴトとのんびり牛車に揺られながら、俺たちは海を目指す。
一時間ほど俺たちは、牛車の上でふざけたり、風に当たりながら過ごしてると海についた。
ヒカリが胸を張る通り、美しい白い砂浜に、ちょっと緑がかった青い海。
着いた途端、ミライが、うぁぁぁ、きれぇぇぇ~!!!、と海に向かって猛ダッシュする。
俺は、ははは、転ぶなよ、と追いかける。
振り返ると、ヒカリがライデンを抱きながら信者の人たちに指示をだし、テキパキとビーチパラソル的な物や、ベンチ的な物が構築されていく。
ミライはもう服を全部、脱ぎ捨てて下着で泳いでいた。
しょうがねぇなぁと服を拾い、ミライがはしゃいでるのを波打ち際で眺めていると、水を掛けられた。
「父様も海に入ろうよ!」
「やったな!」
とミライを追いかける。
海は透き通っていて、底まで見えて本当にきれいだ。
色鮮やかな魚が泳ぎ、小さなカニみたいのが歩いている。
「父様、これ何?」
海面から顔をだすと、ミライがなにか貝殻を持ってきた
「なんだろうな? 食えるといいな」
「もう、食い意地張ってる!」
またバシャバシャと波をかけられ、よけようとしたら浜辺ですっかりリゾート気分の奥様が子を抱き、手を振っているのが見えた。
あっ、と言う間に夕暮れになり、海に沈む夕日をみんなで見てから、俺たちは神殿へと帰った。
俺はもう、ずっとこのまま、ここにいてもいいかな、という気分になっていた。




