第66話 龍乃二条ランゼ
「ハっ! 二の丸様! あんた、ちゃんと食べてるのかよ! ひょろっちぃ~な!!」
ヤンキーだ、ヤンキーがおる……。
真っ赤な髪をショートにして真っ赤なチャイナドレスのミニを着て、真っ赤なガーターを付けた、そのヤンキーは何やらバット状の物を持ってずかずか大股で俺のとこに来ると襟元を掴まれ、グイっと引き寄せられた。
顔が近い!
殴られるかと目を瞑った瞬間、強引にキスをされた。
プハっと離して、目をジっと見つめながら言われた。
「ふふ、私の夫になるんだ、もっといい男になるんだぜ……」
……やだ、この人、漢らしい……。
◇◇◇
今回のご令嬢巡りは龍乃二条家だ。
彼女は、龍乃二条ランゼさん。29歳 軍の大佐
龍乃二条家はバリバリの軍人一家で……その……ぶっちゃけ、ガチムチだらけだ。
最初に行った、南区の館も鎧が飾ってあったり、刀やら槍やらがそこら中に飾ってあった。
応接間には勲章やら表彰状やらが所せましと飾ってあって、まぁ、無骨な感じだ。
武家と言えば近衛出身のカナエの龍之下条家だが、あちらはまだ、お上品な雰囲気があったが、こちらはもう、ほんと、無骨! 一筋な雰囲気だな。
いつもは砕けた雰囲気のオカッパ小隊は、カチンコチンに緊張してるし、いるかいないかわからない俺付きの近衛たちは、我々は外にいますので、と居心地が悪そうに館の外にいってしまった。
「二の丸様は一体何回襲われてんだよ! え!? 私がいたら、そんな連中、瞬殺よ、瞬殺!!」
その日、館での歓待は一体いくつの酒樽が開いたの? という勢いで消費された。
そんな宴の最中、彼女はいつの間にか俺の膝の上にいた。
「二の丸様はさ、ほら、ここの筋肉だ足りねぇ~んだよ、え? これで戦えるの? だめじゃん!」
なんて言いながら、俺の身体のアチコチの筋肉を品評していく。
この歓待という名の酒宴はすさまじく、オカッパたちは自分達より上位の将官がいたのだろう、もう無理です飲めません! 俺の酒が飲めねぇのか!? いえ飲みます! と一回吐いてから樽飲みしてた。
クロダはなにか唄を歌わされてて、サムライはふんどし一丁で踊ってた。
その合間、合間に飲まされる……地獄だ。
現代日本なら間違いなくアルハラで訴えられる行為だ。
そんな地獄絵図を、ヤンキーを膝の上に乗せて味わう、俺の気持ちを考えて欲しい。
それはもう、帰りたいの一言だ。
ヤンキーは美女だ。それは認めよう。
めちゃ、セクシーでグラマーだ、それも認めよう。
ソイツが甘えたり、脅したり、笑ったり、としてくる。
時に下ネタと説教を交えて、だ。
酔っぱらったオッサンよりタチが悪い。
いいとこ酔っぱらって気分が良くなったのだろうか、ランゼがスクっと立ち上がると俺をお姫さま抱っこした。
「気分も良くなったし、風呂行くか! お前ら、ほどほどにな!!」
俺は誰か、助けてくれないか見渡す。
オカッパ小隊はそれどころではなかったし、入り口で正座してた今日の俺付きの侍女サヤは俺と目を合わすとネコ耳をピクっとさせニッコリ微笑むだけだった。
そのまま俺は風呂場まで連れてかれ、裸にむかれ浴槽に放り込まれた。
「あ~~れ~~~~」
「ふっ、可愛いな、龍一……」
そのまま、お風呂場で、私、犯されちゃったの……。
ランゼちゃんたら、強引なんだから……
お風呂からあがったら、もう裸のまま、お姫様抱っこされて、私ったら、恥ずかしい、て言ってるのに、ランゼちゃんに濡れたまま寝室まで運ばれて、沢山、可愛がってもらっちゃった、てへ。
……てへ、じゃねえよ……いいとこなしだよ。
◇◇◇
龍帝国軍の主力部隊は、龍之中宮市そばにある、龍之中宮基地を拠点としている。
二条家も多くはそこに努めているが、龍乃二条家の領地ではないのでそちらには行かず、今回はもちろん、龍乃二条家の領地へと赴いた。
龍乃二条家領地は、帝国西に位置する、西生龍市を中心都市とする、国境に隣する領地で、常に緊張感のある場所だ。
と言っても建国以来、攻め込まれたのは二回しかない。
もちろん二回とも撃退してるし、ここ三百年ほど、他国からの襲撃もない。
しかし、ここは常時、臨戦態勢で、主力軍並みの装備や精鋭が揃っていると言う。
帝国西部は山脈が南北に連なっていて、そこにいくつか、西に向かって他国へ延びる街道が数本通っている。
西生龍市は、その最も街道が整備されてて利用者も多い、北部にある街道沿いに作られた城塞都市だ。
酪農が盛んで龍都と違い、建物以外はあまり、和風ではない。
食べ物も一言で言えば、肉、チーズ、パン、ハムにベーコンといった感じだ。
街中も龍人、他の人種、半々と言ったところだろうか?
この国ではかなり珍しい配分だ。
都市の近くに国境警備軍の駐屯地があり、こちらもなかなか見応えがあった。
様々な竜種がいて凄かったが、いつもなら頼んでもいないのに早口で竜の解説を始める竜オタク・オカッパが今回はずっと緊張した顔で直立不動の姿勢で動かなかった。
そんな辺境視察も最終日を迎え、ええ、もちろん当たり前のように毎晩、馬乗りされて、いい様に犯されましたけどなにか。
いやいや、それはともかく、最終日の夕方に城壁に案内された。
「ほら、龍、あれがアガレスタ山脈で、夕日がきれいだろ?」
ランゼはもう俺を二の丸様とも龍一とも呼ばず、”龍”と呼んでる……一を訳さなくてもいいと思うんだ、俺。
俺とランゼのお付きがゾロゾロついてきての夕日の見学ツアーだった。
確かにここから眺める夕日は綺麗だ。
山脈が赤く染まり、壮大な風景だし、振り向き、反対側の市街を見ると、皆オレンジ色になり、影も長く、絵になる景色だ。
「きれいだろ? 龍。惚れ惚れするような眺めだ。私はな、龍、帝国が、この国が好きだ。この国を守るため、軍に身を捧げた。この国の平和のためならなんでもする覚悟だ。異世界人の嫁になれ、というならなるし、その子を産め、と言われれば従う。だから龍、私のことはいつでも、好きに抱いてくれ」
いや、お前に会ってから俺が抱かれてるんですけど? しかも強引にな!
「姉さん!!」
突然ランゼの部下であろう女性が号泣しながら叫んだ。
学ラン・スカートの、例の軍服だが龍都と違い、ここの駐屯地の軍服は皆ダークグリーンの、いかにもな軍服色だ。
「二の丸様! 姉さんはぶっきらぼうに見えますがこれでも龍乙女なんです!!」
号泣のガチムチ兵が続ける。
「そうです二の丸様! 姉御は二の丸様とお会いになる一ヵ月も前から、もうそわそわしちゃって、大変だったんス!!」
他の女性兵も号泣しながら叫ぶ。
「自分は経験がないからって、大佐はわざわざ基地一番のヤリマンビッチに話を聞きにいってですね、その、二の丸様をどうやったら喜ばせることができるかと! メチャクチャ研究してたんですぅ!」
「ははは、やめろよ、お前ら」
チャイナ服大佐が真っ赤になってござる。
「こう見えても、白龍に乗った王子様にお姫様抱っこされることに憧れる、龍乙女なんですよ!!」
「ちゃんと二の丸様から愛を囁いてやって下さい!!」
「乱暴に抱きたいんじゃない! 乱暴に抱かれたいんだよ! 二の丸様!!」
「や、やめろってぇ、貴様らぁ~」
チャイナ服大佐殿はなぜかテレっテレである。
「二の丸様とぉ~ランゼ大佐のぉ~、ご婚姻を祝ってぇ~~!! 万歳!!!」
「応!!!」
その場の全員が返事をした。
「二の丸様~万歳!!」
「万歳!!」
「ランゼ大佐~、万歳!!」
「万歳!!」
「龍帝国~、万歳!!」
「万歳!!」
チャイナ服大佐に会ってから、何度目だろうか? の万歳三唱が行われた。
オカッパ達を見ると必死の形相で万歳してる。
サナ、サン、サヤ、青野兄弟の侍女、侍従を見ると無表情で万歳してる。
チャイナ服大佐は今回は顔を両手で覆い、顔を赤くしている。
城壁の上で行われた万歳は山に響き、こだまし、街中を見ると通りにも人が溢れ、こちらに向かって万歳してた。
遠くで夕刻を知らせる鐘がゴ~~ン、ゴ~~~ン、と鳴っていた。
なにこれ?
良くはわからんが、今晩は俺がチャイナ服大佐に愛を囁き、積極的に抱かせていただければならない、と言うことだけはわかった。




