第63話 牧歌的な一日
「むっふぅ~~ん、りゅうりゅう~、そんな顔しなくても、ほら、ほらほら~おっぱい、好きなんでしょ? 私も、気持ちよかったよ」
こいつ……いや、好きですけど。
ああ、やわらかいですね、でも、お前……りゅうりゅうて、なんだよ……おふ、おふぅ……。
まぁ、そんなカンジでレイラ大好きタマキさんにいいようにヤラれた一晩であったわけよ。
お前ほんとに初めてなの?
朝その大きな胸をぷるんぷるんさせて、大きな伸びを一つして、タマキは笑いながら言った。
「私は自分より大きな竜も格闘しながら世話してきたんだよ。それに比べりゃ、りゅうりゅうなんて可愛いもんよ! あ~気持ち良かった!」
そして、たぷんっと俺におっぱいを押し付け、キスし
「後宮入ったら沢山しようね! りゅうりゅう!」
と笑顔で言われた。そして
「あ~早くレイラ様と御子様にお会いしたなぁ~」
と続けた。
~納得がいかん!
◇◇◇
次の日、俺はタマキの操る飛竜の上にいた。
七條家の領地はとにかく広大だ。
南の大平野と呼ばれる地域のあちこちに種々雑多な竜が飼われているのである。
タマキは短い間に全部は見て回れないから、と俺を自分の愛用の飛竜に乗せて飛んでくれてるわけだ。
「後ろから揉んでもいいんだよ」
「しねぇよ、操縦間違って落とされたらたまったもんじゃねぇ」
「きししし」
そんな軽口をたたきながらもタマキの操竜は巧みだ。
ちゃんと俺が楽になるように、飛んでくれるし、加えて見所の場所になるとその絶景ポジションにポイントするのだ。
風に逆らわず、時に高く飛び、時に低く飛ぶ。
「あ、こっちじゃなかった」
とルートを間違えて方向転換するときも俺に気を使って大回りするでもなく、クルっと飛竜を回すんだが全然俺の体に負荷がかからない。
正直、うまい! と俺でさえ思う。
俺もそれなりに、自分では扱えないが、色々飛竜に乗せてもらったけど、躁竜に関してはお家元のカナンよりも上手じゃないのか?
飛竜場に着いてから俺があまりにもタマキの躁竜をべた褒めするもんだから、オカッパのプライドを刺激したらしく、なぜか疾駆竜でタマキとオカッパが勝負することになった。
方法は一kmほどのコースを一周するというものだ。
「どっちが勝つと思う?」
「まぁ、ウチの中尉殿でござろう」
「うん、中尉はあれでなかなかだからね、ただの竜オタクじゃないよ」
「じゃあ、サムライ、クロダ、賭ける? お金以外な。俺はタマキに酒一升瓶」
「のったでござる! 拙者はもちろん中尉どのでござる」
「僕も中尉かな」
「私、タマキ様」
いつの間にかサキも加わった。これで2対2だ。
「タマキ様、飛行服をお着替え下さい」
スラっとした乗竜服に着替えたオカッパがタマキに言う。
さすが元竜騎兵、こういう格好はサマになってる。
「ん~私はこれでいいや、めんどくさいし」
と、ツナギになってるダブダブした飛行服の上半身だけ脱ぎ、腰にまとめる。
「……負けても、それが重くて邪魔だった、ていい訳はナシでお願いします」
「大丈夫、大丈夫、それじゃ、あの中から好きな竜を選んでよ」
と、タマキは数頭並んでいる竜を指差し、オカッパを連れて行く。
俺達はゴール付近に陣取り、勝負を見守る。
スタート付近で赤い旗が振られ、両者、スタートを切る。
スタートダッシュから、もう違う。
タマキの竜の方が姿勢が低く、コーナリングもギリギリを攻め、走行姿勢が美しい。
ゴールは三メートルほどの差をつけてブッチギリでタマキの圧勝だった。
「ま、負けました」
オカッパが素直に敗北宣言をする。
「やっぱり戦う人の癖なんだろうね、竜のさ、頭の位置が高いんだよね。アレ、竜に索敵させる人、絶対やるよね。私は純粋にコースを走らせるだけの躁竜だから」
「いや、すごかったです。自分はまだまだだと思いました……」
「ははは、そう、落ち込まないで、私も走り専門にやってる人には全然かなわないから。きっと闘竜なんかだったら適わないと思うよ?」
「! もちろんです! 自分は元竜騎兵です! 闘竜には自身があります!」
ムフ~~と、オカッパの鼻息が荒くなる。
◇◇◇
その晩は屋外でバーバキューだった。
龍ノ七条家は領地の中心都市・龍之南市に立派な武家屋敷を構えている。
そこでは賓客を招いたり、情報収集や商品取引の場だったりする龍乃七条家の拠点だが他にも数か所の街に木造の、所謂ログハウスみたいな家屋を複数、牧場そばに所持してる。
北海道の本店は札幌だが富良野や中標津や名寄に支店がある、という例えでわかっていただきたい。
本日は竜清水という街の小高い丘にある、ログハウスの庭でワイワイやってるわけだ。
「いやぁ~こういうのもいいね」
パチパチと赤く燃える炭火に時々じゅー、じゅーと肉の油が落ち、その香りがなんとも食欲を刺激される。
「お前ら、賭け忘れんなよ」
「くっ、わかってるでござる」
「あ~あ、中尉にはガッカリだよ」
「そうでござる。龍都防衛隊に戻って鍛えなおすでござる」
「うるさい! 人を勝手に賭けの対象にしおってからに!」
「私の分も忘れずに」
「あははは、皆、食べてる~?」
ガヤガヤしてるところにタマキが肉の追加を持ってきた。
流石にそうそう貴重な竜肉は提供してくれないが、今日は豚だの牛だの鳥だの、とにかくとんでもない量が並んでる。
「こうして外で肉焼いて食べてると魔大国思い出すな」
サキに話しかける。
「私も思い出してた」
帰ったらクロの神社作ってやらんとな……。
そんなしんみりした思いにふけってたら、クロダとサムライが、なんか酔って、軍歌的なものを大声で歌いだした。
外で飲み食いしてて、開放的になったのだろうか?
あいつら一応、今は俺のご令嬢訪問の警護に来てる自覚はあるんだろうか?
やれやれ……困ったやつらだ。
その日はとにかく、たらふく飲み食いした。




