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異世界行ったら龍姫が俺の嫁!?  作者: じぐざぐ
第壱部 俺とメンヘラ
58/156

第58話 クロ

11/9 少し書き足しました。


(あるじ)! 起きて!!」


サキの叫び声で一瞬で覚醒する。

道中はなにがあるか、わからないから寝ていても緊張のしっぱなしだった。

それが今もある、が、体がしびれて動けない。


これは!?


これは嗅いだことのある、あの甘い匂いだ。


”龍香”


北区のあの、血液事業所、地下の……


ヴァンパイア・シャルル・プルーンの……


だめだ、思考が……




◇◇◇



部屋の備え付けのイスに腰掛け、シャルル・プルーンはベッドの上で麻痺し悶える二人を見ていた。


「やれやれ、龍一よ、何度騙されると気が済むんじゃ? よく知らない人は信用してはならぬぞ? くくく」


呆れたように笑うシャルルの、その隣でナタリーが金貨を数えていた。


「やだなぁ~、ひどいよプルーン。私をそんな悪人みたいに言わないで欲しいな」

「くくく、何を言う、そちは極悪人じゃろうが?」

「まったく、とんだ言いがかりだよ、私は頼まれた君の借りを返しただけだ。報酬ももらったし、とっとと去るよ、私はこの後のことは知らない」

「付き合いが悪いのぅ~」


金貨をジャラジャラ袋に詰めたナタリーは、立ち去る支度を整えた。


「この子達とは共に旅をした仲だしね。ひどい目に合う様を見たい、とは思わないよ」

「ひどいのはコッチじゃ、残りの龍香も全部使い切りおって。あれが……」

「私は契約は果たした。もう行くよ」


シャルルの言葉の終わらないうちにナタリーは部屋から出て行った。


「ふん、まぁ良いか。後はこやつらを運ぶだけじゃな」


と、そのときだ。


突然、部屋の床の中央から黒い光が溢れだした。


「!! まさか!!??」


その闇より深い、黒い光の中から、闇そのもの、としか言いようのない女性が一人現れた。


「まったく……あのままこちらに構わなければ見逃してあげたのに……」

「こくりゅ……!!」


シャルルはその姿を見た瞬間、撤退を決意し、窓に向かう。

しかし、その体は窓にたどり着く前に黒い霧のようなものに包まれ、動きを止めた。

倒れたその体の肉は腐り、溶け落ち、骨になっていく。


(だめだ、再生……できない……龍一の……血を……)


どんどん溶けた体はやがて、骨だけになり、その骨も粉と化し、やがて全て、なくなった。


黒い女性は消滅したシャルルに見向きもせず、ベッドの上で、裸でよだれをたらして瞳孔が開き、満足に動けなくなっている龍一とサキに近づく。

そしてサキと龍一にそれぞれ口づけをする。


◇◇◇



「はぁはぁはぁはぁ……」

「う……ん……」


黒い女性に口付けされた途端、体の痺れも抜け、思考もクリアーになり、気分も楽になった。

サキも頭を抑えながら上体を起こしている。

俺は女性に問いかける。


「お前、黒龍か?」


俺はその大人びた、神秘的に美しい黒い女性に聞く。

どことなく、クロの面影があり、クロが成人したらこんな感じだろうと思われる容姿だ。


「そうだよ、お兄ちゃん」

「その姿は?」

「私ね、神様だけど、信仰してくれる人がいないでしょ? だから普段は子供の姿なの。この姿は、炎龍のおかげね」

「炎龍さまの?」

「そう、炎龍はあの国に七大龍神を祀る神社を作ってくれたわ。私の中にある、たったわずかな神聖は、あの神社で、他の龍神のついでにお祈りしてくれる人達のおかげなの」

「そうか……」

「私は生と死を司る龍なんだけど、ここでは邪竜と忌み嫌われてるから、怨嗟しか私には向けられないから、人を呪ったり、殺すのは得意なの」

「……」

「お兄ちゃん、ここまで無事にこれたのは私のおかげも少し、あるのよ?」


その意見には異を唱えさせてもらう。


「え~、お前、喚くか、食べるだけだったじゃねぇか」

「ふふふ、忌み嫌われてる、といったでしょ? 私がいるだけで本当はあなた達には誰も寄ってこれないのよ?」

「え?」

「この大陸だって全然治安がいいわけじゃないの。盗賊やら強盗、魔獣などの獣。だれにも襲撃されなかったでしょ?」

「そういえば……」

「エルフの国だって、ヨソ者は平気で襲ったりするのよ。まぁ、サキとお兄ちゃんなら誰も襲えないでしょうけど」

「じゃあ、あのエルフ、ナタリーは?」

「彼女、なにか強烈な呪いよけの魔術具みたいな物をもっていたわ。あと奇跡の石とか色々、よほど私が怖かったのね」


やっぱり最初から俺たちをシャルルに売るもりだったのか。

ナタリー……いい旅の師匠だったのに、ちょっと尊敬してたのに……。


「……彼女はあと一週間で死ぬわ」

「呪いをかけたのか?」

「ええ、あのまま黙ってなにもしなければ、お兄ちゃんたちのいい旅の仲間だったしね。でも……」


シャルルが死に、俺たちが無事と知れれば彼女がこの先、俺たちに何かしないとも限らない。

ここはドライになるしかないんだろうな。

けれど、やはり、割り切れない思いだ。

多分、俺はナタリーもシャルルも好きだったんだ。

ひどいめにあわされた。

それは間違いない。


シャルルは俺の血が目的で別に殺すつもりはなかったはずだ。

吸血鬼特有の、嗜虐的なことはあったたが、形が違えばこれからも付き合えたのでは? と思う。

あの、本丸で過ごした夜のように。

……しかし、それも俺を騙すための、血をとるための布石だったかとも思うと、複雑な気分だ。


ナタリーもアゥディーゴからの道中は本当に助けられた。

暗闇を進んでるような旅に差し込んだ、一筋の光の様だった。

しかし、それもこれもこの宿まで俺たちをおびき出すための……。


「そうか、わかった。……寂しいもんだな……」

「それで、お兄ちゃんにお願いがあるの」

「……なんだ?」

「今晩だけ、私を抱いて下さい」

「それはダメ」


今まで黙ってやりとりを聞いてたサキが口を出す。


「お願いサキ。私はもう、しばらくこの姿になれない。あなた達を助けるためにこの姿になったの。神様が人の姿になるのは、大変なの。特に、私は」

「でも」

「明日、あなた達を大陸最南端のイーデまで連れていくわ。そこにはブラウ大陸からあなた達を探しに来てる人たちが来てる。その人達のもとまで連れていくわ」

「……」

「サキ、今晩一晩だけでいいの」

(あるじ)……」


サキが俺に抱きつき、キスを交わす。

そのまま黙って服に着替える。

黒龍の提案が今、俺たちに最善手と判断したのだろう。


「私、今日はナタリーの部屋で寝る。そういう気分」


そう言い残すとサキは部屋を出ていった。

黒龍はドアを見つめてポツリと礼を言う。


「ありがとう、サキ……」


何とも言えない気持ちになった、なんか、色々割り切れない。

黒龍は服を脱ぎ、俺に抱きつく。


「ごめんね、お兄ちゃん」

「黒龍……」


黒龍はキスをし、俺を押し倒す。


「ちゃんとクロって呼んで。お兄ちゃんが付けてくれた名前だよ?」

「そうだな……クロ……」


そのまま俺とクロは同じベッドで一晩過ごした。

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