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異世界行ったら龍姫が俺の嫁!?  作者: じぐざぐ
第壱部 俺とメンヘラ
53/156

第53話 メンヘラ黒龍

気が付いていたら夜が明けていた。

俺はサキの膝枕で目をさました。


「ん……、まぶしいな……」


サキが俺の顔を覗き込んでいる。


「あの二人はどうした?」


ニーアとガンガーのことを聞いてみた。


「馬車が無事だったから、そのまま二人で逃げるように言った」

「そうか……」


ここは、山荘のシャルルの書斎のようだ。

地下へ行く階段の隠し扉が開いていた。


「アイツは、シャルルはどうした?」

「わからない。多分逃げた」

「そうか……逃げたか……」


俺は良く見たら上半身裸でズボンだけだった。

サキは……また違うスチームパンクファッションだった。

確か、前のは……そうだ、龍になった時ズタボロに引きちぎられたはずだったな


(あるじ)、あの後、何があった?」


サキが聞いてくる。


「え~と……?」


俺は上体を起こしながら昨晩のことを思い出す。

ここへ着く前は確かシャルルに何度か抵抗したはずだが……シャルルの赤く光った目を見て、それからあまり覚えてなくて……。


「それはヴァンパイアの使う魅了(チャーム)。言うことを聞かせる異能」

「ああ、それで、ここについて何かを飲まされて、なんか意識が、朦朧としてたな……」

「うん」

「それで、なんか、シャルルに何回も蹴っ飛ばされて……それでなんか、段々腹立ってきて……」


黙ってサキが聞いてる。俺は思い出そうとするが徐々に頭が痛くなってくる。


「それで、なんか許せない、みたいな、許すなって誰かが……言って……うっ……」


思い出そうとすればするほどガンガンしてくる。


「……あとは、なんか怒りで頭が真っ白に、なったような……」

「私が来た時はここで倒れてた」

「そうか、後のことは、スマンが良くわからない」

「そう」


と言いながらサキが抱きついた。


(あるじ)、無事で良かった……」


俺もやさしく抱き返した。


「ああ、心配かけたな」


唐突にサキがキスをしてきた。


(あるじ)、好き、抱いて」

「……わかった、抱くか」


俺はサキの好意は何となくわかってた。

彼女のぶっきらぼうな愛情表現も、まぁ、二人の掛け合い漫才みたいなもんで、そういうオチがいいんでしょ、という態度に徹していたが、もういいか。

もう何度も二人で死線を乗り越えた。

彼女の好意に応える時がきたのだろう。


俺たちは朝日のまぶしい中、何度も死闘を繰り広げた山荘の、一室のソファーで愛しあった。





◇◇◇




(あるじ)はハッスルしすぎ。私、初めてなのに」


裸のサキがにやけながら、ちょっと責めるように言う。


「ふふ、スマンな、こういうの、久しぶりだから、張り切っちゃったよ」

「……知ってる」


と頬にキスしてきた。


(あるじ)はレイラ様の時はすごいスローな行為をする。レイリ様の時は何か、スポーツの競技かと思わせる様な、激しい行為をして……」


サキはいきなり、俺の他の女性達との行為批評をはじめた。


「おい、ちょっと待て、なんでそんなこと知ってる!?」

「私、二の丸様お付きの侍女」


ふふふ、と、お前の情事など、一から十まで知ってるぞ、と、そんな顔で微笑まれた。


「はは、かなわねぇな……」



◇◇◇



俺たちは、とりあえず服を着て、一階の台所に行き、残ってる食材を使って朝食を摂る。

もう昼近くだがな。

固いパンを食べながら昨夜のことを検証する。


「隠し扉の下は地下室ぽくてそこは水びたしだった」

「そうか、確かそこに連れ込まれたことは覚えてるんだけど……スマンな。で、どこにもシャルルはいないんだな?」

「うん、逃げたか、(あるじ)に灰にされたか……」

「俺が? 無理だよ、そんなの。あんな何百年も生きてる化け物、日中でもなけりゃ勝てる要素がどこにもないよ」


まぁ、今なぜこうして無事なのか、判断材料が俺の記憶だけなので、何度思い返してもあやふやなので結論が出ぬまま、今後の行動に話題は移った。


「じゃあ、これからどうするか、だな」

「馬車も金も、もうない。飛べないし、歩くしかない」


サキが俺たちの現状を的確に述べる。


「そうだな……。言葉もわからないし、こりゃあ、険しい旅になりそうだ……」


と俺が呟いた時だ。


「……こ、困ってる?」


と俺のすぐ横で声がした。

横を見ると真っ黒な少女が俺のシャツの裾を掴んでいた。


「……た、助けて、ほ、欲しい?」


半べそをかきながら聞いてくる。

その小柄な少女は黒い髪、黒いワンピース、黒いストッキングに黒いパンプスを履いていた。

大きな黒いリボンまでしていた。


(あるじ)!!」


一瞬で黒い少女と俺の間にサキが割り込む。

しかし、黒い少女はサキの反対側にいつの間にか移動して、また俺のシャツの裾を掴んでいた。


(あるじ)、コイツ龍! 龍人かっ!? 龍神!?」

「わかった、わかった、とりあえず落ち着け、どうどう……」


サキを抱きしめ、頭をなでて落ち着かせる。


「むふぅ~~~」


サキが落ち着いたのを確認し、俺は黒い少女に顔を向ける。


「で? 君は、誰だい?」


黒い少女は答える。


「わ、私、こ、黒龍」


そうきたか……こいつは、七大龍神の一柱か。

一応確認をとる。


「龍神の?」

「そ、そうだよ!お兄ちゃん! 私のこと知ってるの! 私、龍神・黒龍! 嬉しい! 嬉しすぎる! これって運命だよね! だよね! 私 達、結ばれちゃってるよね!」


抱きついて、めっちゃ早口でまくし立ててきた。


「私、こんなに人の子とお話したの初めて! 嬉しい! お兄ちゃん大好き! 好き! 好き! もう愛してる! お兄ちゃんもそうでしょ? 私達お似合いかしら? お似合いすぎかしら!?」

「くっ、こいつ! は・な・れ・ろ!」


サキが黒龍と俺を離そうとする。

だが、黒龍はビクともしない。


「お前、邪魔」


と、サキを軽く突き飛ばし、サキは数メートル吹っ飛ばされる。

その黒龍の手の先から、何か黒いモヤのようなものが出てきて、サキの身体を包んだ。


「な! おい、サキ!」


サキは黒いモヤに包まれて動きを止めた、表情がなんか、どんどん白くなってる。


「おい、黒龍! お前っ、サキに何をした!」

「だ、大丈夫だよ、お兄ちゃん。アイツ、うるさいから呪いをかけた。動けないし、あと一週間で死ぬ。これで私とお兄ちゃんの邪魔ものは消えたね! 私うれしい!」


あちゃ~~これ、この娘、やばいやつだ。


「はい! ダメ~~~!」


俺は軽い黒竜の身体を高い高いの要領で持ち上げる。


「サキを、あのおねえちゃんを元に戻しなさい」

「え? え?……やだよ? アイツ、私とお兄ちゃんの仲を嫉妬して引き離そうとした! 女の嫉妬みにくい」


これはこれは……なかなかの筋金入りのメンヘラだ。


「じゃあ、君とはこれでお別れだ。もう二度と俺たちの前に現れないでくれ」


そう宣言すると、黒龍は今度は泣き出した。


「え? え? なんで? なんでそんな意地悪いうの? 私、なんにも悪い事してないのに!? ひどい! お兄ちゃんひどいよ!」


これはこれは、うん、話の通じなさ、ぷりが神様らしいというか、メンヘラらしいというか。


「黒龍、あのお姉ちゃんは俺の大切な女性(ひと)なんだ。死んでしまったらとても悲しい。だから元に戻してくれ」


すると黒龍は急に大人しくなった。


「え?……え?……お兄ちゃん、なにそれ」

「ん?」


なんか雰囲気が変わったぞ?


「え? お兄ちゃん、あの人何なの? お兄ちゃんの何なの? お兄ちゃん、私のこと、好きだよね? 大好きだよね? 愛してるって言ってくれたよね?」


は? いや、そんなこと言ってねぇし、てか今会ったばかりだし、てか、なんか黒いオーラ的なものがでてきたし、なんか地雷踏んだのか?


「どうのなの! お兄ちゃん! 私とあの女とどっちが大事なの! 私のこと、だましたの!? ちょっとお兄ちゃん聞いてるの!!」


その、黒いオーラ的なものがゆっくり、俺にまとわりついてきてんですけど、これやばくね?


「ちょ、ちょ、ちょっと、落ち着け! いや、落ち着こう、な」

「は? お兄ちゃん! 落ち着けってなによ! 落ち着いてるよ! わたし落ち着いてるんだけど! なんか誤魔化そうとしてない!? ねぇお兄ちゃん!!」


やべぇ、メッチャ、興奮してるし、え? え? どうすんのこれ? 俺、黒オーラにめっちゃ取り囲まれてるんだけど。


「お兄ちゃん! 何? 私なんかした!? 私が悪いの!? ねぇ! おにいちゃん! ちょっと聞いてる!?」


どうする、どうする、どうする、コレ、俺の経験にないパターンなんだけど、コイツをなんとか落ち着かせて、あそこで寝っ転がって白い顔してるサキをなんとかしないと、どうする? どうする?

俺はメッチャ頭を回転させる。とにかくなんか、コイツの気をひかないと……。


「え~と、え~と、ほら、俺……俺たちは出会ったばかりじゃん? もっと……そう! もっと俺、黒龍ちゃんのこと知りたいなぁ~て」


言った途端、黒オーラはす~と下がっていき、黒い少女の中に消えた。


「え~、やだぁ、お兄ちゃんのエッチ! 私の全てを、体の隅々まで知りたいなんて、なんてドスケベなの? もうやだ!」


勝手に顔を赤くしてクネクネしてる。


「そうそう! 呪いをあんなに簡単に出せるなんてすごいよね! なかなかできないよ! 黒龍ちゃんて本当すごいね!」


とにかくほめまくることにした。


「やだぁ、そんな大したことないよぉ~、お兄ちゃん、そんなスゴイ! お前最高、愛してるなんて、照れちゃうよぉ~」


よしよし、ご機嫌がなおってきた。


「けどさぁ~、呪いをかけるのは簡単にできるけど、呪いを解除するのは難しいよね? できないよね?」

「は? おにいちゃん、何言ってるの? できないわけないじゃん。私のことなんだと思ってんの? ほら見ててお兄ちゃん!」


と黒龍がパチンと指を鳴らすとサキに纏っていた黒いモヤがきれいさっぱりなくなった。


「サキ! 大丈夫か!!」


俺はサキのもとに駆け寄る。抱き起こすと、さっきより顔の血色が良くなってきたみたいだ。


「……なんかどっかの川の向こうで先祖らしき龍がこっちにくるのはまだ早いって……」


それなんて三途の川?


「なにそれ、お兄ちゃん! やっぱ、そっちの女の方が大事なのね! 私を騙したのね!!」


黒龍を見るとまた黒いオーラが噴き出してた。


「ストップ! ストップ! もうそれ出すな! その黒いの、黒いのだすな!」

「何言ってんのよお兄ちゃん! 私、黒いのなんてだしてないよ!」


俺はサキをその場に寝かせて黒龍に近づく。

どんどんまた、俺の周りに黒オーラがまとわりつく。


「いいから落ち着けって!」


俺は黒竜を抱きしめた。俺と黒龍はどんどん黒いオーラの中に埋まっていく。


「何よ! お兄ちゃん! 離して!」


俺の腕の中で暴れる黒龍に強引にキスをした。


「!!!!!!」


最初抵抗してたが、徐々に黒龍の力が抜けていった。

口を離す頃には黒オーラは消えて、黒龍は真っ赤になってモジモジしだした。

そして顔を赤くして俺をじっと見つめてこう言った。


「お兄ちゃん、責任、とってね?」


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