第49話 移動開始
「とりあえず、明るいうちにシャルルを始末しとくか」
「目の前の脅威を排除しておくのは最優先事項」
サキと意見が一致した。
ここから移動するにしてもやはりシャルルはなんとかしなくてはならない。
「あのヴァンパイアを殺るなら協力するぜ」
お、鳥頭が協力的だ。
「お前、アイツの手下じゃないのか?」
「そうだが、別に好きでこんなとこにいるんじゃねぇし、龍帝国に帰りたいし」
「わ、私もです! なんでもお手伝いします!」
猫少女も加わる。とりあえずサキが猫少女の首輪を力技で外した。
彼女の首輪は何らかの呪術具で一定の範囲から外に出れないようなものだという。
「私ミーアって言います。よろしくお願いします」
けなげなもんだ、だが俺は最優先でしなければならないことがある。
俺は鳥頭に声をかける。
「おい、ガンガー」
「なんだダンナ、俺、なんでもやるぜ!」
張り切ってるとこ悪いが、俺はコソコソとガンガーにお願いする。
「その、なんかパンツかなんか、調達できないか? アレが、その……」
俺は、いやサキもだけど裸にシャツ一枚という姿なので……俺は動く度にアレがブランラブンするのがなんとも落ち着かない。
と、いうわけでなんとか着替え、ガンガーの案内でシャルルがいるという二階の書斎に三人でいく。
ミーアはとりあえず一階の台所で食べれそうなものを作ってもらってる。
サキが書斎のドアを力任せに壊し、中に入るとそこそこ広い部屋だった。
「サキ、女物の衣装が多そうだ、なんか着替えとけ」
「そうする」
サキがゴソゴソと衣装棚を物色している間、俺は武器を作ることにした。
「ダンナ、なんだそれ?」
俺は外でその辺に落ちてた木の棒を拾っていて、その先端をナイフで尖らせていた。
「ヴァンパイアには心臓に杭だろ?」
「あいつらは不死身だ、そんなので死ぬのか? 棺を外に出して蓋を外せばいいんじゃないのか?」
「あ~そう言えば……おい! サキさん、どっちがいいですかね?」
「不安なら杭を打って日に当てよう」
「うん、そうだな。そうしよう」
サキがすっかりスチームパンクな衣装になった。
なかなか似合ってるぞ!
皆の用意が整ったところでいよいよ隣の寝室へと向かう。
ドアを開けると全く日の差さない暗い部屋だった。
窓はご丁寧に目張りまでしてあるらしく開けることはできない。
俺たちは仕方なく、蝋燭に火を灯し、シャルルがご就寝であろう棺に近づく。
ガンガーがゴクリとツバを飲み、俺に確認をとる。
「ダンナ、……開けるぜ」
ガンガーが蓋を開けようとするのを俺が制する。
「待て待て、……一旦、書斎に運び、明るいとこで開けよう」
「そ、そうだな、ここ暗いしな……」
ガンガーも緊張しているようだ、汗をかいている。
「ああ、慎重にな。よし、運ぼう、そっちを持ってくれ……」
と言った途端、ばあ~~ん、とサキが目張りしてある窓に鉄拳をぶち込み、さぁ~~と日が入ってきた。
「主、楽しんでないでさっさとする」
イライラした口調で言われた。
た、楽しんでなんかないぞ!
だが、ヴァンパイアキラーは一大イベントだ。盛り上がるところだろ?
反撃を受けるんじゃないのか、とかうまくいくだろうか、とかドキドキしながらやるもんじゃないのか?
なんて思ってる間にサキは寝室の窓全てを開放し、寝室は隅々まで日の光がいき渡った。
あ~あ、これじゃ吸血鬼、反撃できないじゃん。
俺は急激に冷めた。
「よし、ここでやるか、二人とも蓋を開けてくれ」
そして俺は杭と打ち付けるハンマーを構える。
「姉御、いいですかい?……せ~~の!」
蓋を開けた時、その棺の中身は空っぽだった。
◇◇◇
「さて、これからどうする?」
館の庭に出て、俺たちはミーアの用意してくれた昼食をとった。
俺たちは朝から何も食べてないし、シャルル暗殺も空振りに終わり、なにか、気が抜けた感じになっていた。
「その道を降りていけば一日ほどで麓に村がある。食料とか物資の調達はそこでしてたな」
ガンガーが館から延びる一本道を指さす。ここしか出る道はないらしい。
他にも二本ほど山道があるが人一人通るのがやっと、という感じで馬車を使おうとする現在、選択肢には入れない。
「ここから龍帝国まで帰るとしたらどういうルートなんだ?」
ガンガーが思い出しながら答える。
「俺たちは……龍帝国の特急便て奴の竜で二日で魔大国まで飛んで来て、そこからはひたすら馬車だな」
「馬車でどのくらい走った?」
「三週間ちょい、てとこかな?」
「ふぅ~~……遠いな。全員、土地勘もなく現地語もしゃべれないとなると……」
かなり困難な道中になるな。
「そう言えばガンガーは飛べないのか?」
「は? 何言ってんだダンナ、人が空飛べるわけないだろ?」
ごもっともなセリフだが、お前、その頭で……。
ま、いいか。
「サキの翼はどうだ?」
無表情だが少し、しゅんとしたように答える。
「少しづつ治ってるっぽいけど……まだまだ治らなそう……」
「とりあえず、はだ。この館の馬車をもらって、その麓の村まで移動しよう。会話は身振り手振りで頑張るしかないな。あとはなんか、ここの館で金とか道中必要そうなものを貰っていこう」
一応の方針を決めてそれぞれ分かれて館を物色する。
サキがシャルルの書斎にあった、大層厳重そうな金庫をぶち抜いたら結構な金貨がでてきた。
「龍金貨まであったがこっちで使えるのか?」
「なんでもないよりある方がまし」
サキがゴッソリ金貨を袋に詰める。やってることは空き巣そのものだが背に腹は代えられない。
あとはそれぞれ毛布やら食料やらを馬車に積み、いよいよ一ケ月ほど過ごした、この忌々しい館ともお別れだ。
「よし! 皆、準備はいいな! 出発!」
馬車がゴトゴトと走り出し、俺たちは晴れ晴れとした気持ちで山荘を後にした。
……だが、俺はなんとなく何か忘れているような、見落としてるような、そんな気がしていたが思い出せないでいた。




