第47話 脱出
しかし信用していいんだろうか?
と俺は後になって思ったが、けっこう今は最悪な状態なので、どう転んでも今よりは状況が良くなるんじゃないか、と思うことにした。
取り合えず朝に脱出できればヴァンパイアは夜まで追ってこれないだろう。
怖いのは狼男だな。
ヤツらは鼻が利きそうだ。
けど昼間は人型になってるのでやっぱし夜しか変身できなのかな?
狼男は……満月になれば強いんだっけ?
この世界は月が二つあるけど、どういう設定になるんだ?
ここにはあと何人くらいいるんだろうか?
あと鳥頭の奴がいたな、アイツは飛べるんだろうか?
なんて考えているうちに満腹の満足感も手伝い、寝てしまった。
どぉぉぉぉぉぉぉん!!
っなんだ、なんだ!!!
はぁっ、と飛び起きるとやたら自分の牢がホコリっぽく、空気の流れがいつもと違ってた。
床にはガレキが転がり、ふと横を見ると壁に大穴が開き、そこに全裸でキズだらけな、真っ赤な龍眼をしたサキが拳を突き出していた。
「主! 逃げよう!!」
俺についてた鎖をブチブチちぎり、くるりと俺に背中を向けたサキは、真体になっていたが背中の両翼が根本から切られていて、なかった。
「お前、翼……」
「そんなことは後、とにかく今はここから出る!」
サキが牢の鉄格子を力まかせにこじ開けると猫少女が待っていた。
「こっち! すぐ狼たちが来るから急いで!!」
猫少女が用意してくれたブカブカの汚いTシャツみたいのを着て、俺たちは出口へと急いだ。
地下階段から地上へ出ようとすると早速2体の狼男が道をふさぐ。
「貴様ら!」
と遅いかかってくる狼男2体をサキは1体を右フックのワンパンチで殴り倒し、その勢いのまま、くるりと回りながらハイキックでもう一体を倒した。
時間にして数秒か。この程度の相手なら龍紋をだすまでもないのであろう。
「……すご……」
猫少女が感心している。
「ふふん、サキはすごいだろう!」
俺は彼女が誇らしかった。
「お兄さんに威張られても……」
猫少女はジトっとした目で、しごく当然のことを言った。
外へでると朝、と言う感じだ。
ああ~久しぶりに日の光を浴びたよ、こんなにも気持ちいいなんて。
外へでると数人の亜人が待ち構えてた。
◇◇◇
鳥頭の亜人、ガンガーは最近シャルルに雇われた。
ギャンブル好きの彼はよく亜人街の賭場に顔をだす。
大体勝ったり、負けたりだ。
これまで大勝ちしたことはないが、大負けして首が回らなくなるほどの借金もしたことはない。
まぁまぁ、上級のギャンブラーだ、と思っている小物だ。
ある日、いつもの賭場で信じられないくらいの大負けをした。
次のゲームで取り戻す、次のゲームで勝つ、次、なんとかなるはず……とやってくうちにドロ沼のような深みにはまり、気づけばとんでもない借金をかかえていた。
その相手がヴァンパイアのシャルルだった。
そんなに借金を背負えない、と言ったらじゃあ自分のとこで働いて体で返せ、と言われ、こんな人里離れた山奥の山荘に連れてこられた。
なんだか誘拐してきた人物を地下に監禁してるらしく、ソイツが逃亡しないように見張るのと、後は雑事だ。
正直、チンピラの彼はそんな面倒くさい仕事などやりたくなかったが提示された給金が今してる土方よりもはるかにいいので受けることにした。
まぁ反対もできなかったし、なかば強制みたいなものだったが。
来てみれば、ここにいる連中もチンピラばかりみたいだし、時々博打をしたりして、女っけがないことを抜かせば意外と快適だった。
今日までは。
いきなりの荒事だ。
館がぶっ壊れたかと思うほどのデカイ音がして皆、外にでた。
二人ほど地下の牢屋を見にいったが一つしか通り道のない、その二人が突入した階段の出口から現れたのは監禁されてる二人だった。
外にいた連中は自分も含め、すぐに臨戦態勢に入る。
多少腕っぷしには自信あった。町ではよく、そこらでケンカもした。
しかし
戦ったって絶対勝てない、と向かい合うだけでわかる自分の主より、今この数人で囲んでる真っ赤な目をした一人がよほど恐ろしい存在だというのが肌でわかる。
龍人だ。
「怖えのは一人だ! 囲んでやっちまえ!」
全身の毛を逆立てて叫んだ猫男の頭がその瞬間消え、すぐその隣に角をはやした女がその頭を握っていた。
その女に後ろから狼男が切りつけた。
が、女はそれを振り向きもせずヒジで受けた。
あたった瞬間、刀は砕け、刀身は半分になった。
間髪入れずに彼女が目にもとまらぬ速さで後ろ蹴りを、これもノールックで狼男の腹にヒットし、彼はそのまま十数メートル吹き飛び、館の壁に激突し、絶命した。
あっと言う間に二人がやられた。
やべぇ、コイツに勝てる気がしねぇ……。
ガンガーは素直にビビっていた。
だが逃げることはできない。
もしここで逃げて生き延びても自分の主であるヴァンパイアからは絶対逃げられない。
いくも地獄 引くも地獄。
頼む、誰か、アイツを倒してくれ、と願っているうちに仲間が全員倒れてた。
「主、一人残ってるけど、どうする?」
女が男に聞いてる。頼む見逃してくれ。
もうガンガーは足が震えて逃げることもできない。立っているだけでやっとだ。
だが「ん~、一人残してもしょうがないだろ」
男は無情に告げた。
「了解」
ガンガーにサキの手の平が迫る。




