第46話 独房
「おい、生きてるか?」
「ん……大丈夫」
「龍紋は出せるか?」
「無理」
「……そうか……」
「あぁん、主ぃ……私ぃ~、こんなのはじめてぇ~……」
「色っぽい声をだすな!」
良かった、おちゃらけた真似ができるなら、まぁ、元気そうだ。
1ケ月ほどが経過したろうか?
俺たちはどこぞの建物の地下の独房に幽閉されていた。
独房ではあるが近くにサキのいる独房もあるらしく、声をかければ帰ってくる。
独房と言ってもわりかし、いい部屋でそれなりに自由に動ける。
全裸で手足と首に鎖付きだけど。
それでこの鎖、呪文的なものが施されてらしく、うっすら俺でも見てわかるくらいの魔力が通っていて、外すことはできない。
一日に三回、首輪をつけた奴隷と思わしき、傷だらけの猫少女が食事を運んでくれる。
ちなみにブラウ大陸では人身売買は禁止されている。
大陸に散った勇者たちが戦後復興の際、禁止したからだ。
今でも裏で取引などが発覚したら厳しく罰せられる。
そのことを考えるとここは、もしかしたらブラウ大陸ではないかもしれない、というのがサキと俺の見解だ。
まぁ、ブラウ大陸のどこかで裏稼業の者の屋敷かもしれない、という線も捨てきれないが……。
そして、ここの食事もまぁまぁ豪勢で腹一杯食わしてくれる。
と、いうのも
まぁ幽閉した張本人の目的が俺たちの血だからな。
サキは三日に一回血を抜かれている。
俺はその張本人が週一で血を吸いにくる。
「ぬふふふ、安心せい、殺しはせんぞ、もったいないからの。死ぬまでな、死ぬまで血を飲ませてもらうぞ、これならもう、わしは真祖すら超えてみしょうぞ!」
シャルル・プルーンはどんどん若返っているように見える。
ボンテージファッションに身を包み、嬉しそうに俺の独房にやってきやがる。
この間二の丸に来た時は20代後半~30代中盤あたりに見えていたが、今では十代のようだ。
ヴァンパイアの吸血は性的なものらしいが、俺の血はより性的興奮を覚えるらしい。
彼女が俺を吸血するときはいちいち服を脱ぎ、吸いながら赤く光り、吸血し終わった後は、またがった俺の上で一人で勝手に余韻に浸るように悶える。
その後、俺をビンタしたり蹴ったりしてくる。
「ほれぇ! どうした! お主はもうすでに違う者であろう? 龍の因子でも入れられたか? 龍になってみせぇ!」
俺が龍神を呼んだこと(正確には違うが)はもう龍帝国では誰もが知るところだが、俺が炎の龍人(仮)になったことはいずれは知れ渡るだろうが今のところ、国ではトップ中のトップシークレットだ。
しかし、シャルルは俺の血を飲み、明らかに常人のソレとは違うことに気が付いたのだろう。
執拗に血を飲んだあとは俺のことをいたぶり、上記のようなことを聞いてくる。
そしてさんざん嬲ったあと、ツバを吐き、
「また来週の! 楽しみじゃのう、ふひひ」
と帰って行く。
ヴァンパイアはSっ気が多いと聞いてたが、こっちはその気がないのでたまらんですわ。
「主、生きてる?」
シャルルが俺を嬲った音が聞こえたのだろう、サキが心配そうに声を掛けてくる。
「あ、……ああ……大丈夫、だ」
吸血された後はぐったりする。
そのぐったりしてるとこに殴る、蹴るがワンセットでくるからたまらん。
「……ご主人様、申し訳ございません……」
サキがめずらしく殊勝なことを言い出した。
「どう、……した」
口が切れてるな、痛い。
炎の龍人(仮)だから傷はいずれ治る。
でも痛いものは痛い。
アイツは俺の血がもったいないので俺をいたぶる時は血がでるようなヘマはしないが地味に効く攻撃をしてくる。
やられるとしばらくは動くのがしんどい。
「私が……もっと注意していれば……こんなことには……」
泣いているのか、ときどきしゃくりあげる声が聞こえる。
「それは、もう言うなって……。元はと言えば俺が悪いんだ。簡単にアイツのことを信用してしまったから……俺こそお前を巻き込んでしまってすまなかった……」
ここに来てから、何度か聞くサキの謝罪だ。
これが始まるとお互い謝罪合戦になる。
「ああ、せめてこの牢に施されてるだろう、封印の術式が外せればな……」
「……そうですね……私が龍になれれば……」
いつも最後はしんみりしてしまう。
その時、いつもの猫少女が俺に食事を運んできた。
「あの……食べれますか?」
俺は床からなんとか寝床に戻り、彼女に声をかける。
「ありがとう、そこの、テーブルに、置いといてくれれば、後で食べるよ」
テーブルに食事を置きながら
「ご主人様が元気になるように沢山食べさせろ、と。難しいようなら私がお手伝いします」
と言いながら肉みたいな物をフォークに差し、寝転がってる俺の口に運ぼうとする。
すると彼女をここまで連れてきたであろう牢の外にいた狼男がドアを蹴り、こちらに怒鳴り込む。
「おい! メシを置いたらとっとと出てこい!!」
猫少女は食事の補助をする姿勢で答える。
「すみません、この人、一人じゃ無理そうなので私が今、お食事のお手伝いをしてます」
「ちっ! 早く食わせろ!!」
「わかりました」
と言って彼女は俺の口に食事を運ぼうとする。
「おい、いいよ。俺あとで一人で食べるよ、行った方がいいんじゃないのか?」
おれは彼女が心配になり、声を潜ませて喋る。
「あなた達を、助けます」
彼女もヒソヒソ声で俺に話しかける。
「食べながら聞いて。龍のお姉さんの牢の封印が解けたら、なんとかなりますか?」
やっぱり何らかの封印をされてるのか。
そう言えばシャルルが最強種の龍人は捕まえるのが大変だが捕まえてしまえばやりようはいくらでもある、といってたな。
伊達に何百年も龍帝国にいたわけじゃなかったんだな。
「ああ、アイツが龍になれればこんな牢屋、いや建物ごと破壊できるさ」
「じゃあ明け方、封印をとる。ただし一つ約束して」
彼女が真剣な顔をこちらに向ける。
「なんだ?」
「私も連れて行って」
これは……もちろん断れる取引じゃない。
ここを出れるなら猫の一匹や二匹。
「わかった」
猫と龍の取引はなった。




