第43話 龍城日報
ご存じのように我が龍帝国は縦に長い国である。
「他国を攻めず・他国に攻め込ませず」
という国母様の素晴らしい理念のもと、我が国の国境線は千二百年変わることはない。
龍帝国中心にあり、龍ノ中宮市を含む大平原の御料地は沢山の希少種の竜が生息し、管理されている。
大平原の立ち入り禁止区域の奥地にある龍神湖だが、この地は龍神様と国母様が最初にお住まいになられた場所で、ご一家の住まわれた家屋も四百五十年前に一度建て直し、復元されたものが現存する。
その集落にはその時、ご一家をお世話をしていたという一族の末裔の竜人の方々が住んで周辺の家屋や御料地の見回り、管理などをしているということだ。
集落の長は語る。
「ご皇族の方々は年に2~3度お越しになり、ご静養あそばれます。その時はお城からもある程度のお世話される方もご同行されますが私どもも精一杯お世話させて頂いております」
今回は異世界の君、二の丸様が奥方様とこの地にご静養に訪れ、年に一度、陸揚げする超級の竜をご見学されるということで我々取材班もご同行させて頂くことなった。
ご宿泊される場は、もちろん龍神様、国母様ご一家が当時お住まいになられた・純和風家屋で何度か改装されているという、なんとも佇まいの素敵なお屋敷だ。
二の丸様付きの侍女の話
「はい、二の丸様、それに奥方様方は仲睦まじく御料地にお入りになり、それぞれ思い思いにお過しです。お城にいらっしゃるときに比べ、肩の力も抜け、解放された気分でいらっしゃると思います」
筆者ら皇室付取材陣もこの集落にて数日を過ごさせて頂いたが、さすがに都市の中央までとはいかずとも快適に過ごすことが出来た。
二の丸様は静養に来られたこの地に置いても朝のお稽古を忘れない。
我々取材陣も二の丸様が早朝稽古されるということで朝も暗いうちから待ち構える。
二の丸様お側衆の話
「二の丸様は毎日、欠かさずお稽古をされる。我々お側衆も二の丸様が少しでも、ご快適に稽古ごとが出来る様、常に周りに気を使っております」
「僕は……そうですね、昔、二の丸様にお稽古をお勧めしたことがあるのですが、ええ、そうですね。二の丸様がここまでご成長におなりになったのが、……ええ自分の一言がお力になれたかと思うとうれしいですね」
「拙者はいつ、いかなる時でも二の丸様を我が命に代えてもお守りする所存でござる」
筆者も実際、二の丸様のお稽古を拝見させていただいたが、まさに真剣そのもの。
濃い修練は時をたつのも忘れるほどに見惚れてしまうものであった。
二の丸様のお稽古にはご側室であられる、名門、龍之下条家よりお輿入れされたカナエ様、そしてこちらも名門、龍乃一条家より最近、お輿入れされたカナン様もご一緒で、お美しいお二人が二の丸様のお稽古をお手伝いされているお姿は微笑ましく感じられた。
カナエ様は元近衛隊のエリートでいらっしゃるが、さすが異世界の君の前では、ご遠慮されてるのかあまりお動きにならかった。
カナン様もお城付き飛竜隊のベテランの乗り手のお一人でいらっしゃるが剣の立ち合いでは二の丸様に一日の長があるのか、ご指導を受けていた。
カナエ様のお話
「二の丸様は本当に身体能力が高く、私などはいつも遅れをとってしまいます。それでもお優しくご指導いただいております」
カナン様のお話
「私などが二の丸様にご指導いただくのは本当に恐れ多いことではございますが、二の丸にはいつもご丁寧にご指導いただき、ありがたく存じております」
その後、御一行は朝食をとられた後、御料地で放牧されている各種、竜のご見学をされた。
レイラ様、レイリ様ご姉妹は仲良くお屋敷にてお留守番をされていた。
レイラ様のお話
「二の丸様は今回の御料地をずいぶん前から心待ちにされていたようで、こちらにいらっしゃってからはとても楽しんでいらっしゃるようでなによりです」
レイリ様のお話
「私達が身重の身ですので二の丸様にとても気遣っていただいております。とても大事に扱っていただいて二の丸様の深い愛情を感じておりますが、今回のような野外活動にお付き合いできなく、心苦しく感じることもございます。その分、ご側室の方々と楽しくお過ごしあれば、と思います」
フィールドでは色々な竜を竜育している竜人に次々と紹介される度に二の丸様は「この種はなんという名称ですか」など積極的にご質問され、ご側室様方とも大いに楽しまれたご様子だった。
その後、ご一行は今回の最大の目的でもある龍神湖へ馬車にて移動された。
龍神湖を見渡せれるスタンドにご一行はお寄りになり、そこからのご観覧となる。
筆者も今回初めて御料地に足を入れた身であり、見るもの、聞くもの、体験した全てが新鮮であったが、これより目の当たりするものはきっと生涯忘れえぬものであろう。
湖のほとりでは数十人の龍人と竜人が作業してた。
まず数人が旗を振り、合図する。
次に高い笛の音がなり、何か所かから注意をうながすのであろう半鐘の音が聞こえてきた。
うるさいく感じている間に、ついに湖中央付近の湖面が盛り上がり、巨体が姿を現した。
顔だけでも十数メートルあるのだろうか、首から上だけを水面からだし、ゆっくりとこちらへと向かってくる。
岸辺に近づくにつれ、徐々にその巨体が姿を現す。
上陸した時にはすでにその顔ははるか上空にあり、表情を読み取ることはできない。
その顔付近を竜育者を乗せた飛竜が三体ほど飛び、誘導しているようだ。
湖面より現れた”超竜”はその狂暴そうな体躯からは予想もつかないほどゆっくりと一歩、また一歩と歩きだす。
しかしその一歩のなんと派手なことか!
ただ歩く、それだけのことにこれほどの衝撃を受けたことは筆者が今まで生きてきた中で経験したことはない。
”彼”が一歩、歩く度に冗談ではなく自分の体が浮き上がるのだ。
立っていたらきっとこけたであろう。
”彼”はゆっくりと進み、そしてその背びれを発光させる。
数十秒のタメを使い、口を極限まで開け、ブレスを空中にだす。
火竜や我々龍人が出す炎とは比べるべくもない圧倒的な火力が細い線となり空へと流れた瞬間、雲が蒸発し、なくなってしまった。
”アレ”が陸上に放たれでもしたら一瞬で大災害となるであろうことは間違いない。
この”超竜”はなんでも我らが国母様と魔大陸にて、共に戦いぬいた個体であるということだ。
その年齢は一五〇〇歳とも二〇〇〇歳とも言われている、生きた伝説の竜である。
そのような竜をこのように間近で見れて少なからず興奮したのは間違いない。
さすがに異世界より来られた二の丸様も大興奮で大声をお出しになり、ご観覧されていた。
二の丸様
「なにアレ! ゴ○ラじゃん! ゴ○ラ! すっげー!! やばっ! いいの? アレ! トー○ーに怒られない? いいの? ツ○ラヤとかさ!」
と凡人たる我々には理解できないお言葉を発して興奮しておられた。
そしてその後ゆっくりと超竜は湖へと帰っていった。
※ 編集注
記事を掲載後、読者様からのご指摘があり、後日、竜育者に確認したところ、超竜の性別は判明してないことがわかりました。
超竜を”彼”と確認なく男性表記したことでご不快に思われた読者様に心よりお詫びいたします。
◇◇◇
「ちょっと待てやぁ~~!!」
俺は読んでた新聞を勢い余って破り捨てた!
「なんだよ、これ嘘ばっかりじゃん!」
俺はこの間行った、御料地の記事が掲載されてるとサキからもらった新聞記事に腹をたてていた。
「主、落ち着け」
サキが俺に無表情に言う。
「レイラだけじゃん! いつも通りなの! なんで皆取り繕った意見ばっかり書かれてるのに……俺だけなんでこんな言葉切り取った!」
「大丈夫、マスコミなんて嘘ばっかりだ。どうせ誰も信用してない」
「いや、それでもこれはないだろ! なんだよ、カナエ、カナンは稽古中はいつも俺を怒鳴りつけたり、竹刀で容赦なく叩きつけてくるくせに、この時だけ……」
「フフフ、皆良く思われたいんだな」
「オカッパ達までなんかいい感じに忠臣みたいになってるし……くそっ!」
「主、落ち着け、抱くか?」
「抱かねぇよ、服着ろ!」
……気が付いたらサキが下着姿になってやがる! いつ脱いだんだ?
龍城日報の記者なんか連れてったからだな、やっぱり龍ノ宮新聞の方が良かった。
次はそうしようと俺は思うのであった。




