第42話 龍神神社
「本日はわざわざお越しいただき、ありがとうございます」
俺は龍之宮市上街……つまり龍人街の中央区にある大きな神社に来ている。
ここは龍乃十条家が管理している神社だ。
と、いうより十条家はこの国の全ての龍神神社を管理・運営していて、国の祭事などの一切合切を取り仕切っている。
それだけで莫大な収入があるので他の十大公爵達の様な広大な領地は所有させてもらえない。
もちろん神事を行うための、ある程度の敷地が国中のあちこちに所有しているが、微々たるものだ。
「と、いう訳で当家の領地をご案内致します、というわけにはいかず、当方も色々思案いたしまして龍ノ中宮市にある当神社の本宮あたりにお越しいただき、そのまま龍之中宮市を見学、というのはいかがでしょう?」
龍乃十条家、龍乃十条レイ公爵がそう提案した。
公爵、とは言っても名ばかりで本職は神官だ。
龍乃十条家は女系一族で代々婿養子を迎え、当主はその時代の”龍の巫女”が行う。
ちなみに現在の当主の婿養子は現龍帝の実の弟である。
俺が死んだ時世話になったらしい。
ちなみに娘はこの神社にはいなくて現在その龍ノ中宮の神社にいるらしい。
じゃあしょうがない、そっちへ行くか、と竜車で行った。
馬車でも良かったんだけど、まぁ早かったので。
龍之中宮市は龍帝国の中心に位置し、なんでも龍河れいと龍神が最初に住みだした場所らしい。
帝国の中で歴史が一番古い都市で、それなりに規模も大きい。
龍神神社も当然古くて、しかも龍ノ宮よりはるかに大きくて荘厳だ。
その奥に来客用の屋敷があり、そこへ通されたかと思ったら、こちらにうちの娘がおりますので後は若いお二人でどうぞ、と一人でポイっとされた。
そしてその部屋には、、一人の少女がいた。
格好は、パンクの皮ジャンの上下的なもので真っ赤な髪はなんだか複雑な形でまとまられている。
片目には皮の眼帯をしていて、手足にはところどころ包帯をしている。
……お前ら傷つかないだろ……ついてもすぐ治るだろ……。
で、その娘がジ○ジョみたいなポーズで立って、俺を? 待ち構えていた?
「よく来た、我が半身……」
え~と?
「この方が今回のお相手です」
と、サキちゃんが毎度のセリフを耳打ちする。
いやいや神社の娘、って、巫女服着て、なんか綺麗な黒い長髪でってんじゃないの? キャラ違うだろ!
「諦めろ、主、現実を見て」
「うっ!!」
と俺とサキがコソコソしてるとその娘が急に左手を押えて呻きだした。
「くっ、我が左手に宿りし、暗黒邪竜がっ!」
「おい、暗黒邪竜てなんだ?」
サキに聞く。
「多分、そういう設定」
いつにも増して無表情で答える我が侍女。
まじかよ……これってまさか……。
「はぁはぁはぁ……なんとか、抑えたか……だが、もう時間がない」
これはあれだな、とりあえず、座って鑑賞しておこう。
俺をもてなす為のお芝居、とでも思っておけば……隣で無表情な解説員もいるしな。
「私……解説員、違う」
「ふふふ、二人とも、びっくりしたようだね、私の名はファイヤードラゴン・スレイヤー。大いなる意思に選ばれし、十三人の戦士の内の最後の剣……」
おいおい、炎龍殺しになっちゃってるぞ……いいのか?
「多分意味わかってないと思われ」
「私はね、実は失われし世界に三つしかない剣の最後の一振りなんだ。その時がきたら悪を滅ぼすため、この世に散らばった七つの宝玉を探し、力をタメなくてはならない……我が半身、一緒に行ってくれるよね……」
とこちらに向かって手を差し出した。
お~パチパチと拍手したところで襖がバーンと、勢いよく開かれ、俺の想像通りの巫女姿の美少女が鬼の形相で現れ、スタスタと来てパカーンとその少女の後頭部を叩いた。
「あんたって娘はっ!」
「おねえちゃん~」
……数分後、姉妹は俺に向かって土下座してた。
「自己紹介が遅れました。私は龍乃十条レイナ、当家の長女で、こちらの娘が妹の龍乃十条レイカ、14歳です。今回、二の丸様のご側室候補となります」
「グスっ……グス……はじめまして……」
「本当に申し訳ございません。妹が……」
俺は率直な意見をレイナにしてみる。
「え~と、俺の側室は君じゃダメだったのかい?」
どう見ても、まだ幼い顔のレイカよりも、大人びた顔をしてる姉の方が俺に釣り合いそうだ。
レイナは少し困った顔をして答える。
「申し訳ございません。私は次期”龍の巫女”となることが決まっておりまして、この家を継がなければなりません。
龍の巫女は誰でもいい、というわけではなくて……その、私がこの家の長女だから、というわけでではなくて、ですね、その、色々条件を満たした者でないとなれないのです。
ですから母が死して後、私は”龍の巫女”として生きて行かねばならないのです。
もし、二の丸様がどうしても私が欲しい、とおっしゃるのであれば、我が家に婿入りして頂くことになりますが……」
「いや、申し訳ない、なるほど、それでその娘が……」
「それでその……あの、二の丸様にお願いがございます!」
とレイカが言い出した。
「……なんでしょう?」
「あの、その、私の輿入れを三年待って頂きたいのです!」
「それはどうして?」
「その!国母様と炎龍様が結ばれたのが十七
その頃には中二病も収まってるかな。
年的にもちょうどいいしな。
「いいでしょう。では三年後に、ということで、こちらは……」
とサキを見ると頷いてる。OKでいいんだな。
「大丈夫のようですので……」
そのまま俺たちは神社の来客用の屋敷で一泊して帰った。
なんなん……何しにきたん……それならそうと、ここまで来る前に言ってよ……。
◇◇◇
その日、お城の本丸にある、俺の執務室に侍従長とその息子の二の丸取り纏めが来た。
「二の丸様、ご側室候補のことでご報告がございます」
侍従長が俺の部屋に来るのは珍しい。
侍従長の顔は・・無表情だ、読めないが声に少し緊張を感じる。
「何かあった?」
「はい、まずはこちらの資料をお渡しします」
と侍従長が言うと息子が数枚の資料を俺に手渡した。
「実は六つの貴族がご側室候補の変更を申し込み、されてきました。今お渡しした資料はその一覧です。」
「え~と、龍之中条家、ご側室候補、病気の為、ご側室候補の変更を願いたく……。って、七歳!!?? 嘘だろ!! こっちは……五歳! ……八歳! ……二歳ってのもいるぞ! どういうことだ!」
「は、……多分、マリー様やレイカ様の……」
「夜伽や輿入れは数年後でいい、ってアレか?」
「は、これは推測でしかないのですが、いや多分、他に理由が考えられないのですが、二の丸様がその、ご寿命がお延びになったことも関係あるかと……」
「つまり輿入れするのを慌てなくていい、てことか……」
「はっ、候補変更願いでた貴族達が今回用意したご側室候補は養子の者ばかりでした。つまり、より本家筋に血の近い者の方が良い、と判断されたのではないのでしょうか?」
「あ~なるほど……」
「養子になったものには、その家の親戚以外からきた者もいたみたいで……」
「側室狂騒曲、ここに極まれり、だな」
侍従長と息子が同時に頭を下げる。
「申し訳ございません」
「頭をお上げ下さい。侍従長の責任ではないでしょう?」
「はっ、しかし何も知らぬ異世界よりいらして我らの全てをお受け入れ下さり、努力されてる二の丸様に、この様な貴族たちの自分勝手な見苦しいところをお見せすることになるとは、なんとも情けなくて……」
お~侍従長、俺をそんな風に評価してくれてたのか。
「仕方ありません。こちらからダメだと言ってもどうせ聞かないのでしょう?」
「誠に申し訳ございません」
「ま、いいように考えましょう。私もこのまま、だらだら十三人になるまで増えてくよりも半分減って、今いる人たちを大事にする時間も増えますので」
「そうおっしゃって頂けると、助かります」
「では、申し出のあった貴族の方たちには了承の旨、お伝えください」
失礼します、と一礼して侍従長たちが帰っていった。
ドアが閉まってお茶など片づけてたサキが俺の顔をチラっと見て一言。
「主、顔がにやけてる」
「あ、にやけてる? 俺ってば、にやけちゃってる? いやぁ~半分に減ってくれて、ほんと助かったよ、これで楽になるわぁ~」
「本音だだもれすぎ」
「でもサキちゃんもこれでちょっとは楽になるだろ?」
「私は、別に、どうでもいい」
「ふんふん~♪ 今日は二の丸の露天風呂で祝杯だな」
俺はちょっと、いや、かなり肩が軽くなった。
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