第107話 三つの宝玉
龍神たちが言い合いしてる間に俺たちもただ黙って見てたわけでなく。
「なんでお前達がここにいるんだ?」
「聞いてよ! 父様! 私達がレストランに行ったらなんか白っぽいわけよ! で、外の霧でも中に入ってきたのかしら~なんて言ってる間にもう、辺り一面真っ白になっちゃってさ!」
「……気が付いたら海龍様の御前で……」
「父上までいるとはね」
「私は部屋で課題してたらいきなり目の前がまっ白になってしまって……大体外が霧がかってたのだって知らなかったし……困るわねぇ」
話を聞いてみるとこの子達が連れ出されたのは俺とほぼ同時刻でタイムラグがないように思えるが……
まぁここは神域だし深く考えるだけ頭がおかしくなるからやめておこう。
そんな合間にどうぞ、とあんこう娘たちがお茶や菓子を運んでくれるが、いつ交尾が~とか言い出さないか、冷や汗ものだ。
特に”隊長”と呼ばれてた娘はサイコパス臭がする。
と思ってたらその”隊長”と目が合うとヤツは暗い目をしながらニヤリと笑った。
……怖いよ……
それで隣を見ると龍神達はまだ言い合いを続けていた。
傍から見ててもこの二神は水と油っぽい。
……いや、空と海だがな。
◇◇◇
……結局、龍神様たちの話は決着がつかなかった。
「じゃあこの話はまた今度、ということで」
「天龍、そうやってあなたはまた問題を先送りにして!」
「ほら、龍人の子たちを見なよ、この子たちをいつまでもここに縛り付けておくのは可哀想だと思わないのかい?」
「別に私は彼等が納得してくれるまでここにいてもらっても構わないのですが?」
「……海龍、それは傲慢と言うものだよ。いい加減私も怒るよ? 彼等は私達とは時間の流れが違うんだ」
「……わかりました。……今回は妥協するといたしましょう……」
「よろしい、では君たちこっちにおいで。君たちは私が責任を持って船に帰してあげよう」
やっと帰してもらえるらしい。
天龍が手招きしている。
「さぁこっちへおいで君たち、うんうん、いい子だ。では目を閉じて……はい、開けてごらん」
言われるままにすると来た時みたいに辺りは一面真っ白になり、目の前には天龍がいた。
「子供たちは?」
「もう船に戻したよ。きっと今回の事は何も覚えていないだろう」
「そうなんですか?」
「ああ、海龍が不意打ちみたいなことをしてすまなかったね。許してやってくれ」
「はぁ……」
いや許さん。
俺にとっては何もいいことがなかった。
子供まで巻き込みやがって!
……まぁ無事帰してくれるならもう別にいいけどね。
「それでね、君だけ残したのは君に話しておきたいことがあったからだ」
「なんでしょう?」
「七龍神のことなんだが……」
◇◇◇
天龍は語る。
現在、黒龍と地龍はその力を罰として削がれている。
本人たちは人間の信仰心が足りない、と思っているがそうじゃない。
龍神の力の源は星を覆う、龍脈によるものだ。
その龍脈から力を供給されているのを今は制限されている状態なのだ。
「だってそうだろう? 私達は人間がこの星に誕生する遥か昔より存在するんだから。人間の信仰なんて関係ないんだよ」
例えば帝国は多くの龍脈が集まる地であり、特に龍之宮市などは太い龍脈が流れ、いくつもの龍脈が交差する場所でもあり、龍の眷属にとっては最高の地だと言える。
反対に黒龍の支配地であるガンドウ・ロゥワ大陸はただでさえ細い龍脈の地であり、現在の黒龍の状態では龍脈より力を得ることはほとんどできない状態だ。
海龍が提唱する序列を戻す、ということはこのリミッターを外す、ということになる。
そうしたらおのずと力関係が元に戻る、という訳だ。
だがやはり他の龍神の了承も得なくてはならないし、今回の件は完全に海龍のフライングだ。
そして、
このままでいい派
元の序列に戻したい派 ←海龍
変化を受け入れる派 ←天龍
どうでもいい派
なんでも反対派
面白ければなんでもいい派
あるがままに、と言う派
こんな感じで龍神が集まったところで何も決まらない。
だから海龍は黒竜と縁のある龍一に接触し、まずは黒竜の制限解除を目論んだ。
だが、少しやり方が強引過ぎたと言える。
◇◇◇
「だから私が介入させてもらったよ」
「なるほど……ありがとうございます。助かりました」
まったく感謝してもしきれない。
子供まで巻き込まれてあのまま海龍に流されて言いなりになっていたらどうなっていたことか。
「いやいや、それはいいんだけど、これから君は今度は地龍のいる土地に行く。十分気を付けるんだよ?」
「わかりました。会うことがなければいいんでが、今回もそうですが龍神様には別に俺が会いたくて会ってるわけではないんですよ? いつも向こうから勝手に……」
「ははは、わかってるよ。だから気を付けるんだよ、としか言えないんだけどね」
「天龍様の御力でなんとかなりませんか?」
「すまない、それは出来ないんだ」
「天龍様は上位の龍神様なんでしょう」
「ま、私らにも色々あるのさ、ほら、これを渡しておくよ」
と天龍は小さな玉を三つ俺に渡してくれた。
「これは海龍が君へと渡して欲しいと頼まれた宝玉なんだけど多分今回の詫びのつもりだろうね。本当は君が言うことを聞いてくれたら渡そうと用意してたんじゃないかな?」
「はぁ、綺麗な、宝玉ですね。これは何か謂れのあるものなんですか?」
「うん、これはすごいよ、これはね……」
◇◇◇
ぷぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん
「うわっ! びっくりした!!」
俺はサキの部屋で子供らとゲームをしてたはずだが……
休憩中に霧が濃くなってきたので甲板にでて、隣の船が見えないから龍眼にしたら、いきなりドアップで隣船が見えて、おまけになんだこの音はっ!?
「ダンナ、あれは霧笛ギョギョ」
通りがかりの魚人が教えてくれる
「霧笛?」
「霧が濃い時にお互いぶつからないように位置をあの音で教え合うんギョ」
「へぇ~」
その時向こうの船も霧笛を鳴らした。
その後あちこちからもタイミングをずらした霧笛が聞こえる。
「あれぇ~? 二の丸様、人魚とナニかいいことした?」
こちらもなぜか通りがかりの人魚のスタッフが俺の臭いを嗅いで聞いてくる。
「何言ってるんだ。そんなことするか」
「ふぅ~ん? なんか、この船にいない人魚の匂いがするような……」
「やめろよ」
「ん~、気のせいかな~、失礼しましたぁ~」
言うだけ言ってサッサと人魚は通り過ぎていった。
何だったんだ?
「あ、ここにいた」
「おぅ夜霧。どうした?」
「ミライ達が探してる。ゲームの続きをしようって」
「お~そうか、なにか旨そうなものは調達できたか?」
「ミライがゴッソリお菓子やケーキを雷電に運ばせてたよ」
「はは、困ったヤツだな」
「父様、その手に持ってるの、なに?」
「ん? なんだ、これ? こんなの持ってたっけ?」
「見せて?」
「ん、ああ」
差し出す夜霧の手に俺はいつの間にか持っていた綺麗な玉を渡す。
こんなの持ってる記憶がないんんだが?
「すごく綺麗、そして……コレ、なんか、スゴいよ……」
「なにが?」
「コレ、すごい、力のある玉だよ?」
いつもマイペースでやる気のなさそうな夜霧が真剣な目つきで三つの玉をしげしげと見ている。
珍しいな。
「欲しいんだったらやるよ」
俺はなにげなく言ったつもりだった。
すごく興味深そうだったし。
こんな夜霧の顔を見るのも久しぶりだしな。
喜ぶかと思ったら……
「いらない! いらない! こんなの……こんなの私の手に余る! 返す! 早く部屋に戻ろう!」
そう言うと玉をまた俺の手に強引に戻して夜霧は逃げるように部屋へと戻っていった。
俺は自分の手に戻された玉を見てみる。
「ん~やっぱり記憶にないんだよなぁ~」
ズボンのポケットに覚えのない玉をとりあえずしまい込んでおれは夜霧の後を追った。
やっと船に戻れた主人公
余談ですが魔大陸でサキが気分が悪くなってたのも龍脈の影響だったりします。




