第106話 全裸で土下座
……ぜんらだ
……どげざだ
……全裸土下座だ……
俺と海龍の座るテーブルの真横で全裸土下座が披露されている。
しかし、なんだなぁ~。
こういうのを見ると嗜虐的な気分になって頭とか踏んづけたりとか、……て気分にはとうていならんな。
後ろに回ってお尻にカンチョー! とかやってみたくはある。
そう言えば俺コイツらとヤったんだな。
乙姫はともかく、人魚とまで。
よくよく考えて見たらば龍関係者以外とヤるの初めてじゃないの?
……と気づいたら股間が反応した。
覚えてないのがもったいないな、と思ったら海龍様にジロリと睨まれた。
「今回はまこっとに、申し訳、ございませんでしたぁ~!!」
乙姫と人魚が海龍に怒られたのであろう。
人魚はわざわざ下半身を魚状から人型に二本脚を生やした状態に変更してまで青い顔をして土下座している。
「さて……お前達、この度の件は、なんとしたことだ?」
「あ、あの、乙姫様は悪くないんです、私達が、私達がちょっと子種が欲しかったもので、それで、人間のオスがいる、ということで……」
「そうなんです! 子供が欲しかったんです!」
「お、お前達……」
人魚が必死になって乙姫をかばっている。
麗しい友情だ。
乙姫も感激している。
「あれ? ……でも乙姫様は繁殖するためじゃなくて交尾しに来ただけだ、ておっしゃってたような……」
あんこう娘が空気読まない発言をぼそっとする。
海龍はその言葉が聞こえたのかそうじゃないかのか、人魚に言い渡す。
「ふむ、マリーナ、カリーナ、今回の罪は重い。ならば……罰としてお前達の一族を滅ぼすこととする……」
「ごめんなさい! ごめんなさい、海龍神様! 嘘です! 乙姫様に頼まれました!」
「そうです! そうです! 酒盛りしてた私達のとこにいきなりやって来て”人間のオスがいる! 交尾に協力してくれって! 私たちは悪くないです!」
「……お前たちぃ!」
……もろい友情だったな。
「乙姫、なにか申し開きはあるか?」
「ももも、申し訳、ごごご、ご、ございません。お母さま」
「なぜ、こんなことを?」
「わ、私は長い事、魚介類たちと暮らしていて、その、……皆が番で繁殖しているのに、その……私だけ、相手がいない……と、言いますか、その……人魚の人間のオスとの交尾の話を……その気持ちいいと、その、だから……」
「ヤってみたかったと?」
「は、はい」
「いたしてみてどうだった?」
「はい! 最初は……その、夢中で良くわからなかったんですが……その段々気持ち良くなってしまって、人魚たちもノリノリだし、人間が腰を振り出してからは、もう、その、制御できなくなってしまって、気持ち良すぎて……」
「……もう良い、三人とも下がれ、追って沙汰を言い渡す」
海龍が言うと三人は心底ホッとした顔をする。
「ちょっと待てよ! まだ俺の言い分が!」
「なんだ、気にいらんのか? ではマリーナ」
「はい?」
マリーナと呼ばれた人魚が海龍に向かって顔を向けた瞬間、ポロリとその頭が落ちた。
「ま、マリーナ!」
「いやぁぁぁぁ!!」
「では龍一、謝罪の印としてその人魚の死体をやろう。人魚の肉食わば不老不死となる。陸では金貨何千枚もの価値があると言うではないか」
「いや! ちょっと、そういうことではなく!」
「なんじゃ、一体じゃ不足か? カリーナ」
「海龍神様、やめっ」
て、と言い終わらぬうちにカリーナの首も落ちた。
乙姫はそれをもう物も言わず黙って見ている。
「二体も持ち帰れば十分であろう?」
「だから! そういうことじゃないんです! 海龍様!」
「やれやれ、人とはなんと欲深な事よ 乙姫、お前も首を差し出すが良い」
「やめて下さい! 海龍様!」
ついに俺は叫んでしまった。
こんな残虐なことを見せられて気分は最悪だ。
しかも覚えてはないが自分と体を重ねた相手だ。
「ふむ、ならば龍一、なんとする?」
「私は別に人魚の死体なんか欲しくはありません!」
「そうか? では?」
「確かに酔いつぶれたところを襲われたらしい、ですが後半は私も積極的……覚えてませんが……らしいですし、もう許してあげて……ください」
「そうか、ならば元に戻そう」
海龍がそう言うと途端に人魚の首が元に戻っていた。
二人とも青白い顔をして、ハァハァと息遣いが荒い。
……そりゃ、そうだろうなぁ……
余談だが人魚の肉を食べると不老不死になる、というのは俺も聞いたことがある。
龍人やエルフなどの長命種はそうでもないんだが、人種や魔人などの王侯貴族や金持ちなどが権力や金に任せて乱獲したせいで数が減っていると言う。
それでこの世界に国連などはないが、各国の取り決めで人魚保護が叫ばれている。
そのような世情で裏の世界では天井知らずの金額で人魚の肉が取引されているとか……。
龍帝国では人魚保護の一環で俺達が出航した港町やその他海岸線に人魚や水棲人種などを住める環境を整えている。
人魚に限って言えば、娼館や呑み屋などで働く者も多いが意外と普通の仕事をしてる者も少なくない。
今回の船団でもある程度の人数が船のスタッフとして働いている。
「よし、ではお前達は下がるが良い」
三人は無言で青白い顔をしながらコクコクと頷いてピンクの海へとそそくさと帰って行った。
「この度は私のいぬ間にあの者どもが失礼をした。詫びるとする」
「はぁ、でも……」
「いつまでもな、あの者らに関わっておれぬしな、それに細かいことを言い出したら、なぜここに酒があったのか? と言う話もしなくてはならぬが?」
と、海龍が酒瓶を指差す。
確かにそれを言われると、困るな。
「はい! それは人間さんに頼まれて私達が運びました!」
「……人間、重かったぞ」
「もぉ~、大変だったんだからね!」
「けど皆で運んでちょっと楽しかったであります!」
「うふふ、宝探しみたいでしたねぇ~」
いつの間にか戻って来た他のあんこう娘も加わって盛大に空気を読まずに暴露してくれる。
「ふぅ、……まあそれはどうでも良い。ちょっと中途半端にあの者らを帰したのはな、これからの話に彼女らがいたら、お前も気まずかろうと思ったからだ」
「え?」
「いいぞ、運んで来い」
海龍がピンクの海に向かって一声放った。
するとちょっと離れた海面から二匹の亀っぽい頭が浮上した。
それらが平行にこちらへ移動、近づいてくる。
良く見ると口にロープ的なものを咥えていて亀の後ろからやたらデっカイ、ホタテっぽい貝が浮上し、曳航されてきた。
なんだ、なんだ?
と思っているうちに亀は上陸し、ホタテを引き上げる。
そのホタテがパカっと開き、中から人が出てきた。
「着いたのかしら?」
「うわっ! 姉さま、空がピンクよ! ピンク!」
「はぁ~、長かった」
「父上?」
「スイ、夜霧、ミライ、雷電……お前達……」
中から出てきたのは俺の子供たちだった。
◇◇◇
「私は……お母さまの上位の龍神様であらせられる海龍様の御願いをお断りする理由はございません。ですが現在大学の課題が忙しいのでその合間にお手伝いする、という形でよろしければ、ですが」
とスイの意見だ。
「私は母様の為になるのならもちろん海龍様に協力したい」
と夜霧。
「龍神様の御願いを断るわけないでしょう! もちろん引き受けるわよ!」
とミライ。
「僕は様子見ですね。ですがミライ姉が危なっかしい時は止めます」
と雷電。
「いやぁ~青いねぇ~君の子たち。もう少し考えて行動した方がいいよ?」
と天龍。
「さて、龍一。そちらの意見は?」
最後に海龍が尋ねる。
「ずるいぞ! 子供たちを呼ぶなんて! 卑怯じゃないか!」
「そうだよ、海龍。まずは龍一君と話がついてから、じゃないのかい?」
「天龍、なぜ、あなたがここにいるのかはさておき、この子たちにも関係ある話でもあるからです」
「ならばまず、先に龍神を集めたらどうだい? 龍人の子たちを集めて始めるるのはフェアじゃない」
「そんなことが出来るわけないでしょう? あなたの配下の龍神だけでも千を超えるのに」
「全ての龍神を集めろ、と言っているんじゃない。せめて光龍様、私と君、後は七龍神は必要だ。それ以外は不要だね」
「それで何度も話が決裂してるからこうして私が……」
「そもそも序列を元に戻そうと言うのがばからしいことさ、常に状況は変化するんだ。それでいいじゃないか」
龍神様たちの議論? 口論? は終わりそうもなかった。
昨日は忙しすぎて公開できませんでした。
明日はどうかなぁ~……




