表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界行ったら龍姫が俺の嫁!?  作者: じぐざぐ
第弐部 海へ
101/156

第100話 龍帝国海軍の憂鬱

龍帝国には十個の軍団がある。

もともと七つしかなかったところをエルドビー共和国、遠征駐留軍のため新たに三つの軍団を用意し、運営している。

しかもその駐留軍はほぼ龍人以外の亜人で編成されているのだ。

他の軍団が龍人の割合が六割~七割で編成されているのを比べてみても帝国内では異質の軍団と言えよう。

その上人数も他の軍団と比べて三倍弱の多さだ。

つまり三万の軍人を渡海させなくてなならないのでけっこうな一大事業だ。

軍船だけでなく、一般の商船も付いて行くので三度に渡り、全てを運ぶことになる。

俺達はその第一陣の船団に入る。


航路としてはブラウ大陸を北へ移動し、ガンドウ・ロゥワ大陸を陸沿いにさらに西のルートで北上。

大陸北より西へ移動しデライア大陸へ。

そこから陸沿いに南西に移動。

ず~~~~と行けばやがてエルドビー共和国に到着。

行きに一月半。

海流の関係か、帰りは一月だと言う。


「ま、以上がですな、共和国へのですな、行き方、ということになりますな」


説明してくれたのは今回の船団の司令官、苅野九条中将だ。

俺たちは皇族専用の船で行くのでその船長、他にもあれやこれやと色んな人の挨拶を受ける。


「ふ~まいったな、覚えきれないよ」

「今後一年お世話になる方々ですのでキチンとメモをとり、しっかりと覚えてくださいね」


レイラとは最近、視察関係の話であれやこれや打ち合わせが多くなる。

でも俺としてはそればっかりに関わるわけにもいかないんんだが、ウチのご正妻はかなり入れ込んでいらっしゃるご様子。


「リョウコ様はお連れになった方がよろしいでしょう」

「なんで?」

「来たばかりだと言うのにいきなり一年もほったらかしは寂しいでしょう?」


と、人選もほとんどレイラが決めてしまったので俺はあまり悩む必要がなかった。

このまんま龍帝になってもレイラが全部なんでも決めてやってくれるといいなぁ~などと考えてしまうな。


俺関係の人選の内訳は以下の通りだ


側室

 レイカ・リョウコ

※シノエも候補に挙がったが夏・冬の大型イベントに行けないとかあり得ない! とハナっからいく気はなかった。


子供

 スイ・夜霧・ミライ・雷電


近衛 十人

※これは最低三十はなくては他国で要人警護なんかできない、困ると苦情がきたらしいが結局、現地の駐留軍から人数を手配し、近衛の配下にして賄うこととなった。


お側衆 五人

 いつもの三バカ・妹サムライ・魔女先生


侍従・侍女 十五人


総勢三十六人


本当は俺とレイラを抜かし、上限三十人だったのだが身内が思ったより多くなったので侍従・侍女が増えてしまった。

俺と雷電以外は皆女だから衣装だけでもけっこうな数になるそうな。



◇◇◇


「わっがきみ、我が君ぃ~」


後宮にあるリョウコの居室に行くと飛びついてきた。


「私も外国の視察旅行にお連れ下さる、と言うのは本当なのでょうか!?」


甘えながら抱きついてくる。最初の頃は手を繋ぐのも恥ずかしがっていたのにぁ~。


「ああ、昨日本決まりになったぞ。ちゃんと用意しておけよ」

「はい! この旅行中に絶対! 御子を宿してみせますわ!」

「いや、そういう旅行とかじゃなく……仕事で行くんだぜ?」

「わかっておりますわ! でも……その……そういった気分におなりになることもございますでしょう? ……ほら……今だって……」

「今は……そういう気分におなりになりにきたんだよ!」

「きゃっ!」


そう言って俺はリョウコを抱えベッドへと突入したのであった。




で、だ。




出発一か月前になり、リョウコは突然


「我が君、やっぱり今回のご視察、私、ご同行いたしませんわ」


と言い出した。


「どうした? なにか気に入らないことでもあったのか? 足りない物があるなら俺のお側衆に用意させるぞ?」


と言う俺の提案にリョウコは静かにほほ笑みながら首を横に振る。


「我が君、そう言うことではございませんわ。我が君と私の龍が……」


リョウコが嬉しそうに自分のお腹を両手でさする。


「リョウコ……お前の、お腹に?」

「……はい。喜んで頂けるとうれしいですわ」

「もちろん! うれしいよ! ……けど出産に間に合わない、かもな……」

「はいですわ……残念ですが、でも、この子の為にも、立派にお役目を果たして来てくださいませ」

「うん、そうだな、うん、うん」


もうすでに俺には多くの子があるが、それでも新しい生命の誕生は嬉しいものだ。

早く皆に知らせなくちゃな!


……あ~でも子供たちは微妙な顔をされそうだな。


「私! お姉さまがたのように立派な我が君の御子を出産してごらんにみせますわ! そしてすぐに第二子も! お~ほっほっほ」

「はっ! リョウコ様なら必ずや!」


リョウコが羽根付き扇子を振り回し高笑いしているところをリョウコ付きの侍女たちが扇子を振って周りで囲っておられる。


おっと俺のお若い側室さんは絶好調らしい。


 


◇◇◇




サキの息子、総司は龍之宮学園の寮に入り生活している。

同じく妹のセナもドラゴニア女学院の寮で生活している。

これはサキの方針で


「私の幼少期はもっと過酷だった」


と言われると言い返せない。

そもそも彼女の子らは他の御三家、十大公爵家と違い、龍乃影家の養子になる、という制約がない。

いや、将来本人たちが望むんであればそれでもいいが。


使節団の話もサキは最初興味はなさそうだった。

理由は自分は一度(あるじ)と生死を掛けた大冒険をしてる(すごく誇らしげに)から、他の人にも、せめて一緒の旅行を経験して欲しい、という殊勝な理由だった。

そしてリョウコの不参加の話が広まった時、夜霧が血相変えてサキのとこに来た。


「お願いだからサキ母様も一緒に来て!」


夜霧が珍しくわがままを言う。

これをなんとサキが一瞬考え、了承した。

寮入りしてるとは言え、総司もセナも定期的に後宮に帰ってきている、というのにだ。


「私や(あるじ)に一年会えなくなってあの子たちもさらに成長するはず。ふふふ」


と獅子は我が子を千尋の谷に……てやつだな、と思ったが一つ疑問だ。


「夜霧には甘いよな」

「彼女は龍神様の子、私が育てるなんて恐れ多い。夜霧は特別な子」


ん~~~、これでよく総司もセナも夜霧に嫉妬しないな、と思うがそう言えば夜霧はあの子たちとも双子と一緒に良く遊んでいたな、と思い返す。


そうそう、レイラ様大好きタマキさんだが彼女はこのドタバタの最中実家へ帰った。

タマキの子は二人とも彼女の兄の養子になったがその兄嫁からやっぱりこっちに来て欲しいと懇願されたかららしい。

その兄嫁に二人目の子ができたらしいのだ。

色々事情もあるだろうし、それぞれの思惑もあるだろうが……。


「まぁ、子育てがひと段落したらまた戻ってきてもいいかな?」


後宮を出る時のタマキは少し寂しそうに笑ってそう言った。




◇◇◇



~龍之河市 軍港~


「え~と青いのが、嵐生丸、横縞のが星流丸、ちょっと黒っぽいのが白線丸、一番大きいのが特焔丸……」

「夜霧姉さま、なんで黒いのに白線丸なのよ?」

「あ~俺、海竜研修で見学したことある。ホラ、あそこに白線が三本入ってる」

「え~どこよ? わかんない」

「ほら、背中に……」

「あ~なぁるほどね、白い線があるわねぇ」


~龍帝国海軍 第一海竜群 甲一組所属 佐倉ノリコ中佐~


彼女は船団護衛の海竜見学がしたいと申し出た皇子・皇女を案内するよう命を受けた。

第一陣の船団出航が間近に迫っていて彼女は多忙を極めている真っ最中だったが上の命令には逆らえない。

海竜も本当は出航まで海底で休ませてあげたいところななのにわざわざ海面に呼び出して回流してもらっている。

軍の海竜だ。

見世物ではない。

そう思いつつも、いや軍事展覧会の時は曲芸もさせるし、と思い直す。


……軍広報の女の子を連れてくれば良かった。


そう思いながらも笑顔を張り付かせて皇室の方々に対応せねばならない。

宮仕えのつらいところよ。


さて、そんな彼女たちの後ろでは実に沢山の水夫たちが荷を運んだり点検したりと実に忙しそうに立ちまわっている。

その人種も様々で龍之宮城では見かけない、水辺に住む者達が多い。


魚人 体が人で頭が魚。その種類は実に様々だ。

人魚 普段はまるっきり人型だがいざという時は人魚の形態になる。

その他、蛙っぽいのやらイルカやサメっぽいのカニ・タコ・イカっぽいのまでいて水棲生物×人間の見本市のようでもあった。


~龍帝国 皇室専用艦・焔郭~


そんな連中が忙しなく出たり入ったりしてるのが現在では旧式となってしまったが当時、帝国の金の限りを尽くして贅沢に建造された皇室専用艦・焔郭(えんかく)だ。

その船上で船長の島崎哲也少将は焦っていた。

焔郭は普段まったく使用されない船だ。

それこそ軍事展覧会の時に港に停泊しているところを一般人が近寄って見学する、くらいが近年の大きな仕事となっていて陸揚げされてる時間の方が長い。

もちろん突然のいざ航海、という場面に備えて点検はされているのだが試運転に数時間、港の外を回航する程度で本格的な長丁場の航海はこの百年経験していない。

実際今回本拠地の龍之路市軍港より北上し龍之川市軍港に移動しただけで実に多くの不具合が見つかった。

全てを完全にするためには数か月を要すると専門家に言われたがそれを現在突貫で補修作業中である。


「あともう数日しかないんだぞ! 延期なんんてことは絶対にあってはならない!」

「閣下、落ち着いて下さい。航行中にも修繕はできます。まずは出航にあたり最低限過不足のない程度にまでは仕上がっています」

「閣下、いっそのこと皇族の方々には旗艦の焔弾(えんだん)にご乗船あそばれては……」

「冗談じゃない! そんな恥さらしができるか! 俺も貴様らも二度と船には乗れず、退官まで閑職の陸上勤務に回されるぞ! それがいやなら死ぬ気で直せ!」



~龍帝国海軍 第一艦隊 旗艦焔弾(えんだん)


こちらの船上でも艦隊司令官と側近がやきもきしていた。


「あれは出航予定に間に合うのか?」

「はっ司令、昼夜突貫で作業してるようであります」

「無理でした、では困るんだぞ。海軍の恥を晒すことになる」

「それよりも、第八軍団輸送の件なのですが、よろしいでしょうか?」

「なにか問題が?」

「はっ、第一陣は問題はありませんが第二陣に使用予定の輸送船の数が足りないと報告が上がっております」

「ばかな! この計画は一年前から準備していたはずだぞ! どうなってる! 先月の報告会では不備はなかったはずだ!」

「実は元老院より今回皇室関係の件で向こうに輸送する物や人物を大量に追加されてそちらに輸送船が回された、と報告が上がっております」

「なにをっ! これは第八軍団を輸送するための船団なのだぞ! 元老院め! 何を考えてる! それで……海軍司令部はなんと?」

「はっ現在、調整中と、だけ……」

「第二陣の艦隊司令は湯浅中将だな? あいつの手腕にかけるしかあるまい……もう出航してしまうわしらには、なにもできん」




◇◇◇



もちろんそんな海軍のドタバタ劇は俺の耳には入ってこず、このことを知ったのはずいぶん後のことだ。

皇室専用艦・焔郭に荷物を入れていた俺達はけっこう舞い上がっていた。

煌びやかな船内、豪華な客室、特に俺達夫婦の特別貴賓室の誂えはなかなかのものだったし、側室達や子供たちの部屋も見劣りするものではなく皆はしゃいでいた。


「お~、こっちもいいなぁ~、ちょっと造りが違うな」


レイカの部屋を覗きにきたら早速ヤツはジャージ姿で寝っ転がって本を読んでいた。


「また、すごい大量の本を持ち込んだものだな」

「ふふふ、我が半身、帰りは向こうでも本を購入するからまだ増える予定、と宣言するよ」

「お前なぁ~、じゃあ少しこの本は置いていけよ」

「だが断る! ……実は我が姉に地龍様の関係した書籍を見つけたら購入するように言いつけられたのさ」

「そうか、それは大変だな。今日は宿に戻るんだからちゃんと着替えておけよ」

「ふふふ、我が半身、我がジャージ、脱がせるものなら脱がしてみるといい!」

「はいはい、そういうのは夜な、暗くなる前には帰るんだからな」

「……ふふ、さすが我が半身。我のこの甘美なる誘惑を退けるとは、まだその時ではない、ということか、ふふふ」


長くなりそうなので俺は他の部屋も確認しに行く。

サキの部屋には夜霧がいた。


「お前たちは一緒の部屋にするのか?」

(あるじ)、私は一人がいいんだけど……」

「……父様、私、サキ母様と一緒がいい!」

「どうした、夜霧? 珍しくずいぶん甘えん坊だな」

「……」

「ふぅ、しょうがないな、サキ、すまんが頼まれてくれないか?」

「……わかった、でもちゃんと夜霧の部屋も用意して。時々一人にしてくれたら、許す」

「本当? サキ母様?」

「うん」

「やった!」

「お前達も暗くなる前には宿に戻るんだからな、用意しとけよ?」


その他、ミライはスイと相室にしたらしい。

雷電は個室だった。


「いいのか? ミライと一緒じゃなくて?」

「父上、自分はもう初等部六年です。いつまでも姉と一緒、というわけにもいかない」

「そうか? お前たちは仲がいいからてっきり……」

「姉上がそそかっしいから目を離せないだけです。仲がいいも悪いもありません」

「そ、そうか。もう少しで宿に戻るからな、荷ほどきはほどほどに」

「はい」


どぉ~も我が子だが雷電は苦手だ。

なんとかサシでゆっくり話したいと思っているが、いざ二人きりだと間がもたない。

他も男子は成長と共に難しくなるな。

特に最近の龍邦は……。


「父上」


と考えながら廊下を歩いていたらスイに声を掛けられた。


「おう、荷運びは済んだのか?」

「まぁ大体は……」


俺たちはなんとなく船内から甲板に向かって歩きながら話す。


「大学を休学することになって気が重いわ」

「すまんな、本当に申し訳ないと思っている」

「そう、何回も謝らないで。仕方のないことなのでしょう? ちょっとグチりたかっただけ」

「そうか、すまんな……」

「だから謝らないでってば! ……ふふ、でもね、ちょっと楽しみでもあるのよ? 地龍様がいらっしゃるんでしょう? どんなところかしら?」

「さぁな、本や資料で知った気になっていても現地へ行くと意外と発見が多いからな」

「そうなの?」

「そうだ。結局本はその書いた人の感性だからな。父さんもガンドウ・ロゥワ大陸に行った時は大いに驚いたよ」

「ふうん」


甲板に出ると潮風が体に当たる。

夜霧やミライ達が見学していた海竜が遠くで弧を描いている。

海鳥が騒がしい。

港はまだまだ水夫たちが行ったり来たり忙しそうだ。

しばらくそんな風景を二人で眺めていたら入江の端の灯台が光を灯しはじめた。


「……いつか母様の大陸にも行きたいな……」


スイがポツリと漏らす。


「行けるさ、おスイ様ならな! 絶対! さ、明日には出航だ。皆を呼んで来い。宿に帰ろう」

「うん、そうだね」


俺たちは家族を呼びに船内に戻った。

ここまでお読みくださりありがとうございます。

ついに龍姫と俺の物語も100話を迎えることができました。

これも読んでくださる方がいらっしゃるおかげであります。


さて、100話にして五千文字を超え、六千文字に迫る長い話になってしまいました(普段は二千~三千文字)


ずいぶん色々と詰め込んだ話になってしまい、申し訳なく思います。

本当はそれぞれ独立したエピソードになる予定でしたが……なんとか100話までには船団を出航させたい、との想いからでちょっとちぐはぐだったかもしれません。

しかもまだ出航してないし。

これも一重に作者の力量不足なのでしょう。

反省しつつ精進したいと思います。


次回はいよいよ龍帝国船団が港よりイカリを上げます!

こうご期待!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ