<第四話・二度目の出征>
でも、そんなささやかな幸せは四年も続きませんでした。昭和一八年の春、夫に二度目の赤紙が届きました。
夫も私も、さすがにショックは大きかったです。最初の兵役を入れると二度行っていますから、もう三度目はないと思っていたんです。
役場の方が帰った後、また姑に当たり散らされました。
「だから早く子供を作れって言ったんだよ。あんたが産まないから孝一に赤紙が来たんじゃないか。なんで孝一ばっかり」
私も主人も無言で耐えているだけでした。
村には、同じ甲種合格でも一度も召集されていない方もいらしたのに、どうして夫が三度も召集されなくてはならないのか。
戦後、いろんな方に伺った話だと、三度召集された方も結構な数いらしたそうですから仕方がないのかもしれません。これも運というものなのでしょうか。どういった基準で召集されていたのか、今でもわかりません。
夜になって主人が布団の中で私を抱きしめ、泣くんです。
「俺、千代と離れたくない。このまま千代と暮らしたいよう」
滅多なことでは弱音を吐かない夫でしたから、きっと先の召集で行った戦地はさぞ辛かったに違いありません。こんな優しい夫を戦地に送り出すなんて、身が張り裂けそうでした。私は、ただ涙です。
「孝一さん、逃げましょ。どこか遠く、誰も知らない土地へ、二人きりで……」
つい洩らした言葉に、夫は我を取り戻しました。
「バカなこと言うんじゃない。できるわけないだろ」
もちろん私だって解っております。たとえ逃げてもすぐ見つかります。見つかったら夫は銃殺です。私や家族も非国民とつまはじきにされましょう。
「だって……」
泣きじゃくる私を、夫は優しくなだめました。
「大丈夫だよ。すぐに帰ってくるから。いい?二度と、そんなこと口にしちゃいけないよ」
夫は無理して涙目で微笑みを作ろうとしました。私はそんな夫に真剣な顔で言いました。
「絶対、早く帰ってきて。約束よ」




