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26−1 「表裏一体」

長すぎたので、4分割にしました。

出来る限り毎日投稿したいところです。

よろしくお願いします。

 ドルチェに案内されて大人しくついていくリュートとアギト、そしてザナハ。


 以前この建物にいた時は、地下か個室にいたのがほとんどだ。

 その為、どんな部屋がどれだけあるのかまでは、二人は案内されたことがなかった。

 ザナハがこれだけ『忙しい』とグチる位なのだから、今回もこの屋敷の中を探検することは出来ないだろうと覚悟する。


 二人とも、これほど本格的な洋館に来たことはなかった。

 生まれて初めてだったので、今廊下を歩いているだけでも目に映る何もかもが珍しい。

 回りをきょろきょろと眺めながら、物見遊山のように歩いていた。


 すると、ドルチェが観音開きの扉の前まで来て、その扉に手をかけて開ける。

 ぎぎぃぃっと鈍い音がして、部屋の中を覗く前に二人は、ここがどんな部屋だか想像がついた。


 中からは、金属音やら掛け声やら。

 色んな騒がしい騒音が耳に入ってきたので、おそらくここはさっきドルチェが言っていた訓練所なのだと察する。


 扉を開けて中に入ると、かなり広い部屋で驚いた。

 訓練する位だから当然なのだが、学校の体育館位の面積はあるんじゃないかと思った。

 中にいる兵士は、大体五十人位はいるだろうか?

 各グループに分かれて、様々な訓練を行なっているようだ。


 剣術の稽古をするグループ。

 ひたすら筋トレをするグループ。

 戦術指南を受けているグループ。

 武器の手入れをするグループ……。


 おそらく彼らは新米兵士なのだろう。

 そしてリュート達が魔術の指南を受けているグループの方に目をやると、全員がオルフェの方を向いて真剣に話を聞いていた。


 長い金髪のロングヘアーを、さらりと片手で払う仕草がなんともイケメンだ。

 オートスマイル全開で、目は相変わらず笑っていなかった。

 オルフェの右手でちらちらと小さな炎が踊っているのをアギトが見つけて、目がキラキラしていたのは言うまでもない。


 ドルチェがまっすぐとオルフェの方へ向かって行く。

 すぐにオルフェが気付き、そして授業を受けていた兵士に向かって『自習をしていてください』とでも言ったのだろう、全員がすっと立ち上がり各自がそれぞれのやり方で魔術の訓練を始めていた。


 オルフェがすたすたとこちらの方へ歩いて来て、右手で軽く挨拶した。


「いやぁお二人とも、お久しぶりですね」


 などとノンキに言い放つ。

 そして案の定、その態度に少し不満げなアギトに気付いたリュートが、裾を引っ張って制止する。


「出迎えに行けず申し訳ありませんでした。何せここは本部ではないので、デスクワークやら雑務やら兵士の教育やら。色々と立てこんでいましてね」


 言葉だけ聞けば申し訳なさであふれているのに、それが伝わらないのはなぜだろう……と首を傾げる二人。


「ご不満でしょうが、今少し我慢していただけますか? それでは早速、場所を変えて本題に行こうと思うのですが。お二人共、お疲れではないですか?」


 オルフェの建前全開な気遣いに、二人は平気だと答える。

 本当のところ、リュートは少し疲れていた。

 異世界レムグラントへ行く方法が、廃工場から飛び降りること……。

 それだけでもかなり心身共に疲弊したものだが、これまで暮らしていた場所とは全く異なる環境の変化に、リュートはついて行くだけで精一杯だった。

 元気を保っていられたのは、ひとえにアギトの存在のおかげ。

 有り余るほどのエネルギーやテンション、それを隣で見ていたら自然と自分も元気になれる。


 チラリと、リュートはザナハの方へ視線を向けた。

 この少女も驚くほどに元気で、明るくて、見ているだけで疲れが吹き飛ぶような気持ちになる。


(僕も、二人のように……。誰かに元気を与えられるような人間になれれば……)


 その為にも、リュートは異世界での暮らしに少しでも早く慣れなければいけないと、一人意気込んだ。

完結済みの作品の改稿版ということで、どうぞ書籍化実現の為に応援よろしくお願いします。

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