22 「嘘は嘘」
そもそも無印版を改稿編集すればいいだけの話ですが、新規読者様をお迎え出来たらな、という邪な気持ちから生まれた改稿版でもあります。
どうぞ。
あの後、アギト達は警察署を出てリュートの家へと帰って行った。
仮にも行方不明だったアギト達、一人でマンションに帰すのは心配だとリュートの両親が一緒においでと言ってくれた。
そして、いつも気丈に振舞っていたアギトも、今回ばかりはさすがに二人の言葉に従った。
明日は学校を休んだ方がいいと言われたが、アギトは学校には行くと答えた。
これ以上甘えたらもっと多くのものを望んでしまいそうで、それがイヤだったのかもしれなかった。
リュートもアギトが行くならと、自分も学校に行くと言った。
そして二人はやっと安心して疲れを癒すため、深い眠りについた。
翌日、月曜日。二人はいつものように学校に登校した。
朝早く起きてアギトのマンションへ教科書類を取りに行って、それから学校へと向かった。
「なんかすげぇ世話んなっちまったな、おばさん達には!!」
泣きはらした目でアギトが、いつもの満面の笑顔でリュートに礼を言った。
「気にすることなんてないってお母さんも言ってたんだし、もういいよ。言ってたでしょ、僕達もう家族なんだしさ!!」
いつもの笑顔、何ひとつ変わりない日常に戻りつつあった。
走って学校まで向かって、教室へと。
「……!!」
教室のドアを開けようとした時、ガキ大将達と鉢合わせた。
いつものガン飛ばしをしようかと、アギトがはらした目で睨みつけようとした矢先だった。
「ぎゃああっ!!」
突然のガキ大将の悲鳴に、二人はビックリして後ろに飛び退いた。
「な……っ、いきなり何だよっ!!」
「お前達、どうやって戻って来た……っ!? あの時、お前達は光になって消えたはずだ……っ、警察にもそう言ったのに!!」
あぁ、やっぱり警察にバカ正直に本当のことを話したのはこいつらだったんだと、呆れた視線になった。でもあの光景を見たってことは、そりゃこういう反応しても当然だろうと少しだけ同情した。
完全に腰を抜かしているガキ大将をどうしようか困っていたら、アギトがゆっくりガキ大将の方へ近付いて耳打ちした。
「あのことはこれ以上誰にも言わない方がいいぜ? でないとオレ達の仲間に、お前もあっちの世界へ誘拐するように進言するかもしれねぇから」
そう聞いてガキ大将の顔が青ざめて「ひっ!!」と小さい悲鳴を上げた。
「あ、あとそれから。もうオレ達に変なちょっかいかけない方が、お前のためかもな~」
後ろ頭で両手を組んで、いたずらっぽくアギトがガキ大将に脅しをかけた。
リュートはそれを見て、あぁ……その手があったか、と思った。
ガキ大将はあの事件以来、完全に自分達が化け物であると認識したーーいや、確信しきっている。
それならそれを利用して、青い髪をした仲間がまだ他にもたくさんいるように見せかけて、同じように連れて行くかもしれないと言っておけばそれを信じてしまって、二人には手を出さなくなるかもしれない。
勿論、あの光景を目撃した人間でなければ、こんなこと通用するはずもない。
当の本人である自分達にだって、今でも夢だったのではないかと思うような出来事だったのだから。
それだけ現実離れしていて、信じがたい体験だった。
まさかこことは全く異なる『異世界』へ行ってたなんて、誰が信じるだろう。
ガキ大将は「ひぃぃっ!!」と必死で起き上がって、教室とは反対方向へと走って逃げてしまった。
「ありゃりゃ、ちっとおどかしすぎたかな?」
「でもいいんじゃない?ガキ大将みたいな悪ガキにはいい薬だよ」
無責任にそう言って、笑いながら教室へと戻って行った。
教室に入ったら、クラスのほとんどの生徒に囲まれて、アギト達の行方不明事件が話題になっていた。
「怖かった?」
「犯人はどんなヤツだった?」
など、アギト達が行方不明となって捜索願が出された時、クラス全員に連絡網が回って色々事情を聞かれた生徒もいたようだった。
まさか異世界に行ってたなんて言えるはずもなかったから、警察の取り調べの時に言っていた証言を元に、また作り話をこんなところでする羽目になるとは、二人とも思っていなかった。
一生懸命取り繕うのに精一杯で、たまにつじつまが合わなくなることもあった。
しかしそこは、事件による恐怖心から記憶障害が残っていてよく思い出せないと、口裏を何とか合わせた。
やがて授業が始まり、ガキ大将は担任と共に教室に現れた。
どうやら担任に助けを求めて、そのまま軽く受け流されて教室に強制的に連れ戻されたようだ。
アギト達の方を見てビクビクしながら、自分の席に戻って行く。
授業が一通り終わると、担任から個人的に呼ばれて、事件について軽く話を聞かれて、これから十分気をつけるようにという言葉をもらった。
誘拐なんてされてないから、大袈裟なと感じていたが、一応教師として心配してくれていたことには少なからず感謝はしておいて、二人とも返事をして話は終わった。
変わらず保護者各位への案内の連絡が全員に配られたり、しばらく登下校は保護者や教師が付き添うことになったり、思っていたよりも大騒ぎになっていたので、ほんの少しだけ良心が痛んだ。
でも他に手段がなかったので、仕方ないとアギトはあっさり気にしないようにリュートに言った。
それよりも、もっと大きな問題に直面していることを、二人だけの時に話していた。
休み時間とか、体育の授業での合間などに。
「問題はだな、これからどうやって言い訳作って毎週レムグランドに行くか、だ!!」
それを考えていなかった。
しかも毎週、金曜の夕方(学校が終わった後)から、日曜の夕方までは向こうの世界に行くと決めたのは他の誰でもない、リュート自身であったのに。
「そっか、学校とか町全体がこんな警戒態勢を取っていたら外出なんてもってのほかだよね。よっぽどの言い訳を作らない限り、夕方以降は家から出ることも許されないかもしれない。特に僕達は」
「あ~、オルフェの野郎に『身代わりロボット』とか何かないのか、聞いとけばよかったぜ!!」
イスに寄りかかって、限界近くまで斜めに傾けて危なっかしい姿勢で伸びをする。
「でも金曜の学校にいる間までに、その理由を考えておかなきゃ約束を果たせないし」
机に頭を抱えるようにうつむいて、何かいい方法がないものか頭をひねった。
「せめてあともう一人、協力者がいれば何とかならないこともないんだけどな」
「あと一人って?」と、リュートが聞く。
「それも大人。例1として、誰か大人一人協力者がいて休みの間はその人に勉強を見てもらう……という理由で泊まり込みをしてるって思わせる。そうすれば保護者代わりがいるとあって、おばさん達も了解するかもしれねぇだろ?」
人差し指を立てて説明するアギトだが、リュートはあっさり否定する。
「でも肝心のその大人がいないんじゃ話にならないよね。しかも協力してもらうにも、レムグランドのことを信じてくれるような大人でなきゃ。誰が信じると思う?」
「だから、他の方法を考えてるんじゃねぇか」
ぶすっとした顔になって、アギトが文句をたれながら、また考え込む。
それから二人だけで話せる時は相談し合いながら、授業中は考え込んで何か思いついたらメモに書いて提案してみるなど。学校にいる間はそうやって、レムグランドに行ってる間の理由をずっと考えていた。
学校が終わっても、下校中ずっとその話になった。
アギトのマンションには両親がいないということもあって、まずは二人ともリュートの家へ帰った。
リュートの家で話しあいをする暇はなく、おじさんが帰ってすぐアギトのマンションへ着替えや日常生活に必要なものを取りに行って、しばらく厄介になることになった。
リュートの家では弟や妹達がたくさんいて、リュートと話し合いどころではなかった。
ずっと子供たちの面倒を見るか、家事手伝いをしているか、おじさん達の目の前でこんな話は出来ないと、食卓を囲んでる間はみんなで話せる話題にして、とにかく異世界に関しての話は全くといっていい程、出来なかった。
結局何もアイディアが浮かぶこともなく、その日一日は終了してしまった。
次の日の火曜日も、昨日と全く同じだった。
話せる時に相談するものの、全くいいアイディアが浮かばずに、すぐまた下校時間になって家に帰る。
あれ以来、門限まで作られてしまって、早く家に帰宅しなければいけなくなっていた。
このままじゃヤバイと、二人とも少なからず焦っていた。
こんな調子だったら金曜の夕方なんてあっという間だ。
寝る前に布団の中で、とりあえず明日はどんな風に異世界に行く為の方法を、どうやって考えるか、他にアイディアの材料となるものはないか小声で相談した。
そして、思いついたのが図書室だった。
あそこなら色んな種類の本がある。もしかしたら冒険ファンタジーものの小説か何かも置いてあるかもしれない。
明日はそこで授業以外は、入り浸って参考になりそうな資料を探そうと決めて、泥のように眠った。
水曜日、レムグランドへ行くまであと、今日を入れても3日程しかない。
しかも3日目の夕方には、廃工場へ向かわなければならなかった。
二人は朝早くに登校して、先生に勉強の為に調べたいものがあると、特別に図書室を開けてもらった。
ホームルームが始まるまで、まずは目当ての資料がどこらへんにあるのか探した。
冒険もの、世界の不思議、推理小説、確かに色んなジャンルがあるが『異世界へ行く為の言い訳』という本なんて勿論なかった。
「あるわけないでしょ」
呆れた表情でそう言い放つと、リュートは洋書コーナーへ向かった。
外国の出版物なら異世界ものがたくさんある。『指輪物語』や、『ハリー・ポッター』など。
しかし、特に参考になりそうな内容は書いてなかった。
そうしている内に、授業が始まる。二人は図書室を閉めて教室へ戻って行った。
休み時間も、猛ダッシュで図書室へ向かって出来る限り何か参考にならないか探した。
しかしすぐにチャイムが鳴って、教室へ戻る……の繰り返しだった。
昼休みになって、二人は図書室で本に囲まれながら、とりあえず現段階のアイディア候補を並べてみた。
1、大人の協力者をどうにか作る。その人の所で泊まり込みすることにして、やり過ごす。
デメリットは、協力してくれそうな大人がいないことと、電話で声を聞かせろと言われたら逃げ場がない。
2、また誘拐されたことにする。黒ずくめの男に目をつけられていて、再び拉致、監禁。
デメリットは、言うまでもなく問題が多すぎる。また刑事さんに拉致、軟禁されかねない。
3、ガキ大将達を使って、彼らと一緒にいることにする。脅せば協力させることは多分、容易いと思われる。デメリットは、裏切って余計ややこしくされる可能性大。不良になったと思われそうで何かイヤだ。
4、アギトの両親をダシに使う。久々に帰って、親睦を深める為リュートも一緒に旅行に誘われたということにする。
デメリットは、元々アギトの両親に信頼性がないので話を切り出しても反対されかねない。
5、親戚の家に遊びに行くことにする。オーソドックスだが、二日程家を空けるには丁度良さそうな感じ。デメリットは、親戚自体いない。いたとしても結局は『1』のように電話連絡されたらおしまい。
以上が、この二日で考え抜いた結果、ひどい有り様だ。
どれをとっても、結局は信用性がないのと、電話という手段を取られた時の対策が全くないところに
大きな問題があった。
「親戚の家とかじゃなくてさ、ず~っと山の中にある電話も圏外な場所にある友達の別荘に誘われたからそこに遊びに行くってのは? これなら電話に関する心配はないんじゃない?だって圏外っていう逃げ道があるし」
「でも今のこの状況で、おばさん達がそんな場所へ行く許可をくれると思うかぁ?」
腕組みをしながら、アギトが疑わしそうな目でケチをつける。
「それ言ったら結局はどんな方法を考えたってダメになるじゃないか!! お父さん達が許可をくれなきゃダメ。電話連絡されたらダメ。完全に騙せて、怪しまれない方法なんて」
「次からはオルフェ達も巻き込んで、その辺の打ち合わせもしなきゃダメだな。あいつら、こっちの状況全っ然わかってねぇもん!!」
むすっとした表情になって、アギトがリュートから目を逸らす。
出来ることなら、こんなくだらないことでリュートと言い争いになんてなりたくなかった。
「ねぇ、インターネットの掲示板とか書き込みとか悩み相談関係の所に試しに相談してみるのは? 僕達じゃこの程度の考えが限界だよ。それなら日本中の人達に相談して、アイディアをもらうんだよ。少なくとも、僕達のような子供の考え以上のアイディアが何か出てくるかもしれないじゃない!!」
リュートの提案に、悪くないのか。アゴに手を当ててう~んと考え込む。
「悪くねぇが、『異世界に行く為に、何か良い言い訳ありますか?』って書くのか?」
「だからなんでそう単刀直入になるわけ? 異世界のところは伏せておくに決まってるでしょ、例えば『無断外泊するためにみんなはどんな言い訳してますか?』とか。『親に怪しまれないようにするには、どんな方法がありますか?』とか」
「それならイケるかもな。てゆうか今のままじゃ突破口は何もねぇし、まずはそこに賭けてみるしかねぇかも」
とりあえずは、二人はインターネットで書き込みをしてみる方法を試すことにした。
パソコンならアギトの家にある。
まずはリュートの家に帰って、それからまだマンションに取り忘れた物があると言ってマンションに向かおうとした。
しかし、反対された。
せめてお父さんに付き添ってもらいなさいと、そんなことをしたらパソコンで怪しい内容の書き込みしてることがバレてしまう。
結局二人はその日、アギトのマンションに行くことは諦めた。
アクセスする前にまだ自分達で思いつく方法があるかもしれないと、考えてみたが何も思いつかなかった。
水曜日、もうそろそろ後が無くなってきた。
アギト達はまた朝早くに家を出て、マンションへと向かった。
そこで、アギトのマンションから学校に電話する。
「また警察の方から事情聴取されることになったから、今日は二人とも学校を休む」と。
バレて怒られても、もう関係ない。
アギト達はパソコンで書き込みをした。
すると短時間で、結構返事が返ってくるものだった。
「友達に口裏を合わせてもらう」
「親なんて関係ない、黙って外泊する」
「バイトだと言ってごまかす」
などなど、殆どは小学生であるアギト達には使え無さそうなものばかりだった。
彼女なんていないし、バイトできる年齢でもない、ましてや話に乗ってくれそうな友達もいなかった。早速行き詰まる。
「質問の内容がダメだったのかな」
「でもこれしか説明のしようがねぇだろ。これ以上年齢層下げるわけにもいかねぇし、どうしたもんか」
「やっぱり自分達で考えるしかないのかな」
キーボードを打つ手が止まる。
「そもそも、誰にも怪しまれず、完全に騙し抜いて外泊するって時点で間違ってんだよ。難しく考えすぎてたんじゃねぇか? オレ達……」
アギトがうつむき加減に言った言葉を聞いて、リュートは耳を傾けた。
「どういうこと? だって、行方不明事件になる位に大騒ぎさせたんだよ? これ以上両親に心配かけないように配慮するのは当然じゃないか」
「それはわかってる!! でも、しらばっくれるって方法だってある」
「は?」
突然何を言い出すのかと、リュートは目を点にした。
「開き直るんだよ!! そりゃ外出する為の言い訳もとりあえず作っておくぜ? 友達の家に遊びに行って来るとかなんとか。それでその途中で宇宙人に拉致されたとか言ってさ。そんで記憶障害を理由に、何も覚えてませんってばっくれるんだよ!!」
「アギト、ヤケになってそういうこと言ってない?」
呆れた表情で、リュートは深い溜め息をつく。
そんな方法取る位なら、こんなに悩んだりなんてしない。
「思い出してみろよ!! ガキ大将達が、オレ達について何て証言したか!! 光に包まれて消えたってマジ顔で言っても、結局刑事のおっさんは信じてなかったろ!? それ以上追及されることもなかったじゃねぇか!! 最後に会った目撃者の証人であるにも関わらず、だ!!」
アギトの力説に、半信半疑で聞くリュート。
納得いかない、世の中そんな安易にまかり通るはずがないとでも言うように。
「結局はどんなに完璧な作戦考えても、真実をねじ曲げている限り完璧なんてモンはねぇよ。あとはしらばっくれる演技力だけだ。刑事のおっさんにしたオレみたいな、あの嘘話で家に帰れたのが事実だろ。でも話半分にしか聞いてなかったと思うぜ。どんなに言い繕ってもあれは嘘なんだ。黒ずくめの男だって、黒いベンツだって見つかりっこない。大々的に捜査してる所なんて、見たことあっか? どんなにアリバイ作りに奔走したって、バレる時にはバレるんだよ。それならもうこんなに頭悩ませてまで考えなくたって、適当に言い繕えばあとはどうにでもなる。どっちに転んでも、最終的にはおばさん達に嘘をついてることに変わりはねぇんだ。言い訳が凝れば凝る程、罪の意識もデカくなってくる。そっちのがきっと、ツライんだぜ? おばさん達も、自分達も」
アギトはそう言った。
嘘は嘘。
確かにそれはそうかもしれない、でも親に心配かけないように配慮することが間違っているなんて思えない。
そう思ってても、結局は何の解決策も思いつかないんじゃ・・・アギトを納得させることなんてできっこない。
それにアギトの言葉全てに反対するわけでもなかったから。
最終的には、自分だって親を騙すための言い訳探しをしていて、そこに罪の意識を感じてなかった。
アギトに言われるまで、自分がやってることを正当化していただけかもしれない、それに気付かされた。
「全部が全部、正直に言うことはねぇ。レムグランドでの出来事だって、言ったって混乱させるだけか頭がおかしくなったって思われるのがオチなんだ、そんなのとっくにわかってる。とりあえず、オレ達が家を留守にするのは行方不明だとか、誘拐だとかそういう事件性を感じさせない程度の言い訳を考えればいいんだよ、単純でいい。さっきあったみたいに、友達の家に泊りこむってことでもいいじゃねぇか。電話されても、違う友達の家だったとかその場その場で切り抜けることだって出来るかもしれない。今度レムグランドに行った時に、ちょっと話を持ちかけてみるのもいい。セコいことをたくさん思いつきそうな陰険インテリがいるんだ、異世界特有の便利なアイテムだってあるかもしれない」
開き直った、そう取れる発言でもある。でも、間違ってるとも言えない。
「じゃあ、今日学校を休んだことが先生にも親にも、警察にもバレなきゃ。それに賛成するよ。難しく考えすぎてたって、認めるし色々考えたってなるようにしかならないんだよね」
リュートの抑揚のない言葉に、アギトはちくりと胸が痛んだ。
自分にそんなつもりはなかったが、リュートにキツく言い過ぎてたのか?
元気がなくなったのは、自分のせいなのか?
戸惑うアギトに、リュートは顔を上げて提案した。
「じゃあ、今日ついた嘘が成功してたら今回レムグランドに行く時につく嘘、こういうのはどう? ガキ大将を脅して、全員ガキ大将の家に一緒にいることにする。すっかり更生したガキ大将に勉強を教えるために、泊りこむことにするんだよ。そしてガキ大将には協力すれば僕達、青髪の仲間にガキ大将には手を出させないと約束する。ただし裏切れば今まで僕をいじめたことも含め、全ての罪を償わせるって!!」
リュートの提案、戻った笑顔にアギトはほっとした安堵感と、好奇心が湧き上がってきた。
そして悪い微笑へと変わっていく。
「更生ってとこと、裏切った時の対処法。イイんじゃねぇか? それ!!」
二人は面白そうに、楽しそうに大笑いした。
脅した時のガキ大将の顔が目に浮かぶようで、おかしくって仕方無かった。
そしてその日、学校が終わった頃合いに家に帰ったが、特に何か言われることもなかった。
学校の先生はアギトの嘘を信じたのか、警察絡みとあらば仕方無いと思ったのか。
家に連絡することはなかったようだった。




